カラフル 或る人曰く、初対面で手厳しく怒られたと云う。
また或る人は、有ること無いこと理不尽に説教されたと云う。冷たい色、グレー色、そんな風に表現されることも少なくない。
悪い人ではないけれど、何を考えているのかイマイチわからなくて、いつも怒っていて、実は世話好きということを理解するのに時間がかかる。自分が突き放したくせに、あいつは離れていったなんて、寂しがる癖も治らない。
セナのことを知らない人間からしたら、そうなのだろう。まぁ確かに、面倒くさいやつだとおれも思う時がある。『王さま』の命令は、絶対! だなんて権力をかざしたこともあるけれど、おれからすれば「セナのいうことは、絶対!」なのである。
いつも怒っているかと言えば、まぁ、今日の天気にすら文句を言ってるセナのことだから、だいたいは合っているんだけれども……さすがにずっと怒ってはいない。いや、なにかしら毎日怒られている気はする。ほんとお母さんみたい。
だけど、たまに褒めてくれるときもある! 朝ちゃんと起きた時とか、打ち合わせに遅刻せずに行った時とか……! えらいえらい。って感情が一切ない棒読みみたいなことがほとんどだけど、たまに、えらいねぇ♪ って目を細めて笑いながら言ってくれる。そんな日はもう大変。おれの頭の中は色彩豊かな音符で溢れ返ってしまって、一晩で名曲ができあがってしまう。
それに、起きがけに寝ぼけたセナが、れおくん……などと舌足らずな音をだしながら、おれを抱きまくらにしている時もある。決まって覚醒した時にバツの悪い顔をしながらそっぽを向くんだけれども、熟れたトマトのように頬を染めるセナを見れるのも貴重だ。
理解するまでに時間がかかる。されど、一度理解してしまえばこれ以上ないくらい面白い。でも、全てを理解するには、まだまだ時間が足りない。
「ねぇ、れおくん。さっきから俺の顔じぃっと見てるけど、なぁに? 俺の顔がいくら綺麗だからって、ずっと見られてるのは嫌なんだけど~?」
目を閉じて、はぁ。とため息をついているセナ。呆れているようだけれども、何か言いたいことがあるならどうぞ。という顔もしている。
「今日もセナは綺麗だな。ってそれだけ♪」
「あんたは寝癖ついてるけどねぇ? 俺の隣にいるんだからそんなだらしない格好許さないよぉ? ほら、こっち来て」
スススッと隣に並ぶと、一旦髪の毛を解かれて、ちょいちょい。と直してくれる。
「たまにはだらしなく結ぶんじゃなくて、違う髪型にでもしてみたら? せっかく素材はいいんだし」
楽しそうにおれの髪の毛を集めて遊ぶセナ。その表情が見れないのが悔しいけれど、指通りはとても優しい。誰にも気づかれたくない。おれだけのセナ。
コロコロと表情を変えるセナと一緒にいる時、おれの音符もカラフルに染まる、そんなセナのことが、今日もおれは大好きなのだ。