ワンドロお題「びしょ濡れ」(現パロ・大学生)
それは実に突然だった。
ふっと暗くなったと思ったらどざーという擬音がぴったりの、まるで壁のような雨が降ったのだ。
何じゃこりゃ。
人は、わけのわからない事に出くわすと思考停止する。
「…こんな雨はそう長いこと降らないと思う。しばらく待とう、ラーハルト」
「そうだな…」
しかし、そうやって待っていると一向に止まないのは何故なのか。
「ええい、10分もない距離だ、もう走るぞ!」
「あっ…ちょっと待て…って聞いてない!!!」
そうして豪雨の中を走った二人は、無事下宿アパートにたどり着いたのだが。
「…何故たどり着いたら快晴になるのだ…」
「…だから待てと言ったのに…」
水も滴るいい男という表現があるが、それは滴らない程度に濡れた男の形容詞なのだとしみじみどうでもよく思ってしまうラーハルトだった。二人とも、なかなか酷い有様である。
ヒュンケルは溜息と共に責める光のある瞳でラーハルトを睨みながら、少しでも水を絞り出すべく動きながら、感想とも非難とも解らない調子で呟いた。
「…しかし下着まで完全に濡れるとは思わなかったな…」
盛りのついたお年頃に、恋人のこの言葉がどう作用したかは、推して知るべしである。