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    onsen

    @invizm

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    onsen

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    クロくんと先生とばーちゃんの日常
    初出2021/8/10 ぷらいべったー

    ##怪ラム

    真夏の反射光 まるで蒸籠の中を歩かされているような登校日の帰り道、川べりを歩いていると、耳に入るだけで体感湿度が爆上がりしそうなびちゃりびちゃりという水気満載の足音と、騒がしい声が耳に届いた。
    「……なにやってんの、アナタたち。川にでも落ちたのかしら?」
     口から溢れる鈴のような、見た目のわりに落ち着いた声に滲むのは呆れ。
    「あ、ばーちゃん! 今河川敷でクロと水鉄砲してたんだよ」
    「こんにちは彩芽さん。今日も暑いですね」
    「アナタたち見たら湿度が20%は上がった気がするわ」
     べっしょべしょの姿で生温い水を滴らせ、髪や服に泥やら草やらを鬱陶しくまとわりつかせて歩いているのは、曽孫の次ぐらいに(但しその間には越えられない壁がある)可愛がっている青年と、その弟子。どちらかというと、青年のほうがより酷い姿だ。いやどっこいどっこいか。せめてタオルで拭いてこいと思う。
    「水鉄砲でどうやったらそんな状態になるのよ。タンクを何度空にしたわけ?」
    「だってクロが大量破壊兵器使ってきやがって」
    「先生が極悪改造水鉄砲用意してくるのなんてわかりきってましたから」
    「……ほーんと、お似合いの師弟だこと」
     手先が器用かつくだらないところで姑息な師と、とびきりの知性と身体能力を盛大に無駄遣いする弟子。なんていいコンビだろう。半分皮肉で、半分本気。青年が生まれてから20年以上、こんなにも全力で遊び合える相手がいないまま育ってきたことを知ってるのだから、尚更そう思う。丹己はどうしたってラムネを弟のように甘やかしてしまったし、自分も、彼の師も、大事にしていたとはいえ同じ目線で一緒に遊んであげるような大人ではなかった。
     弟子ができて張り切っているのは見た目にも明らかで、きっと彼なら甘っちょろいところや危なっかしいところもありつつも、少年にとって良き師であるだろう。どういう経緯があったのかを彩芽は知らないが、きっと、まだ始まったばかりの彼の人生を、良い方向へと導く出会いだったに違いない。けれど、もしかしてそれ以上に、ラムネにとっては。
     涼しさの欠片もないほど水浸しになりながら、お互いに文句を言い合いながら、けれどその金色には、かつて自分たちが誰も与えてあげられなかった何かがきらきらと輝いて、水飛沫に反射して見えた、ような気がした。
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    onsen

    DONEクラファ仲良し
    クラファの3人が無人島で遭難する夢を見る話です。
    夢オチです(超重要)。
    元ネタは中の人ラジオの選挙演説です。
    「最終的に食料にされると思った…」「生き延びるのは大切だからな」のやりとりが元ネタのシーンがあります(夢ですが)。なんでも許せる方向けで自己責任でお願いします。

    初出 2022/5/6 支部
    ひとりぼっちの夢の話と、僕らみんなのほんとの話 --これは、夢の話。

    「ねえ、鋭心先輩」
     ぼやけた視界に見えるのは、鋭心先輩の赤い髪。もう、手も足も動かない。ここは南の島のはずなのに、多分きっとひどく寒くて、お腹が空いて、赤黒くなった脚が痛い。声だけはしっかり出た。
    「なんだ、秀」
     ぎゅっと手を握ってくれたけれど、それを握り返すことができない。それができたらきっと、助かる気がするのに。これはもう、助かることのできない世界なんだなとわかった。
     鋭心先輩とふたり、無人島にいた。百々人先輩は東京にいる。ふたりで協力して生き延びようと誓った。
     俺はこの島に超能力を持ってきた。魚を獲り、木を切り倒し、知識を寄せ合って食べられる植物を集め、雨風を凌げる小屋を建てた。よくわからない海洋生物も食べた。頭部の発熱器官は鍋を温めるのに使えた。俺たちなら当然生き延びられると励ましあった。だけど。
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    onsen

    DONE百々秀

    百々秀未満の百々人と天峰の話です。自己解釈全開なのでご注意ください。
    トラブルでロケ先にふたりで泊まることになった百々人と天峰。

    初出2022/2/17 支部
    夜更けの旋律 大した力もないこの腕でさえ、今ならへし折ることができるんじゃないか。だらりと下がった猫のような口元。穏やかな呼吸。手のひらから伝わる、彼の音楽みたいに力強くリズムを刻む、脈。深い眠りの中にいる彼を見ていて、そんな衝動に襲われた。
     湧き上がるそれに、指先が震える。けれど、その震えが首筋に伝わってもなお、瞼一つ動かしもせず、それどころか他人の体温にか、ゆっくりと上がる口角。
     これから革命者になるはずの少年を、もしもこの手にかけたなら、「世界で一番」悪い子ぐらいにならなれるのだろうか。
     欲しいものを何ひとつ掴めたことのないこの指が、彼の喉元へと伸びていく。

     その日は珍しく、天峰とふたりきりの帰途だった。プロデューサーはもふもふえんの地方ライブに付き添い、眉見は地方ロケが終わるとすぐに新幹線に飛び乗り、今頃はどこかの番組のひな壇の上、爪痕を残すチャンスを窺っているはずだ。日頃の素行の賜物、22時におうちに帰れる時間の新幹線までならおふたりで遊んできても良いですよ! と言われた百々人と天峰は、高校生の胃袋でもって名物をいろいろと食べ歩き、いろんなアイドルが頻繁に行く場所だからもう持ってるかもしれないな、と思いながらも、プロデューサーのためにお土産を買った。きっと仕事柄、ボールペンならいくらあっても困らないはずだ。チャームがついているものは、捨てにくそうだし。隣で天峰は家族のためにだろうか、袋ごと温めれば食べられる煮物の類が入った紙袋を持ってほくほくした顔をしていた。
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