お見舞い開けてある窓の外から賑やかな子供達の声で目が覚める。壁に掛けてある時計に目をやれば丁度下校の時間。本来なら私も学校から下校している最中だが、風邪を引いてしまった。薬のおかげで熱は下がっているがまだ身体の怠さが残っている。ベットから動くのが億劫で天井を見つめていたら玄関の方から聞き慣れた声が聞こえたと思ったら雑な足音を鳴らしながら私の部屋の扉が勢いよく開いた。
「具合どないや?」
平次がそう言いながらズカズカと遠慮なく床に座りこみベットにもたれ掛かる。
「だいぶ良くなった…って何できたんや…」
「何ってそりゃ見舞いに決まってるやろ」
「アホ…移るから早よ帰り…剣道の大会も近いやろ」
『まぁまぁ、俺のこと気にせずゆっくり寝とき』
この状況で誰がゆっくり寝れるかッと心の中でツッコミを入れる。
『と言うか何で私が体調悪いの知っとるん』
『え?あぁ、お前と帰ろうおもて学校行ったらおらんかったからまた風邪でも引いて寝込んどるやろおもてな』
『…なるほど…』
何がお前と帰ろうおもてや…こっちの気も知らんとこの思わせ野郎め!
『和葉はどうしたん…』
『何で和葉が出てくんねん』
少し不機嫌な声で応える。
『…何でって…いつも二人でおるから』
そう私が答えるとますます不機嫌な表情になっていく。
『あいつが勝手に着いてくるだけじゃおりたくておるんちゃうわボケ!』
『ごめん…』何で私が謝ってるんや…と言うかボケって…病人に向かって暴言吐くってどうなん!
先ほどから心の中のツッコみが止まらない。
『悪い…大声出してもうて』
私の今の状況を思い出したかのか、申し訳なさそうに謝る。
『ええんよ、大声はいつもの事ッゴホッゴホッ…』
『おい!大丈夫か?水飲み水!』
サイドテーブルに置いてある水の入ったコップを私に手渡すと背中を摩る。
『ありがとう…』顔を上げれば直ぐ側に平次が映る。
何故か私を見つめたまま無言の平次、どちらともなくお互いの顔を近づけ、あと数センチと言う所でその沈黙に耐えれず口を開こうとした瞬間。ぷっと吹き出す平次。
『今のあぐりの顔ブッサイクやな〜!』
『はぁ〜⁈』
何を言い出すかと思えば、さっきのありがとうを返せ…!
『し、失礼なやっちゃな!私は別嬪さんです〜!』
『その別嬪が台無しになってる言うてんねや』
はぁ?今なんて言うた?平次が私の事別嬪って言うた??聞き間違いちゃうよな?いや、聞き間違いやな…平次がそんなこと言うはずないもん。私の混乱を他所に平次は話を続ける。
『来週な東京に行くんや、あぐりも一緒にいくから早よ風邪直しや、美味しい店いっぱい連れてったるさかいにな楽しみにしとき』
さっきから何を言うてるんや…と言うか私も行く事は決定事項かいな…もう疲れたもう私はツッコまへんで
『ほな帰るわ!ちゃんとあったかくして寝るんやで〜!』
少しはにかんだ様子で帰っていった。
『一体何やったんや…』
気が抜けたのかまたは疲れからか睡魔が襲ってきた。