うどん少し肌寒さを感じる季節になってきた。こんな日には暖かい物が食べたくなる。そうと決まれば部屋に掛けてある薄手のカーディガンを手に取りを出掛ける準備をする。
玄関へと向かい靴を履いると引き戸が開く。
「なんや、出かけるんか?」
「びっくりするやん…お母さんも居らんしお昼でも食べに行こうかなって」
「お、実はな、美味いうどん屋が出来たからお前連れってってやろうおもてな」
「ほんまか!ほんなら早よ行こ!」
店に入るや否や美味しそうな出汁の匂いが漂ってきた。席に案内され席に着く。卓に置かれたメニューを開き見てみればどれも美味しそうで、選ぶのに時間がかかりそうだ。向かいに座っている平次に目を向ければ、すでに決めたようで、私の方を見ている。
『何と迷ってるんや?』
『きつねかカレーかで悩んでる…』
メニューと睨み合いをしていると
『俺がきつね頼むから分けたるわ』
『え!ほんまに⁈じゃ私カレー頼むから分けごとしよう!』
〃すいません〟と店員さんを呼び注文する。うどんが来るまでの間たわいもない話をしながら待つ
『ご馳走様でした!めっちゃ美味しかったわ』
『せやろ!また、連れてきたるわ』
歯を見せて彼は笑う。店を出た後彼のバイクで家路に着く
『今日はありがとう』
『礼言われることなーんもしてへん』
少し沈黙があった後、ほなまたなと平次が帰ろうとする
『ま、まって平次…!』
頭で考えるより言葉が先に言葉が出た。私の言葉に不思議な顔でこちらをみる。
『何や?』
『あ……よ、良かったら家で晩御飯食べて行かへん?』
「……」
「い、いや別に変な意味はないねんで、お母さんも会いたがってたし…丁度ええなとおもて…」
咄嗟に引き止めた理由の言い訳がコレしか思い浮かばなかった。平次の顔を見れば少し驚いたような顔した後フッと吹き出し口を開いた。
『俺とまだ一緒に居りたいんか?』
『な…ッ…』
一気に顔が赤くなるのを感じた。もうどうにでもなれと私は開き直った。
『そうや!なんか問題でもある!?』
『いいや、そんじゃ遠慮なくお邪魔するわ』
手慣れた手つきで靴を脱ぎ何事も無かったように家の中に入っていく彼の背中をみて、彼には敵わないなと思った。