夢の話。 雨が、降っている。
見慣れた山道に、自分は佇んでいる。
夜の山道は暗く、降り続ける大粒の雨で視界は悪い。
何度も滑った道の途中で、ただ一人、立ち尽くしている。
ーー違う。
仮面で狭まっている視界が、急に開ける。その先に、人が倒れていた。
黒い学ランに、鮮やかな色のパーカー。暗がりの中でも映える赤毛が、雨に濡れてやけに艶めいて見える。力なく投げ出された手のひらは、静かに雨を受け止めるだけだ。
普段なら強い感情を向けてくる琥珀色の目は、硝子玉のように虚ろに、ただ空を見上げている。
側に落ちたスケートのウィールが空回りする音が、雨音に紛れて聞こえてくる。
少年の体から赤いものがじわりと滲んで、雨で濡れた地面に溶け出していく。
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