きみに触れたい、だけ「暦は、菓子をよく食べる方か?」
突然愛之介に呼び出されて、何ごとかとホテルにやってくると、開口一番にそう聞かれた。暦は意図を図り兼ねて、首を傾げながら答える。
「まぁ、それなりに?」
「そうか」
「でも、なんで?」
「いや、後援会の会長から差し入れをもらったんだが……」
珍しくはっきりしない物言いの愛之介に、ふうんと相槌を打つ。一体何をもらったのか分からないが、珍しいものを見たなと得をした気分になる。
「これだ」
ひょい、と手品の様に取り出されたのは、誰もが一度は食べた事のある赤いパッケージのチョコレート菓子だ。
「あぁ、これ。美味いよなー」
「そうか、なら持ち帰ってくれると助かる。ご家族や友人にも配ってもらって構わないから」
3566