1000年後のカイアサ(3)「うわ、光った!」
突然、驚いて声をあげたのはカインだった。その目に光り輝いたものは、暗くてぶ厚い雲の隙間から鳴り響く雷でも、夜を告げる街の街灯でもない。それはカインの足元に生えている、どっしりとした太い太い木の幹だ。
樹齢千年を超えているであろうその姿は、誰にも侵されることがなかったのだろう。とても神秘的で美しく、何かの神様さえ宿っていそうな佇まいだった。
カインは感嘆の声をあげながら首を天へと傾けてみたが、その全貌はどれだけ後ずさって見上げてみても、見渡せないほどの大きさだった。
「光ったのは木の幹じゃない、木の根元に生えている、この苔だろう」
アーサーは膝を曲げ、白い指先でその深い緑に触れた。その光は、蛍のようにぼうっと光ってはまた暗くなる。何とも不思議な植物を、カインはアーサーの隣からまじまじと見つめていた。
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