星空を蹴っ飛ばせ「会いたいなぁ」
ポロリと口から転がり出てしまった。
声に出すと更に思いが募る。言わなきゃよかったけど、出てしまったものはしょうがない。
「会いたい、あいたい。ねえ、会いたいんだけど、司くん。」
類は子供っぽく駄々をこねた。
電子のカササギが僕らの声を届けてくれはするけれど、それだけでは物足りない。
会いたい。
あの鼈甲の目を見たい。目を見て会話をしたい。くるくる変わる表情を具に見ていたい。
絹のような髪に触れたい。滑らかな肌に触れたい。柔らかい二の腕とかを揉みしだきたい。
赤く色づく唇を味わいたい。その奥に蠢く艶かしい舌を味わいたい。粒の揃った白い歯の硬さを確かめたい。
匂いを嗅ぎたい。彼の甘く香ばしい匂い。お日様のような、というのは多分に彼から想像するイメージに引きずられている。チョコレートのように甘ったるいのともちょっと違う、類にだけわかる、と自負している司の匂い。その匂いを肺いっぱいに吸い込みたい。
2268