Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    #ritk版深夜の60分一発勝負

    水月 千尋

    TRAINING #ritk版深夜の60分一発勝負
    【お題:もどかしい】(所要時間:3h)

    めちゃくちゃ彰人が巻き込まれているため彰司っぽく見えますが、彰人にも司にもその気はありません。
    類司です。類司です。
    大事なことなのでもう一回言います、類司です。
    【我慢の限界】
    「……は? あんた、今なんて?」

     飲みかけの缶コーヒーを握りしめた彰人は、ぎぎぃっ、と音でも出そうな動きで隣に座るオレを見る。
     ここは中庭の隅にある木陰だ。比較的、生徒の目につかなさそうな場所を選んで呼び出したとはいえ、誰かに聞かれる可能性を考えると二回も言うのは気が進まなかった。……が、聞き取れなかったのでは仕方がない。オレは未開封の自分の紅茶のペットボトルを両手で握り、心持ち声量を落としてもう一度繰り返した。

    「だから、あれこれ理由をつけて類を拘束するから、その類の前でオレを寝とって欲しいのだが」
    「……どっからつっこんだらいいんだよ、これ」

     深々とため息をついたかと思うと、空いている片手で頭を抱えた。流れる沈黙。類のようにメッシュの入った鮮やかなオレンジの髪が、そよ風にふわふわ揺られる様を眺めて沈黙を享受していると、頭を下げた体勢のまま彰人の目がこちらを見た。
    3868

    hukurage41

    DONE #ritk版深夜の60分一発勝負
    演目)七夕
    ※画像でもあげたのですが、なかなか見にくかったのでポイピクにも同時にあげます。

    ・遠距離恋愛ルツ
    ・息をするように年齢操作(20代半ば)
    ・かつて書いた七夕ポエムをリサイクルしようと始めたのに、書き終えたら案外違う話になった
    星空を蹴っ飛ばせ「会いたいなぁ」

     ポロリと口から転がり出てしまった。
     声に出すと更に思いが募る。言わなきゃよかったけど、出てしまったものはしょうがない。

    「会いたい、あいたい。ねえ、会いたいんだけど、司くん。」
     類は子供っぽく駄々をこねた。
     電子のカササギが僕らの声を届けてくれはするけれど、それだけでは物足りない。
     
     会いたい。

     あの鼈甲の目を見たい。目を見て会話をしたい。くるくる変わる表情を具に見ていたい。
     絹のような髪に触れたい。滑らかな肌に触れたい。柔らかい二の腕とかを揉みしだきたい。
     赤く色づく唇を味わいたい。その奥に蠢く艶かしい舌を味わいたい。粒の揃った白い歯の硬さを確かめたい。
     匂いを嗅ぎたい。彼の甘く香ばしい匂い。お日様のような、というのは多分に彼から想像するイメージに引きずられている。チョコレートのように甘ったるいのともちょっと違う、類にだけわかる、と自負している司の匂い。その匂いを肺いっぱいに吸い込みたい。
    2268

    水月 千尋

    TRAINING #ritk版深夜の60分一発勝負 (ワンライ)の
    お題『決心』をお借りして書いたものです。
    [所要時間:2h]

    内容よりもタイトルに一番悩んだ。
    【欲と煩悩まみれの錬金術師】


     ガムテープで閉じられた無地の段ボール箱。
     練習着に着替えてワンダーステージに着くやいなや着ぐるみくん達から渡されたそれを、舞台上でバリバリと開封する。中身は今度のショーで使う衣装だ。次回はおとぎ話をモチーフにした内容なので着物が入っている。
     ……が。
     中身を全部表に放り出して並べ終えたところで、僕はぎくりとした。頼んだ通りの数が入ってはいたのだが、鮮やかな色合いだったり、大きく花の模様が入っているような物ばかりだったのだ。

    (……どう見ても女物しかないね)

     僕や寧々、司くんは自力で衣装を用意することが多い。もちろん僕と寧々の分は瑞希に依頼して用意してもらった物で、司くんは自作だ。しかし、さすがの瑞希も着物に関しては──アレンジなら出来るんだけど──と消極的だった為に力は借りられず、司くんも不得手だというので珍しく全員分を発注したはずだったのだが、どうやら不慣れなせいで発注書の書き方を間違えてしまったらしい。着ぐるみくん達も、僕たちが度々自前で準備しているのを知っているから、男物がなくても不思議には思わなかったんだろう。
    1990