Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    李南(りな)

    @r1na_54

    表に上げにくいR-18小説や作業進捗等
    現在GS4・玲マリ多め

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🌟 💯 🍭
    POIPOI 112

    李南(りな)

    ☆quiet follow

    【11/19 新刊サンプル】かざぐるまに恋をして(準備号)
    A5/28P/玲マリ小説/全年齢/300円
    高校入学と同時に再会した幼馴染の玲太が気になりつつも、恋する気持ちが分からないマリィが玲太への恋心に気づくまでの話。
    準備のは水溜まりイベント後~初デート約束までのエピソード+完成版予告+購入特典SSを収録しています。
    イベント終了後、残部をBOOTHにて自家通販予定(匿名配送)

    ##ときメモGS
    #玲マリ
    mariRei

    かざぐるまに恋をして(準備号) 恋ってどんな気持ちなんだろう? 胸がきゅんっと甘くときめくような気持ちなのかな?
     小学一年生の時、仲良しだった男の子と一緒に教会でかざぐるまに願い事をしたあの時みたいな――。

     それから九年が経ち、高校生になった今もわたしはまだ恋を知らない。でも、気になる男の子はいる。
    「あなた、風真くんとどういう関係?」
     入学して少し経ったある日の放課後、その気になる男の子についてクラスの女子数人から聞かれてドキッとする。入学したはばたき学園は進学校なので、中学に比べると落ち着いた子は多いものの、クラスを仕切るリーダー格の女子はやはり存在しているらしい。威圧的な態度に怖気づきながらも、彼についてありのままを述べた。
    「えぇと、風真くんは家が近所の幼馴染で……」
     風真玲太くん。同じクラスの男の子で学園の人気者だ。人目を引く端正な容姿に加えて、文武両道で勉強も運動も何でもできて、人当たりもいい。さらに、家ははばたき市の名だたる名家であり、街の人からは〝若様〟と呼ばれていて、まさに絵に描いた王子様のようだ。当然彼に好意を寄せる女子は入学早々既に多数いる。
     そして、先程述べたように風真くんはわたしの幼馴染である。家も近所で幼稚園や小学生の頃よく一緒に遊んでいた。ところが、小学一年生の時に風真くんが家の事情でイギリスへ引っ越して離れ離れになってしまった。それ以来音信不通だったが、高校入学と同時に風真くんははばたき市に帰って来て、わたしたちは九年ぶりに再会した。
    「幼馴染? じゃあ、今朝、風真くんにおんぶされてたのは何?」
    さらに今朝の風真くんとの出来事についてもクラスの女子は問い詰める。
    「えっ! それは……」
     その通り、今朝、風真くんにおんぶされた記憶が蘇り、またドキッとしてしまう。
     今朝、家の前で風真くんに会って一緒に登校していたのだが、学校の前でわたしが水溜まりにハマってしまった。勿論風真くんにもしっかり見られて「ハハッ! 鮮やかなドジっ子っぷり。いい。面白すぎる」と笑われた。
     自分でもドジだと思うけれど、そんなに笑わなくても……としょんぼりと俯くと、風真くんは「ほら、手貸して。いつまでもソコ突っ立ってたら靴に水が浸みちゃうぞ」と水溜まりにハマったわたしに優しく手を差し伸べてくれた。昔からわたしが困っていると、いつも助けてくれる。素直にお礼を言い、差し出された手を取ったら、風真くんは何を思ったのか「あ。いっそ靴脱いじゃって、下駄箱まで背負ってやろうか」と言い出した。
     思わぬ発言に仰天してしまい、みんなに見られるからと遠慮するが、風真くんは見られてもちっとも困らないと全く気にせずわたしを下駄箱までおんぶした。その結果、学校中から注目を浴びて、クラスの女子からもこうして問い詰められることになった。
    (だから、わたしは困るって言ったのに……)
     高校生というのは、中学生以上に異性への関心が高い。誰と誰が付き合っているだの、誰が誰を好きだのその手の事象には非常に敏感なのだと入学して一ヶ月も経たないうちに思い知らされている。ましてや、人気者である風真くんなら、親しい女子の存在は当然気になるところなのだろう。クラスの女子たちはさらにわたしたちの関係を疑う。
    「あれは、成り行きっていうか、その……」
     今朝の出来事についても変な誤解をされないよう、正直にありのままを話した。決してわたしから意図して風真くんに近づいたのではなく、成り行きでこうなってしまったのだと。クラスの女子はまだ腑に落ちない様子だが、わたしたちが幼馴染以上の関係でないことは理解したらしい。
    「ふぅん……ただの幼馴染で、彼女でも何でもないなら必要以上に風真くんに近づかないでよね!」
    「あなただけの風真くんじゃないんだからね!」
     と、釘を刺してクラスの女子たちは去って行った。何だか理不尽なことを言われたような気がするけれど……。
    (そんなこと言われてもなぁ……)
     はぁっと深く溜息をつく。
     わたし自身驚いているのだ。高校生になってから、風真くんは昔と同じくわたしに親しく接してくれる反面、今朝のように大胆な言動も多い気がする。その度に風真くんってこんな人だったかなぁとドギマギさせられている。そりゃあ、九年も経てば色々変わっているのかもしれないけれど、幼馴染にしてはちょっと行き過ぎているような……どう反応すればいいのか分からず困ってしまう。
    (でも、ちょっと嬉しかったかも……)
     今朝の出来事で、風真くんが昔と変わらず手を差し伸べてくれたのはやはり嬉しかった。おんぶもみんなの前で恥ずかしかったものの、嫌ではなかったし、どころか全く危なげなくわたしを軽々背負っていて驚かされた。小学生の頃から大分背が伸びて大人っぽくなったとは思っていたけれど、こんなに力もあるなんて……小学生の頃とは違う、男の人なのだと認識させられてドキドキしてしまった。
    (もう男の人なんだ、りょうたくん……)
     ふと、彼を〝りょうたくん〟と名前で呼んでいた小学生の頃のことを思い出す。彼がイギリスへ引っ越す少し前のある出来事を――。

    「あ、ホラ、鐘の音! また聞こえてきたよ」
     小学一年生の時、りょうたくんと一緒に学校の帰りに通学路の坂道で鐘の音を聞いた。坂道から少し離れたところから鳴っているようで音は小さいけれど、確かに綺麗な音が聞こえる。
    「こっち! 聞こえたの、こっちだと思うんだ、おれ。来て!」
     その音色に誘われるようにりょうたくんと一緒に鐘の音がする方へ向かった。すると、大きな鐘のある教会を見つけた。坂道で聞いたのはあの鐘の音ではないかとりょうたくんも言い、それ以来、わたしたちは鐘の音が聞こえる度、教会へ寄り道するようになった。でも、実際に鐘は鳴っていなくて……不思議な教会だ。
     そんなことがしばらく続いたある日、教会で風真くんは夕日みたいなオレンジ色のかざぐるまをわたしにくれた。
    「今日、図工でつくったりょうたくんのかざぐるま、先生のお手本より回ってたね!」
    「まあね。ホラ、おまえにあげるよ」
    「えっ、いいの?」
    「いいよ。実はこれ、はばたき城の宝物庫にあったかざぐるまと、おんなじ作り方なんだ」
     やっぱりこのかざぐるまは特別なものらしく、りょうたくんは得意げに話した。昔から物知りで活発な彼はわたしに色んなことを教えてくれた。
     このかざぐるまはお城の宝物らしく、願い事をしてからフーッて吹くと、なんでも叶ったのだという。
    「わあ、魔法みたいだね」
     りょうたくんの話にワクワクして目を輝かせた。すると、りょうたくんも表情をますます明るくさせる。
    「このかざぐるまも、それと作り方はいっしょだからさ、おれたちの願い事、叶うかもしれないぜ」
     と、このかざぐるまに願い事をしようとりょうたくんはわたしの手にしっかり持たせた。りょうたくんの言うように、このかざぐるまが本当にわたしたちの願い事を叶えてくれるのなら――。
    「やってみよう。はいっ、願い事して、フーッて吹く!」
    「えっ? う、うーんと、お願い事は……」
     といっても、願い事なんて急に浮かんでこない……どうしようと思い、目の前のりょうたくんを見ると、真剣な顔でかざぐるまに願い事をしていた。こんな表情は初めて見る。りょうたくんにはどうしても叶えたい願い事があるのだろうか。それなら、わたしは――。
    (りょうたくんの願い事が叶いますように)
     彼の真剣な表情を見て、そんな願いが心に浮かんだ。りょうたくんの願い事が叶えば、きっとわたしも嬉しい――願い事を決めて、りょうたくんと一緒にかざぐるまを吹いた。わたしたちの想いを乗せてかざぐるまが回ったその時、教会の鐘が鳴り響いた。
    「鐘が鳴った!」
     鐘の音にりょうたくんも嬉しそうに声を上げて喜んだ。すごい、今までわたしたちの前で鐘が鳴ることはなかったのに、りょうたくんと一緒にかざぐるまに願い事をしたら鳴るなんて……これって、もしかして――。
    「本当にこの教会のだったんだ……結婚式みたいだね?」
     まさに奇跡のような出来事に胸をときめかせて、自然とそう言っていた。まるでわたしたちの願い事が叶い、幸せを祝福してくれているような、そんな気がして。ウエディングベルみたいな音にうっとりする。
    「えっ⁉ いや、まあ、うん。そうかもなー……願いごと、なにした?」
     結婚式という言葉にりょうたくんは顔を真っ赤にして、照れたように頬をかきながら何を願ったのかわたしに聞いてきた。
    「それは……ひみつ。はずかしいから」
     願い事が自分のことではなく、りょうたくんのことだなんて変かなと思い、秘密にしてしまった。もし、わたしの願い事を知ったら、りょうたくんはどう思うのだろう。
    「…………そっか。じゃあ、おれもひみつ。たぶん、おまえとおんなじだと思うよ」
     りょうたくんも願い事は秘密にしながらも、照れ笑いを浮かべてそう言った。そんな彼の表情に胸がドキッと甘く高鳴るのを感じた。
    (おんなじ願い事……りょうたくんの願い事が、叶うってこと?)
     この日のことは忘れられない大切な思い出になった。

     風真くんはそんな思い出の男の子でもあったから、高校生になって再会できて嬉しかったし、昔みたいにまた仲良くできたらいいなって思った。それに今朝のような出来事も含めて、彼のことが気になっているけれど――。
    (でも、さっきみたいにクラスの女子から色々言われるのはちょっと……)
     風真くんと幼馴染というだけで、先程のように彼と親しいのかと問い詰められたり、理不尽な言いがかりをつけられたりするのはうんざりしてしまう。風真くんにも迷惑がかかるかもしれない。折角再会したけれど、学校では風真くんとあまり一緒にいない方がいいのかな……周りの目を気にして、そんなことまで考えてしまう。
     仕方なくこの日は一人で下校しようとしたのだが、下駄箱へ行く途中、階段前で早々に風真くんに出くわした。
    「やっと見つけた」
     風真くんはわたしににこやかに話しかける。再会して一週間になるのだが、高校生になって大人っぽくなった雰囲気と声に思わず胸がドキッと高鳴る。
    「風真くん、どうしたの?」
     努めて平静を装いながら聞き返すと、風真くんは苗字で呼ばれたことに顔をしかめた。昔は彼を〝りょうたくん〟と名前で呼んでいたのだが、高校生になった今は〝風真くん〟と苗字で呼んでいる。
    (昔は昔だよね……)
     高校生になってすっかり大人っぽくなった彼を昔のように〝りょうたくん〟とは呼べなかった。風真くんもそれに倣ってか、昔とは違い、今はわたしを苗字で呼んでいる。そのせいか、仲が悪いわけではないけれど、昔に比べてどこかぎこちない気がしていた。
    「おまえに用事があってさ。どこ行ってたんだよ?」
     風真くんはわたしに用事があったらしく校内を探していたと言う。
    「どこ行ってたって、クラスの女子に捕まってたんだよ。今朝、風真くんがあんなことするから、色々言われて大変だったんだから」
     今朝の風真くんとの出来事でこうなったのだと声に苛立ちが混ざってしまう。いつになくわたしの強い口調に風真くんもやや狼狽えているようだった。
    「そうか……確かにちょっと目立ち過ぎたな」
    「みんなに変な誤解されたら、風真くんも困るでしょ? わたしたちがその……」
    「別に? 俺はちっとも困らない」
     今朝もそうだったのだが、風真くんは周囲にわたしとの関係を疑われても全く困った様子を見せていない。どころか、むしろ嬉しそうにも見えるのだが、気のせいだろうか。
    「でも、学校で今朝みたいなことは……風真くん、女の子にすごく人気だから」
     いくら風真くんが困らないと言っても、わたしは困る。今朝の出来事も学園で人気者の風真くんだから大騒ぎになったのだ。風真くんも自身の人気について理解した方がいいのではないかと思うのだが。
    「そうか? まあ、確かに俺の家は色々特殊だし、向こうの生活も長かったから、興味は持たれやすいかもしれないけど……」
     ところが風真くんは自身の人気について自覚がないようだ。周囲を惹きつけるのは、自身の魅力ではなく、家や生まれから興味を持たれているのだと考えているらしい。
    「そんなことないよ。みんな、風真くんのことかっこいいって言ってるよ」
    「へぇ、そうなのか?」
     それでも風真くんは他人からどう思われているのかあまり興味が無いのか反応が薄い。一般的に人気があるのは嬉しいものではないかと思うけれど、他人の評価に興味が無いのだろうか。
    「……で、おまえはどうなんだよ?」
     と、不意に風真くんはわたしに聞いてきた。
    「えっ、わたし?」
     自身の評価について気にしていないと思いきや、わたしには聞いてくるなんて……幼馴染で身近な存在だからかな? 風真くんはわたしからの評価がよっぽど気になるのか、じっと目で訴えてくる。そんなに見つめられると、かえって言いにくいのだが……切れ長の目の鋭い眼差しにドキドキと鼓動が速くなる。
    「えっと、わたしは……入学式の日にも言ったけど、風真くん、小学生の頃から背が伸びて、すごく大人っぽくなってて……かっこいいなって思った……」
     恥ずかしながらも、正直に風真くんに伝えた。入学式の日に通学路の坂道で再会した時、小学生の頃から大人っぽく成長した彼に見惚れてしまった。今まで出会った人の中で一番かっこいいと思ったくらい。
    「そっか……よっし」
     風真くんは満足そうに笑った。まるでご褒美をもらった子供のように喜んでいて、高校生になって、大人っぽく見える今でもそんな一面があるのかとちょっとかわいらしく思った。
    「はっ! そうだ、風真くん、わたしに用事があったんだよね? どうしたの?」
     そう言えば、風真くんはわたしに用事があって探していたのだと思い出す。風真くんもそうだったとハッとして、何やら改まった様子で話を切り出した。
    「ああ……付き合って欲しいんだ」
    「えぇっ⁉」
     衝撃的な言葉に思わず声が裏返る。再会してから風真くんの言動に度々驚かされているが、付き合うだなんて……! 再会してまだ一週間で、いくら何でも早過ぎるのではないだろうか。これにはさすがに戸惑ってしまう。
    「えぇと、風真くん、付き合うとかそういうのはまだ……」
    「ん? 今日用事あるのか?」
    「えっ……?」
     どうやら付き合って欲しいとは交際の申し込みではないらしい。風真くんを意識するあまり、つい早とちりをしてしまった。わたしの方がよっぽど恥ずかしい……。
    「ううん、今日は大丈夫だけど……」
    「よし。じゃ、行こ」
     今日用事は無いと答えると、風真くんは決まりだと嬉しげにわたしの手を取って走り出した。
    「ちょ、ちょっと風真くん……⁉」
     また風真くんの大胆な行動に驚かされてしまう。学校でこんなところを見られたら……という心配が頭を過るが、風真くんはわたしの手を離す気がないようで、彼にされるがままになる。
     でも、頭のてっぺんの髪をぴょこぴょこ跳ねさせて、息を弾ませて走る風真くんは何か楽しそうだ。こんなに楽しそうな様子は再会して以来初めて見る気がするので、何だかわたしも期待もしてしまう。小学生の頃、不思議な教会へ連れて行ってもらったあの時のように――。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works