にゃんことの楽しい共同生活〜かみなりの日編〜 ざあざあ、と雨が激しく窓を叩く。何気なくずぶ濡れの窓に視線をやったら、外が激しく光って一瞬明るくなる。遅れて、ごろごろと低い音が響いた。
「…………、」
ベッドの隅に座っていた美咲が猫の耳をぴくぴくと動かした。落ち着かない様子で、ちらちらと窓の外を見ている。
また空が光る。数拍後、今度はがしゃんと大きな音。どこかに落ちたかもしれない。
「!」
美咲に目をやれば、驚いたようにしっぽの毛を太く逆立たせていた。耳がしょぼんと垂れているのが、可哀想なのだが可愛らしい。
「美咲」
声を掛ければ、またぴくりと耳が立つ。
此方を向いた顔が引きつっている。
「……なに」
「夕立だから、すぐに収まるそうだよ」
「あたし、何も言ってませんけど」
あくまで意地を張る姿は大変可愛らしいが、また空が光ればびっくりしたようにしっぽが足の間に隠れてしまう。
ごろごろ、と聞こえてくる音に耐えるように、また耳がぱたんと倒れる。雷は止まない。
「…………」
のそのそと動き出した美咲が、無言でベッドの布団の中に潜り込んでしまった。丸まって蹲る姿は、雷の音に耐えているようで。
「……!」
大きな音が聞こえる度に、まんまるくなった身体がびくりと跳ねる。
耳が大きく聴覚に優れている分、私よりも敏感に聞こえてしまうのかもしれない。私は本を閉じると、布団を優しく捲ってみた。丸まって、耳を塞ぐように両手で抑えた美咲と目が合う。
「美咲、おいで」
布団の隙間から手を広げて呼んでみる。美咲は警戒するように暫く様子を窺っていたが、またごろごろと大きな音がすると、肩と耳を跳ねさせて此方へやって来た。毛の逆立つしっぽに触ると怒られるので、なるべく触れないように抱き上げて膝に乗せる。
あまりの可愛らしさに抱き締めたい衝動を抑えながら頭を撫でてあげると、目を見開いた美咲が、そろりと此方を見上げる。
「……怖いわけじゃないですよ」
「うん」
「音が大きいから、少しびっくりしただけ、っていうか……、」
「分かっているとも」
もごもご、と言い淀みながらも身体を預けてくる。そのまま頭や喉元を撫で続けていれば、やがてごろごろ喉が鳴った。
雷の音が徐々に遠くなっていく。その頃にはすっかり私の膝の上で丸くなり、目を眠そうにとろんとさせた美咲が、私の腹部あたりをふみふみと両手で押していて。
「おやすみ、美咲」
良い夢を。
頰をするりと撫でたら、珍しく素直に擦り寄ってきた美咲が程なくして寝息を立て始めた。