Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    sinohara0s

    @sinohara0s

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    sinohara0s

    ☆quiet follow

    リハビリでお誕生日についての話をする无风書きました 妖精の誕生日への感覚や風息が生まれた時期の捏造があります

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/mf/y_arasi.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/mf/arasi.html

    #无风
    noWind

    「そういえば、小黒の誕生日ってどうやって決めたんだ?」
     風息が作ってくれた夕食も平らげて、あとは風呂に入ればいつでも今日を終わりにできる。風息が無限に尋ねたのは、そういう頃合いの時だった。
     妖精はそもそも明確な誕生日が分からないものらしい。生まれた瞬間を他者に目撃される事はまずないし、そんな事があってもその妖精が人間の暦を把握しているとも限らない。
     妖精は季節に寄り添う存在である一方で、暦を必要とするような生き方をしない者も多いのだ。たとえば小黒は一人で暮らしていたこともあって、誕生日という言葉すら無限から聞くまで知らなかった。
     交流をする上で便利な代物として使われる事はもちろんあるが、暦と紐づけて特定の日を記念する意識は希薄らしい。故に、年若く人間の文化に馴染んだ妖精でもない限り、誕生日なんてものを定めて祝う者は多くはない。小黒の誕生日には多様な面子が顔を出してくれたのは、物珍しさも手伝っていたのだろう。
    「あの子に好きな日を選ばせた」
    「生まれた時期が寒かったのかな」
    「どうだろう、好きな日を選んでと言っただけだから」
     季節と月が彼の中で一致するように一つ一つ暦を教えている最中に、小黒の誕生日を決めたのだ。まだ数字も良く分かっていなかった小黒は文字の形を気にしながら、冬の初めの一日を選び取った。
     自分の特別を作った満足感に頬を緩める子猫の姿はよく覚えているが、彼が理由を話していたかは覚えていない。しっかりと説明があったのならまるっきり忘れてしまっているということはないだろうから、おそらく理由は聞きそびれているのだろう。
    「随分適当な決め方したもんだ」
     人間にとって誕生日ってもっと特別なものなんじゃないの、と風息が少々不思議そうに口にした。風息が言うように誕生日は特別なものだとは思う。けれど、肝要はその日ではなくその人が生まれた事実を祝う事である。日付はそのきっかけに過ぎず、さほど重要なものでもない。
    「選ぶのなら好きな季節の好きな日を選んだ方が本人も楽しいと思って」
    「まあ、それはそうか……」
    「風息には誕生日はない?」
     いまいち得心しない声を上げた風息に問いかけると、紫色が一度瞼の奥に隠れる。たんじょうび、と彼は口にしてからない、と続けた。
    「あの頃は暦なんて気にしてなかったし、周りで誕生日がある奴もいなかったかも」
     記憶を掘り返そうとしているのか風息がふいと無限から視線を外してから、ゆっくりと瞼を落として思案する仕草を作る。最後にああ、と小さく声を上げると弾んだ調子で瞼を持ち上げた。
    「多分春先の生まれだとは思う。春の嵐の後に俺に会ったって虚淮が言ってたから」
     温かな大気を運ぶ風雨に晒されて濡れ鼠になっている真っ黒い塊を拾い上げる虚淮の姿を想像して、無限は少し頬を緩めそうになる。いかにも団体行動を好まなさそうな彼が構ってしまう程度に風息は悲惨な状況だったのだろう。幼い彼の話に興味がないわけではなかったが、関係上聞き及ぶのすら難しそうなのが残念だ。
    「じゃあ今年はその頃にあなたが生まれたお祝いをしようか。龍游に嵐が来たらあなたの所に帰ってくるよ」
     誕生日の代わりにと提案すれば、風息がきょとんとしてからふわりと頬を緩ませる。
    「誕生日のお祝いってケーキを食べるんだっけ。二百何十本ろうそく立てて?」
     小黒の誕生会の様子を思い出したのか口にして、無理があるんじゃないかと風息が楽しそうに笑った。実の所人間でもなかなか厳しいところがあるので律儀に立てる必要はないのだが、彼はまだ大人の誕生会というものを知らないのだろう。
    「じゃあ、あなたがここに戻って来てからの年数分立てるのはどう?」
    「……誕生日ってなんだったっけ」
     目的を見失っている気がする、と風息がぼやいたものの機嫌を損ねた様子はない。龍游で再び暮らし始めた年数を指折り数え上げて、うん、と彼が小さく頷いた。
    「でもいいな、悪くない。楽しみにしてる」
     言葉通りに目を細める風息の頬に手を伸ばすと、彼の方からも無限の手の平を迎え入れてくれる。すり、と柔らかな頬で手の内側を擦られて、どこか幼い愛撫に無限も同じ調子で返してやりたくなった。
    「今年はと言ったけど、できることならろうそくがケーキに立てられなくなるまで、いや、もっとその先も祝わせてくれると嬉しい」
    「……随分気楽に言うもんだな」
     自分達の将来に対して酷く楽観的な望みを口にすると、風息が緩く眉を顰めて無限を窘める。それから頬を無限の手の平から外してしまったので、これ以上彼の機嫌を損ねてしまわないように腕を下した。その指先に名残惜しさを見たのか、風息が苦笑する気配を見せる。
    「でもそうだな、俺もそうなればいいと思ってる」
     無限の下した腕に手を置いて、風息がそっと呼気を夜に滲ませる。それからすぐに精々励め執行人、とからかう彼に今度は無限が苦笑する番だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🎂🎂🎂👏👏👏🎂🎂🍰😋👏👏👏🎂🎂🎂🎂🎂👏👏👏🎂🎂🎂🎂🎂🍰🎂🎂🎂🎂☺💖💖💖💖💖🎂🎂🎂☺💴💴💴👏👏👏👏👏👏👏🎂🎂🎂🎂🎂🎂🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    sinohara0s

    DONE春節无风です クリスマスでも黒髪だったけど今回も黒髪黑で離島のみんなも元気にしてるので、何も起きなかったというか過去の龍游で交渉が上手くいった世界線なのかな……みたいな幻覚に振り回されているのですが皆さん如何お過ごしでしょうか
    年齢制限ありのワンシーンお題募集してコスプレっていただいたのですが、めちゃくちゃ健全な話になってしまいました。すみません……

    サイト格納済みです。
    まね「すまない、小黒は外に出てしまっていて」
     春節の夜、小黒は風息達の下で過ごすのが慣例化していた。昼までに各々顔見知りとの挨拶を済ませて、夕方頃に風息が無限と小黒の拠点に顔を出す。それから小黒を連れてふたりが出て行って、翌朝戻って来るまでは無限も新年会に参加するのが通例だ。
    「そっか。早く来すぎたかな」
    「いや、そろそろ頃合いだろう。呼び戻そうか」
     無限の分の土産だとビニール袋を手渡しながら特に気にした様子もない風息が部屋に上がり込む。その背中に視線をやりつつ提案してみたが、んん、と風息は気のない声を上げるだけだった。
    「友達と遊んでるんだろ。もうちょっと後でいいよ。それにあんたとちょっと話してくるって言っておいたから、多少遅くなっても大丈夫だし」
    1831

    sinohara0s

    REHABILI猫は人間には聞こえない声で鳴けると聞いたので
    ※謎の無黒風仲良し時空

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_nya-nya-.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/nya-nya-.html
    サイレントニャーニャー 風息がひとりで相槌を打っていると思ったら、小黒が彼の膝に乗っていた。ふんふんと興味深そうに子猫に頷いている風息を後目にしながら、無限は風息の座るソファの斜め横にある食卓の席に腰かける。無限には風息の独り言としか思えないのだが、実は小黒も喋っているらしい。
     それを知ったのはつい最近のことで、それまでは無限は小黒を無視すると度々文句を言われていた。初めての時などもっと酷く、突然無限の脇腹にぶつかるように飛び込んできたと思えば、どうして自分を無視するのかと涙ながらに訴えられて無限は困惑するしかなかった。
     この世に生を受けて四百年に四半世紀を足してまだ足りない。それだけ生きれば耳の一つ衰えてもおかしくはないと思ったが、弟子以外の声を聞き逃してしまうこともないのだ。なぜよりによって小黒の声が聞こえないのか随分長い事悩んでいたのだが、どうやら猫の生態が関与しているらしい。
    1811

    sinohara0s

    DONE風息が受け取ってきた誰かが諦めた未来への希望について 長い時間をかけて和解して腐れ縁化している風息と無限

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_hana.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/hana.html
    夢見る花 ひとが諦めた時に零れる祈りは花束に似ている。そう無限に告げた時、風息はもう相当に彼を信用してしまっていたのだろう。
     そういう瞬間に多く立ち会ってきた。むせかえるように香るものや、色鮮やかにきらめくもの。からからに乾きながらもまだ姿を保とうとするもの、茎から腐り行きつつあるもの。まだ世界を知らぬままの花開く前の淡い蕾。
     そのたびに、風息は彼らが描く未来の姿を受け取ってきた。その一瞬、最後の力を込めて形にするそれらを抱き留めて、いつかその世界を己の眼に納めようと彼らに風息は誓ったのだ。数々の祈りが自身の判断に影響を与えた自覚はもちろん風息にもあったが、後悔などしていない。
     脈絡なく始めてしまった風息の話を無限は黙って聞いていた。風息が言いたいことを言い切って口を噤んでしばらく静寂を拵えてから、それは本来分かち合うべきものだろうと無限は口にする。
    1988

    sinohara0s

    DONEこれから初夜を迎えるぞというタイミングの风无♀(風無♀)書きました。
    ※无女体化及び无の昔の男の話題あり
    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/y_kizu.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/kizu.html
    傷と夜 色恋に身を投じるのは久方ぶりだと躊躇う無限に合わせて、少しずつ関係を進めて来たと思う。窺うように彼女に触れて、体が強張るようであれば無理にはしないようにした。その甲斐あってか風息に抱き留められて深く口づけられても、無限は風息に心身を委ねてくれている。
    「無限、あんたを抱きたい」
     できるだけ誠実に響くように意識して無限にねだったが、どうしても底にある欲望は隠せなかったように思う。口づけに予兆を察していたらしい無限は、風息の願いに驚いた様子は見せなかった。
    「私の体はそう見栄えがいいものではないよ。武人として長く生きてきた。その歳月に相応の見目になっている」
    「それくらい分かってるつもりだ」
     ゆるりと目を伏せた無限への返事が不機嫌に響いてしまっても仕方がなかっただろう。無限がどれほどの力を持つ強者であるか、彼女と戦った風息が知らぬはずがない。彼女が体得したすべては連綿と続く鍛錬と実戦の積み重ねの上に成立しており、となれば然るべき傷も残されていて当然だ。
    7142

    related works