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    azusa_n

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    azusa_n

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    独占欲/お泊まり。
    バディエピ4,5のマフィア男的なモブとすれ違い要素を含む。
    #チェズルク版ワンドロワンライ

    その日、チェズレイとルークの行った捜査は空振りだった。

    情報を得るチャンスはあった。
    おそらく裏社会に生きるだろう男がチェズレイが一人で来るのであれば答えると言っていた。
    だが、ルークは情報を得られなくなるのは承知でその場からチェズレイを無理矢理引き離したのだから、情報を捨てたとも言える。
    その後も捜査は続けたが、他に手がかりもなく夜になり、不意の大雨で近くのホテルに避難せざるを得なくなった。

    空いていたのは一室だけ。
    ビジネスホテルの一室は清潔は保たれているがチェズレイから見れば最低限だ。

    浴槽に湯を張る音が聞こえて、すぐにバスタオルをルークが差し出してきた。
    それを受け取りはしたものの、雨に濡れた体を拭きもしないでチェズレイが呟く。
    「……私を使えば良かったのに」
    情報さえ手に入っていれば今頃はオフィスに戻っていて、雨にも濡れずに居られただろう。
    批難めいた口調はしっかり伝わったのだろう。
    「あの夕方のこと?」
    「ええ。その結果がこうですから」
    狭い部屋、窓に当たる大粒の雨。空調は強くしたけれど、濡れた衣服では肌寒い。
    「それはそうだけど」
    「私があの男の意図通りに全てを差し出すとでも思いましたか? そこまでの愚を犯すと侮られていたとは」
    「君に限ってそれはない。もし任せていたら今回の聞き込み以外にもなんでも聞き出してくれたと思う」
    「ならばそうすれば良かった」
    「でも、嫌だったんだろ?」
    チェズレイを見るルークの視線は真っ直ぐだ。
    「おや、そう見えてしまいましたか?
     ポーカーフェイスには自信があったのですが」
    「表情を見てもなにも分からなかったよ。ただ、前の件もあるし、なんとなくそんな気がしただけ。違った?」
    「別に否定はしませんが。嫌でもやらなければならないことなんていくらでもあるでしょうに。
     ボスも情報の代わりに雑用をこなしたりしているでしょう」
    「それとこれは違うじゃないか。僕は別にやっても構わないことしかしていないよ」

    男に好き勝手されることを危ぶまれたのならば分かる。見くびられたのならば腹は立つが。
    だが、そうではないという。そこには全く嘘がないと言うのは分かってしまった。
    それならば任せておくのが最も効率的だと言うのはチェズレイでなくとも分かっただろう。
    それなのに何故、今こうして不本意な宿泊を強いられているのやら。
    道理に合わない状況に陥った理由を探せば、一つ思い当たった。

    「……あァ。私ではなく、ボスが嫌だったと」
    揶揄いを込めた瞳で見れば視線が合う。
    「そうかもしれない。君は隠すのがうまいけど、傷つかない訳じゃないから」
    「ご心配痛み入ります」

    気遣いが故だと言うのはとてもルークらしい清廉さで好ましい行動のはずだ。
    独占欲の発露とでも言うのあれば、それは夕方に会った男とそう変わらない。そんなものは求めていない。
    そのはずだと言うのに、露ほども思わなかったと言う表情に苛立ちを募らせているのはどうしたことかと自問する。
    今はまだ薄靄の先の答えに辿り着くにはまだ情報が足りないのだと結論づける事にする。

    沈黙に耐えられなかったのだろう。
    ルークが浴室を振り返った。

    「……あ。風呂、そろそろお湯溜まったんじゃないかな。お先にどうぞ」
    「ボスも随分寒そうだ。一緒に入ります?」
    「え」

    私の意図を探して表情をくるくると変える様を見て、ようやく溜飲を下げる事が出来た。
    本気かどうか計りかねて困っている様子に小さく笑い声が零れたところでルークの眉が下がった。
    「………………君、そういう冗談言うんだな」


    - - - - -

    チェズレイを浴室に押し込んで、大きくため息をついた。
    ものすごくチェズレイの機嫌が悪かった。
    情報を集める邪魔をしたようなもの。
    更に天気や環境も悪いのだから機嫌が良い方が後で怖いが。
    苛立ちを表してくれるようになっただけ気を許してくれたことかと考えれば悪い気はしない。
    そんなことを思ったなんて本人にばれたらどれだけへそを曲げられるかわかったものではないが、興味のないことに無関心な彼だ。
    どうせ隠したってすぐにばれてしまう。後日、また機嫌が悪くなることは覚悟しておこう。

    湯船にはたっぷり湯が張られているはずだが、シャワーの音はずっと続いている。
    慣れない場所で湯船に浸かることはしない主義かもしれない。
    であれば言い争いをする前にさっさと浴室に突っ込んでしまえば良かっただろうか。

    落ち着いた所で先ほどのチェズレイの言葉について考える。
    別に手を出されるような事にはならないと確信しているとしても、あんな場から少しでも早く引き剥がしたかった。
    チェズレイの尊厳を切り売りするような真似はしてほしくない。
    答えた時にはそこまでしか考えていなかった。
    けれど、それ以外にも言語化は出来ない何かがひっかかっている気がしてもどかしい。


    「まあ、目下の問題はそこじゃなくて…………」

    部屋に一つだけのセミダブルベッド。
    それから今いる、濡れたまま座ってしまったせいで湿気たソファー。
    他に横になれそうな家具はない。
    それを踏まえて今日はどうやって寝るべきか、だ。
    ソファーに寝ることになるだろうに考えなしに座ってしまったのは随分疲れていたのかもしれない。

    そう自覚した途端、くしゃみが出た。

    「…ボス、大丈夫ですか?」

    そう間を置かずにチェズレイが出てきた。
    バスローブ姿の彼は、白い肌が上気している。
    何度見ても綺麗な人はいつだって綺麗で、どうしたって目を奪われてしまう。

    頭に被った巻いたタオルが左目を隠している。
    整える間もなく出てきてくれたのだろう。

    いつも完璧な人が身嗜みを整えるより早く来てくれた。
    頬に熱が上がった気がした。

    「あ、うん。風呂空いたなら入ってくるよ」

    先ほどまで真っ直ぐ見ることができた顔を、なぜだか直視できなくて、浴室に逃げ込んだ。
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    ポンタタの萼

    SPOILERネタバレは無いと思いますが、本編終了後時空のため念の為ネタバレ注意です。
    make magic聴きながら書いてたらめちゃくちゃ時間経ってて草
    キメ細かな肌チェリーなリップとろけるようなキュートな瞳!
    近頃、同僚のルーク・ウィリアムズの様子がおかしい。……と、思う。
    その変化に気づいているのは俺だけではないらしく、署内の視線はちらちらとあいつに向けられてはいるものの、どうやら肝心のウィリアムズ本人はその視線には気が付いていないようだ。
    そして、同じ部屋にいる同僚たち──特に女性職員たちからは、際立って熱い視線を向けられている。だが、それには恋慕の情は混じっていないだろう。
    彼女たちの視線に込められているのは、そう。興味と羨望だ。

    ルーク・ウィリアムズは、最近綺麗になった。


    ◇◇◇


    休職から復帰したウィリアムズは、パッと見では以前とそう変わりない。だが、ある時、特に目ざとい一人の後輩署員が気が付いたのだ。

    『……ウィリアムズさん、最近肌が綺麗じゃありませんか?』
    『そうかな? ありがとう』
    『何か変わったことしてるんですか?』
    『いや? ……ああ、でも。近頃貰い物のいい野菜を食べているし、……その、友人から貰ったスキンケア用品を使っているんだ。駄目にしてしまったら悪いからね』

    その短い会話は人の多く行き交いする室内で行われており、さして隠すように話された訳でも 3847

    emotokei

    PROGRESS第9回お題「野菜」お借りしました。
    #チェズルク版ワンドロワンライ
     分厚い紙の束を取り出すと、つやつやとした様々な色合いが目に飛び込んでくる。
     グリーン、ホワイト、パープル、レッド、イエロー……派手な色が多い割に、目に優しいと思えるのは、きっとそれらが自然と調和していた色だから、なんだろうな。
     大ぶりの葉野菜に手をのばして、またよくわからない植物が入っているな、と首を傾げる。
     世界中をひっちゃかめっちゃかにかき回し続けている「ピアノの先生」から送られてくる荷物は、半分が彼の綴るうつくしい筆致の手紙で、もう半分は野菜で埋め尽くされていることがほとんどだ。時折、隙間には僕の仕事に役立ちそうなので、等と書いたメモや資料が入っていることもある。惜しげもなく呈されたそれらに目を通すと、何故か自分が追っている真っ最中、外部に漏らしているはずのない隠匿された事件にかかわりのある証拠や証言が記載されていたりする。助かる……と手放しで喜べるような状況じゃないよな、と思いながらも、見なかったフリをするには整いすぎたそれらの内容を無視するわけにもいかず、結局善意の第三者からの情報提供として処理をすることにしている。とてもありがたい反面、ちょっと困るんだよなあ。
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