【hrak】上が耳にお願いをする「なぁ耳郎頼む!! この通り!!」
一体どうして、こんなことになってしまったのか。
耳郎響香は、所狭しと楽器が並んだ自室でため息をついた。目の前には、土下座でもしそうな勢いで「あること」を懇願してくる上鳴電気。
耳郎が微かに眉間に皺を寄せて首を横に振ると、その小さな仕草を察した上鳴が深く下げていた頭をおずおずと上げた。人見知りの子犬のような上目遣いでこちらの様子を伺ってくる。
「……やっぱ、無理?」
「そうじゃなくて、そこまでの勢いで頼み込むことかなって呆れてんの」
耳郎はそのすがるような瞳を直視しないように気を付けつつこめかみを揉んだ。床の上で膝を正している上鳴と、手近にあったドラムスツールに腰掛けた耳郎。この構図では、自然と上鳴を見下ろす角度になってしまって居心地が悪い。
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