短文伊地知潔高27歳、職業はとある有名人のマネージャー。給料はかなりの額をもらっている。その理由は担当の五条悟が伊地知の事しか聞かないからだ。天上天下唯我独尊を行く五条悟に着いていけるのは、彼しかおらず1度優秀な伊地知に違う問題児のマネージャーをやらす為に五条から離したら大変な事になった為に、伊地知は五条専属になった。因みになぜが、普段は横暴な彼が本気で伊地知に止められるとピタリと態度を変える。無論悪態はかなり着くのだが。そんな伊地知の1番の癒しは10年前に両親が再婚して出来た、元気で可愛らしい弟の虎杖悠仁。苗字が違うのは再度離婚したため1度離れ離れになったのだが、悠仁の父親が亡くなったために伊地知が引き取ったのだ。五条のマネージャーのおかげで悠仁を高校に行かせてやる事ができるために、伊地知も働きがいがあり更にバレない様に副業もしている為に生活には苦労はして居ない。何より、今世の彼が笑って生活をしてくれるなら、何よりも幸せだと伊地知は思う。
呪術師・・呪い・・呪霊、本当に辛い日々、生き死にを背負うまだ幼い少年を伊地知自身が守れない辛さ。何度も願った幸せは彼自身が愛してやまい人の手により奪われた。その彼もまたその後誰にも分からない様にだが苦しんでいた。
「伊地知?今日はオフじゃないけ?」
国民に愛されている五条悟に呼ばれて伊地知はふりかえる。
「あぁ・・五条さん、いえ少し呼び出されまして」
「あれ?僕も~また何かやらかしちゃったかな?」
楽しげに笑う声にこの人はと思いながら溜息を着く。
「叱られるのは私なんですが?」
「まだ悪い事とは決まって無いでしょう?」
「休日に呼び出されていい事なんてありませんよ」
少し機嫌の悪い伊地知に五条は珍しいと唇を尖らせる。
「いい知らせだったら伊地知マジしっぺね」
「なんでそうなるんですか?!意味分かりませんよ」
「だって伊地知が僕をいじめるし」
「どちらがですか?」
こんなやり取りも伊地知には楽しい。あの時とは違う世界での幸せな世界。
「お兄ちゃん!潔高お兄ちゃん」
会社前で響く自分を呼ぶ声に五条共々ふりかえる。伊地知を見つけて嬉しそうに手を振る可愛らしい弟の悠仁に伊地知も手をあげる。
「悠仁君!」
「・・・・ゆうじ」
その時隣で五条が息を呑むのが分かり伊地知はその顔を盗み見る。嬉しそうに揺らぐ瞳、そして気が付いた彼もまた前世の記憶があるのだと。伊地知の声に嬉しそうに走って来る悠仁に伊地知は微笑む。
「お兄ちゃん今日仕事?」
「すぐに終わりますよ、晩御飯迄に帰れます」
「本当に、じゃ作って待ってね!あした、友達泊まりに来てもいい?」
「構いませんが、宿題してくださいね」
その言葉に悠仁は苦笑いをする。その横で固まり悠仁を見つめる五悠に伊地知は少し微笑むと
「そうだ悠仁君、一緒に帰りましょうか?事務所で待っていて下さい」
「えっ?でもさぁ?迷惑じねぇの?」
チラリと五条を見て目の下が赤くなる悠仁に伊地知はふふふっと笑い。
「ポテチとコーラで休憩しながらゲームしていて下さい」
「この子?伊地知の何?」
ようやく口を開いた五条に伊地知は悠仁の肩に両手を置いて五条に体を向けさせる。
「私の弟の虎杖悠仁君です」
「虎杖悠仁です。潔高お兄ちゃんがお世話になってます」
ぺこりと頭を下げる、悠仁の頭を五条が優しく撫でる。
「良い子だね悠仁・・今幸せ?」
「えっ・・はい!お兄ちゃんが面倒見てくれてからすんげー幸せです」
はにかむ笑顔に五条も微笑む。
「悠仁?伊地知の用事早く済ませるから事務所で待ってなよ」
「えっ?良いの?」
「良いですよ、行きましょうか悠仁君」
三人で事務所に向かう道中、五条と悠仁は楽しそうに話をしているのを伊地知は後ろから見つめる。まるであの頃の様で楽しそう。
「ちゃん・・お兄ちゃん?」
「えっ?なんですか?」
「あれ伊地知が話聞いてないなんて珍しいね?」
「いえ・・ちょっとすいません」
「別に良いけどさ・・疲れてんの?」
その言葉にいえいえと笑い答える。
「所で悠仁君どうされました?」
「あのね、五条さんがオーディション受けないかって・・受けていい?」
「また貴方は突拍子も無い事を悠仁君に」
「だって今度やるドラマの役の主人公、悠仁のイメージピッタリよ!やらせるでしょ?」
溜息を着くと悠仁が心配そうな顔をして伊地知を見る。
「ちゃんと勉強するから?駄目?」
きっと五条の口車に乗せられたのだと思いながら、五条を見れば珍しく不安そうな表情に伊地知は微笑む。
「構いませんが、実力でお願いしますよ。受かるとは思わない様に。そんなに甘くは無いですから」
「じゃ僕もこのドラマのオファー受ける!どうせその説得に呼ばれたんだよ、お前も僕も」
「今度はどんなドラマなんですか?」
「ほら人気の漫画のお化け退治の」
「俺が好きなやつ!」
「あれですか・・」
どこか前世を思い出す作品に、何故五条が嫌がったのか分かり納得した。
「俺絶対に頑張るから!」
その言葉に伊地知が微笑むのだった。事務所で一連の話を終えて、悠仁の華やかさに事務所が伊地知に頼み込みその日うちに、悠仁は五条の後輩になりオーディションを見事に勝ち取った。その後ドラマは最高視聴率をたたき出して映画も決まり、悠仁はその後五条には及ばないが、虎杖悠仁の名前を知らない人は居ないという迄になって、数年後・・・
「伊地知?もしも僕が悠仁と結婚するって言ったらお兄ちゃん的には僕をビンタする?」
事務所の控え室で聞かれた質問に伊地知は固まると溜息をつく。
「貴方が、クズな行動を悠仁君に取らないで、2人で幸せになるなら構いませんが」
「・・・・」
「なんで黙るんですか?」
「いや・・反対されると思ってたからね」
「悠仁君と決めたなら構いません」
「ありがとう伊地知」
「いえいえ、では私はこれで仕事もありますし」
「お前も幸せになれよ・・俺の世話だけじゃなくて前世も今も頑張りすぎだよ」
その言葉に伊地知は少しだけ笑って部屋を出た。
「貴方が幸せなら私も幸せなんですが」
次の日には五条悟と虎杖悠仁の連名で結婚報告があり世間を騒がせて、三人共、社長に呼び出されたのだった。