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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    甲操 花唄恋歌 弍 蕾芽生え

    ##甲操
    ##花唄恋歌
    ##パロディ

    2021.06.09
    現パロ


    中二×小四

     あいさつを返した知らない大人に、ずっと手をつないで連れられている。むかえを約束してくれたおねえちゃんを待っていたところからは、だいぶはなれてしまった。
     足、いたいな。どこだろう、ここ。学校へはバスがあるし、あんまり家からはなれないから、このへんはちっともわからない。スーパーへの道は覚えたから、おつかいしてくるって、初めておゆるしが出た日だったのに。止まりたくて引っぱってみても、反対に引きずられ続けて、もうつかれてしまった。
     どこまで連れて行かれるんだろう。家まで送ってくれる、わけじゃなさそう。どうしたらいいかわからなくてきょろきょろ見回しても、どの人に助けてって言えばいいかもわからない。
    「その子、おばさんの子?」
    「え、えと」
     目の前に立たれたら、みないふりしてさけられないらしい。黒色の、つつみたいな服のおにいさんが、こわい顔をして止めてくれた。やっと止まれた。足がひりひりする。手は、まだはなしてくれそうじゃない。
    「一人で困ってたから、交番に連れて行こうと思っただけよ」
    「スーパーの事務所とかじゃなくて? 敷地出て、わざわざ? 随分遠回りするんだな」
     おにいさんが、しゃべれなくなったおばさんからぼくを見る。耳に当ててたスマホをおろして、こわかった顔をやめて、やさしい、こげ茶色の目でみつめてくれる。
    「この人、君の知ってる人? 俺と行くより、この人と行きたい?」
     おばさんに持たれたままの手が、いやなふうにぎゅっとされる。いたいけど、でも、おにいさんの声のおかげで、自由に動かせなかった体が、やっとぼくのものにもどってくれた、気がする。ぶんぶんふって、ちがうって、言いたくて、あとちょっとがんばって、口をあける。
    「やだ……おばさん、ずっと、止まってくれないから、やだ。きらい」
    「だ、そうだよ。観念して離せよ。逃げられるなんて思うな。あんたの顔、覚えたからな」
     おにいさんの、顔も名前もわからないけど。ぼくを見て話してくれたから、信じてみても、いいのかな。かたかたして、あいた手からも、ぼくの体をとりもどす。また、ひっぱられちゃう前に、見せてくれた手にくっついた。
     あったかい。こわかった。ありがとうって言う前に泣いちゃったぼくをだきしめて、せなかをとんとんたたいてくれる。おにいさんの手、おっきいな。おねえちゃんたちより、おかあさんよりも、おおきくて、かっこいい。
    「春日井くん……! そっち、いた……!?」
    「羽佐間! こっち! 警察、連れてきてくれた?」
    「あ、ぁ……」
     おにいさんのスマホから同じ声がして、だいすきなおねえちゃんが、青い服のおとなをつれて走ってくる。あっという間にとじこめられたおばさんが、へんな目でぼくを見た。おにいさんのおおきな手が、ぼくの目をとじこめる。
    「あんなの、見なくていい。家に帰ったら、あったかいご飯が待ってるよ」
     かえるなら、おにいさんもいっしょがいい。まだ、いっしょにいてほしい。ちょっとこわかった黒い服は、ぼくが着てるのよりずっとかたくて、つかんでおねだりしようとしても、ちょっとにぎれそうにない。
    「……おにいさん、もう、いなくなっちゃう?」
     つかめないから、泣いたまま、おにいさんの顔を見る。おねえちゃんによばれてたし、なかよしなのかな。ぼくの顔見てたすけてくれたの、おねえちゃんのともだちだからなのかな。だったら、ぜったい、こわくない。
    「家、違うからね。君たちを送り届けたら帰るつもりだけど……」
    「やだ。いっしょにいて」
    「やだって言ったって……」
    「操も離れたくないみたいだし、お夕飯、うちで食べていかない? いつも一人で食べてるって言ってたよね。お礼もしたいし、準備がまだだったら、どうかな」
    「どうって……言われても……」
     青い服のおとなと話してたおねえちゃんが、にこにこえがおでもどってくる。しゃがんで、ちょっと泣きそうな顔で、ぼくの頭をなでてくれる。
    「こわかったよね。すぐに来れなくて、ごめんね」
    「おにいさんがたすけてくれたから、だいじょうぶ」
     おねえちゃんは、悪くないよ。しずかになっちゃったおにいさんにもっとくっついて、だいじょうぶだよって、思ってもらえるように、笑う。
     そういえば、おにいさんは、おなまえなんていうんだろ。かす、かすが、い……
    「春日井くんね、春日井甲洋っていうおなまえなのよ。操もごあいさつして、ありがとうしよっか」
    「こう、よう」
    「え、呼び捨て?」
    「ぼくも、みさおってよんでいいよ。はざま、みさおです。たすけてくれて、ありがとう」
     こまった顔でも、だきしめてくれるまんまの手は、すごくやさしい。ずっとここにいたくなる。
    「いいなあ。私も甲洋くんって呼ぼうかな。私の事も翔子って呼んでくれたら、おそろいだよね」
    「えッ?!?」
    「こうようくん、ごはん、いっしょに食べよ」
     おねえちゃんが味方だから、ぜったい連れてける。おねえちゃんはすごいから。つつの服のポケットにつかまって、おへんじしてくれないこうようくんをふたりでじっと見る。
    「…………おじゃまじゃ、ないなら……」
    「ほんと!! こうようくん、家まで来てくれるの!?」
    「操、声大きいよ」
     そうだった。外で話す時はしずかにって約束なんだった。口の横に手をあてて、ぽそぽそ続けておねだりする。
    「ぼくのよこすわってね。約束ね」
     うなずいて、ポケットの手をとって、立ちあがる。
     おねえちゃんが、どっちといたい? 好きなほうでいいよって目で見てくれたから、こうようくんの手をにぎる。ちゃんとつないでくれた手は、やっぱりすごくおおきい。かっこいいな。ぼくも、こんなふうにおおきくなれるかな。おねえちゃんともつなぎたいから、もうかたっぽでぎゅっとする。ここ、うれしい。カノンおねえちゃんとおかあさんもいっしょなら、もっと、もっと、うれしくなれる。
    「大した事、してないんだけどなあ」
    「なに言ってるの、大事な弟を助けてくれたんだから大した事よ。甲洋くんは、もっと自分を褒めてあげて。それに操には、もうとっくにヒーローみたいよ」
    「名前、ほんとに呼ぶんだ……」
    「甲洋くんは、私の名前、呼んでくれない?」
    「呼ぶ、呼ぶよ……ちょっと待って……」
     頭の上で、だいすきな二人の声がする。たのしみだなあ。おとまりもしていってくれないかな。次にあそぶ約束は、どうやってしようかな。
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