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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    甲操 なごやかにほどけあいましょう
    アンケ ありがとうございました😘
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    ##甲操

    2021.11.13

     「しばらく一人にして」と意識をそらされてから、どれくらいの時間が過ぎただろう。追い出されはしなかったけど、隣に座ればいつも向けてくれる視線をちっともよこしてくれないのがさみしくて、甲洋の姿が見えなくなるのもいやで、中途半端にキッチンまで逃げてしまった。意識で僕を追う事もせず、いつも二人で並ぶソファの半分を開けてぼんやりと脚を投げ出している。
     些細な食い違いから始まった口論は、きっと大したものじゃない。互いに意地を張ってしまってるだけだ。なにも言わずにいても、明日にはいつもの甲洋に戻っているだろう。僕の心にわだかまりを残したまま。
     よく話すようになってからも、何度か意見を違えたまま一夜を明かすことがあった。僕はボレアリオスに籠ればそれで済むし、彼もヒトの手伝いやらで忙しくできる。それぞれで離れて過ごした後に、口論には触れずに新しい話題を語り合った。
     あの頃はそれでよかったけれど。今だって、戦闘にだって支障はきたさないだろうけど。同じ屋根の下にいるのに目が合わないのは、さびしい。
     仲直りのきっかけを探したくて冷蔵庫を開ける。ずっと座ったままだから、きっと喉が渇いているだろう。体も冷えてるかもしれない。お湯を沸かす準備をしてから、夕陽を溶かしたような濃い琥珀色を取り出す。マグカップに中身を垂らして、湯気を注いでからよく混ぜればいい匂いがする。
     そういえば、これの作り方を僕は知らない。食べ物だって、感情だって、甲洋が作ってくれるものをいつも与えられてばかりだ。今、甲洋が怒っているのだって、僕が心配させてしまったからで。うわべで謝ったところで、行動を改めないだろう僕を理解しているからこそ、彼は激情と一人で向き合おうとしている。
     戦い方を、知っているのに、もっと簡単そうな仲直りの方法を、きっかけに頼るようなものしか思い浮かべられない。もう少し生きてみたら、わかる日が来るのかな。
    「甲洋」
    「なに」
    「今日、寒い、から。あたたかいもの、飲んで」
     返事をしてくれる声は、いつもどおりに優しい。拒むような見えない壁が怖いけど、ここで引いたらもう一回話しかけるのまで怖くなりそうで、店で使うのより小さなトレイに並べたうちの、ひとつを差し出す。
     マグカップのからだをいきなり持っても火傷しないように、ちょっといいのを僕とおそろいで二つ買ってくれた。あの日受け取った優しさを、返せるわけじゃないけれど。受け取って欲しくて伝えた言葉だって、甲洋からの受け売りだ。
    「一人で作ったのか」
    「お湯、入れただけだよ。それに、僕だけでやれること、増やせって、言ってたし」
     怒っていたはずなのに、なんだか、さびしそうに見える。感情の動きが読めない。どうしたら、よろこんでもらえるんだろう。
     次の言葉をくれずに液体に口をつける。おいしいかな。甲洋が食べさせてくれるものに間違いはないけれど。手順はふたつきりとはいえ、初めて触るものに不安はある。
     だけどそういえば、僕が飲ませてもらう時よりも、ずっと色が濃かったような……?
    「ッゲホ、ぇほ、う……っ」
    「こ、甲洋? 大丈夫?」
     反応がおかしい。間違えてしまったかもしれない。ますます怒らせていたらどうしようと、覗く肩が震えている。
    「くる、す、これ、何杯入れた……?」
    「スプーンに三回くらい……」
    「そん、そんなに苦いの、すきだっけ?」
     怒ってる? 違う、笑ってる。乾いた喉をごまかすよりおかしいのが強いらしくて、震えは止まらない。
    「濃く作ってあるから、ひとすくいでいいんだよ」
     ちょっと乾いた声でくつくつ笑う。そのくせにまた次を飲んで、もう一回咳き込みながらまた笑う。シロップがもったいないから、とかじゃ、なさそうだ。
     適量を訂正したのに、どうしてまた飲むんだろう。甲洋がおかしくなっちゃった。
    「……もう、怒ってない?」
    「吹き飛んだ。なかった事にはしないけど」
     聞かせてくれるのは、いつもどおりの優しい声だ。雰囲気だって和らいでいる。ここにおいでと軽く叩いてくれるオレンジ色のふわふわに、いつもより隙間をなくして座ると抱き寄せてくれる。離れてた時間は一日にもならないのに、世界を一周するくらい会えなかった気分だ。
    「ごめんなさい。僕、甲洋のこと、怒らせてばかりで」
    「一人で考えて、どうだった?」
    「わからない。甲洋に悲しんでほしくないって思うけど、僕にできることだから、おんなじようにしちゃうと思う」
    「だろうね。お前のそういうところ、無理に変えられるなんて思ってない」
     寄りかからせてくれる体はあたたかい。彼はここに生きている。僕も生きているから、今同じ世界にいるから、甲洋のあたたかさを感じられている。甲洋に、受け容れてもらっているから。僕が甲洋を、受け容れているから。
    「来主特製ドリンクに免じて、今日はここまでにしようかな。俺と仲直り、してくれる?」
    「また、怒らせちゃったら、どうしたらいい?」
    「来主が自分で考えて。答えを提示したら、俺の一方的な行為になるから」
     ななめになった頭に甲洋の髪がかぶさる。くすぐったい。僕からもすりつくと、両腕できちんと抱きしめてくれた。
     絶対に変化を提示しなくちゃいけないわけじゃ、ないらしい。仲直りって、難しい。
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