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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ガンマト。こっそり会う敵同士の二人

    #ガンマト
    cyprinid

    密会 旅の途中で大きな街に立ち寄った。久しぶりの街の賑やかさに若い連中は浮かれている。マトリフもようやくベッドで眠れると思うと足が軽くなった。
     先に宿屋をおさえようと街の大きな通りを歩く。人通りが多く、アバンを先頭にしてマトリフは一番後ろにいた。
     すると誰かに手を引かれた。驚いて振り返ると青年が立っている。見かけない顔だが、それが誰だか理解してマトリフは慌ててその青年の手を引いた。
    「どうしたマトリフ」
     気配に鋭いロカが振り返る。ロカはマトリフの手を青年が掴んでいるのを見た。
    「いや、知り合いだ。ちょっくら飲んでくるから、先に宿屋に行っててくれ」
     言いながらマトリフは青年を連れて路地裏のほうへと向かう。怪しまれなかっただろうかと振り返るが、ロカたちは人混みに紛れて見えなくなっていた。
     マトリフは路地裏に青年を連れ込んだ。あたりを見渡しながら声をひそめる。
    「……あいつらがいる時に来るなって言っただろ」
     青年は眼鏡を押し上げるような仕草をしてから、自分の顔に眼鏡がなかったことを思い出したようだ。姿を変えても癖は抜けない。青年に化けたガンガディアが申し訳なさそうに言った。
    「突然に来てすまない。どうしてもあなたに会いたくて」
     ガンガディアはすまなさそうに身体を縮めている。そんな姿を見るとマトリフはそれ以上は強く言えなかった。
     ガンガディアとマトリフは敵対していながらもお互いに思い合っていた。そのため仲間たちの目を盗んでは逢瀬を重ねている。
    「どうしたんだよ。何かあったのか」
    「実はこれを見せたくて」
     ガンガディアは懐から一冊の魔導書を取り出した。そしてそれを開くと、挟まれてあった栞を手にする。その栞は押し花を薄く固めたものだった。
    「……その花、どっかで」
     言いかけてからマトリフは気付く。それは以前の逢瀬のときに一緒に見た魔導書に記載されていた花だ。見た目が美しい花だが、そのために希少なものだった。押し花になっているため色は褪せているが、それでも美しかった。ガンガディアは収集した魔導書にその栞が挟まってあるのを見つけて、どうしてもマトリフに渡したくて会いにきたらしい。
    「受け取ってほしい」
     ガンガディアはマトリフに栞を差し出した。
    「いいのかよ。この花には薬効もあるんじゃなかったか」
    「よく効く薬草になると書いてあった。飾るのか使うのかあなたが決めればいい」
     差し出された栞をマトリフは受け取った。確かにこの花を見て美しいと思ったが、それを手に入れたことよりも、それを見つけて飛んで会いにきたガンガディアの気持ちのほうが嬉しかった。マトリフは栞を懐へと入れる。
    「ありがとよ」
    「喜んで貰えて嬉しいよ」
    「もう行くからな。あいつらに怪しまれたくねえし」
     マトリフはそのまま行こうとしたが、その手をガンガディアが掴んで止めた。
    「すまない……もう少しだけ一緒にいたい」
     甘え下手のガンガディアの精一杯の言葉に、マトリフはつい絆されてしまう。マトリフはガンガディアを抱き寄せた。
    「じゃあ、あと少しだけな」
     マトリフとガンガディアは薄暗い路地裏で身を寄せ合った。
     それを、ずいぶんと離れた場所から見守る一団がいる。アバンたちとハドラーたちだ。
    「いい雰囲気ですね」
     アバンは朗らかに言うが、ロカは顔を顰めた。
    「隠れて会う必要なくないか?」
    「ノンノン、そのほうが燃え上がる恋というのもあるんですよ」
    「くだらん」
     忌々しそうに吐き捨てたのはハドラーだ。ハドラーからすれば仕事ができる部下が恋にうつつを抜かしているのが気に入らない。だがきつく咎めて魔王軍から抜けられても困るので、静観しているのだった。
    「キスくらいすればいいのに」
    「ガンガディア殿は清廉でおられるから外ではなさらないだろう」
     キギロは娯楽のような気持ちで眺めていたが、バルトスは真剣に同僚の恋路を応援していた。
     マトリフとガンガディアの逢瀬はみんなに見守られていた。むしろ、見守ることで両方の敵対意識が薄れて平和が生まれつつあった。
    「あ、そういえば三日後に地底魔城に伺いますので」
     アバンが思い出したように言う。するとハドラーも急に畏まったように胸を張った。
    「ククク、貴様が来るのを待っておるぞ」
     高笑いをするハドラーの口を押さえたアバンは、バルトスに向き直る。
    「ヒュンケルにもお土産持って行きますね」
    「あの子も会えるのを楽しみにしてます」
     アバンとバルトスの会話は和やかに続く。三日後には地底魔城で会合が行われる。そしてこの無血開城の大きな要因となっていることをマトリフとガンガディアは知らない。路地裏では抱き合っていた二人の姿はどこかへと消えていた。
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