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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ガンマト。現パロの夏祭り

    #ガンマト
    cyprinid

    夏祭り「ガキじゃあるまいし手なんて繋ぐかよ」
     照れて言った言葉だった。初めて二人で来た夏祭り。マトリフが暑さと喧騒に参っていたら、それに気付いたガンガディアが手を繋ごうと言ってくれた。だがマトリフは気恥ずかしさのほうが勝ってしまい、ぶっきらぼうに断ってしまった。
     ガンガディアは差し出した手をすぐに引っ込めて、取り繕うように笑みを浮かべた。
    「すまない。私なんかと手など繋ぎたくなかったか」
     ではもう帰ろうかと言うガンガディアに、マトリフは口を曲げる。自分のせいだと分かりながらも、どうしても素直になることができなかった。

    ***

    「はぐれたら困るだろ。手を繋いでくれよ」
     毎年恒例になった夏祭りでマトリフはガンガディアに手を向ける。ガンガディアも心得ているからその手を繋いだ。
     今年はついに浴衣を買った。二人で毎年行くのだからとガンガディアに言われて、さらに何着も試着してから、あなたはこの色が似合うと大褒めされて選んだ浴衣に身を包んでいる。ガンガディアも浴衣を着ているが、その似合いっぷりにマトリフは惚れ直してしまい、今夜は早めに祭りを切り上げて帰ろうかと思うほどだった。

    ***

    「暑いから外なんて行きたくねえ。アイス取ってくれ」
     ソファで丸まりながらマトリフは言った。今日が夏祭りの日だと覚えていたのに、昼寝をしていたらいつの間にか外は暗くなっていた。クーラーがついていないのか蒸し暑い。
     マトリフは酒が残っているのを感じながらソファから立ちあがろうとして、床に散乱している空き缶を蹴飛ばした。朝から飲んでいた缶ビールは中身が残っていたらしく、床がビールまみれになる。
    「ああ、くそ。ガンガディア」
     大きめの声で呼んでいるのに返事がない。マトリフは近くにあったシャツで床を拭いた。水が飲みたい。キッチンへ行ってコップを手に取った。
     どん、と心臓を揺さぶる音がする。思わず窓を見ると、花火が遠くに見えた。もう花火が上がる時間なのかと思う。マトリフは水が入ったコップを持ったまま床へと座り込んだ。
    「花火がはじまっちまったぞガンガディア」
     もういない相手にマトリフはなおも言う。呼びかけ続ければ返事が返ってくるような気がして、マトリフはガンガディアを呼び続けた。


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    kisaragi_hotaru

    DONE無自覚のままであろうとした両片想いガンマトが自覚させられるお話。欠損描写がありますが最終的には治りますけれど苦手な方はご注意くださいませ。謎時空なので深く突っ込んではいけない系です。魔王は祈りの間にて引きこもり中です。
     乱戦状態だった。一人ずつ探して回復していったのでは間に合わない。マトリフは冷静さを保ちながら素早く周囲を見回して、次いで傍らでモンスターを殴り飛ばしたブロキーナに視線を向ける。最近習得したばかりの回復呪文を使うにしても発動中は無防備になってしまう。詠唱のための時間稼ぎも必要だ。
     「よお大将! 全員を一気に回復させてやっからちょっくらザコどもの相手を頼むぜ」
     「いいよん」
     モンスターの大群相手にしながらもブロキーナは軽いノリで請け負った。
     そんな二人の会話を聞いていた一体のモンスターが不満をありありと孕んだ声色でもって割り込んだ。
     「ほう。君の言うザコとは私のことも含まれているのかな?」
     トロルの群れの向こう側から青色の肌をしたさらに巨大な体躯が現れた。眼鏡を中指の鋭利な爪で押し込んで歩み寄ってくるその理知的な動作とは裏腹に額には幾つもの血管が盛り上がっていた。
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