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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    現パロガンマト

    #ガンマト
    cyprinid

    帰り道 夏の遅い夕暮れに向かって歩いていた。マトリフの手にもガンガディアの手にも紙袋が下げされ、中には何冊もの本が入っている。
     たまに重なった休日だからと一緒に出かけ、見つけた古書店で二人して大量に買い込んだ。その古書店はかなり充実しており、お互いにじっくり吟味したら欲しい本がいっぱいになってしまった。ガンガディアは図鑑を多く買ったので紙袋はずしりと重く、マトリフもつい気分が高揚して買い込み、指に食い込む紙袋の重さに後悔の念が募った。
    「持とうか?」
     ガンガディアの申し出に、素直に頷いて紙袋を渡す。マトリフの手は赤くなっていた。
    「すまない。もっと早くに気付くべきだった」
    「お前だって重いだろ」
    「鍛えているから大丈夫だ。なんならあなたを背負って歩ける」
    「よせよ、年寄りじゃあるまいし」
     マトリフは赤くなった手を揉みながら、今歩いている道を見る。駅に向かう道だが、大通りから外れているために他に人もいない。静かな環境がいいとガンガディアが選んだ街だから、人間よりも自然のほうが多いような場所だった。
    「帰ってから読むのが楽しみだよ」
     ガンガディアの声は弾んでいる。随分と探していた本を見つけたらしく、ガンガディアはその本がいかに素晴らしいかを語り始めた。マトリフは程よく相槌を打ちながら歩く。
     古書店でのガンガディアの喜びようといったら、見ているこちらまで思わず笑みが浮かぶほどのものだった。その余韻はまだ続いているらしい。買った本を読み終わったらまた怒涛の感想を聞かされるのだろう。だがそれも幸せなことだとマトリフは思った。
     今世でマトリフはガンガディアと戦わなくていい。ガンガディアは魔王軍の幹部ではないし、マトリフも勇者一行の魔法使いではない。その手を取り合って笑みを浮かべ、言葉を交わして共に眠る。そんな当たり前のようで尊い時間を共に過ごすことができる。それがマトリフにとっての幸せだった。
     ふとガンガディアのお喋りが止んだ。相槌を打つのを忘れていたかとマトリフがガンガディアを見上げる。すると顔を真っ赤にしたガンガディアと目が合った。
     どうしたんだと問う間もなく唇を塞がれる。だがすぐに離れていった。マトリフが呆気に取られていると、ガンガディアは至極真面目な顔で言った。
    「あなたをずっと大切にするから」
     それはマトリフの心臓を撃ち抜くには充分な言葉だった。マトリフもガンガディアに負けないほど顔が赤くなる。
    「……突然なに言ってんだよ」
     マトリフが思い出していた前世でのつらい別れなんて吹き飛んでしまう。今世での幸せはきっと、前世で得られなかった分も含まれているのだろう。
    「……それはオレのセリフなんだよ」
     今度こそガンガディアを大切にする。手を取り合って生きるとマトリフは決めていた。ガンガディアはマトリフの手をぎゅっと握る。
    「最高に嬉しいよ」
     


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    kisaragi_hotaru

    MAIKINGガンマトとハドポプが混在している世界線のお話の続きです。マトポプは師弟愛です。ひたすらしゃべってるだけです。
    ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際には十分にご注意くださいませ。
    捏造と妄想がかなり激しいです。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。
    このシリーズは一旦ここで完結という形を取らせていただこうと思います。続きを待ってくれておりましたなら申し訳ないです……。
    大魔道士のカミングアウト 5 「――ハドラー様は10年前の大戦にて亡くなられたと聞き及んでいたのだが」

     本日二度目のガラスの割れる音を聞いた後、ガンガディアから至って冷静に尋ねられたポップは一瞬逡巡して、ゆっくりと頷いた。

     「ああ、死んだよ。跡形もなく消えちまった」

     さすがにこのまま放置しておくのは危ないからと、二人が割ってしまったコップの残骸を箒で一箇所に掻き集めたポップは片方の指先にメラを、もう片方の指先にヒャドを作り出し、ちょんと両方を突き合わせた。途端にスパークしたそれは眩い閃光を放ち、ガラスの残骸は一瞬で消滅した。

     「そうか……ハドラー様は君のメドローアで……」

     なんともいえない顔でガンガディアはそう言ったが、ポップは「は?」と怪訝な顔をして振り返った。
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