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    秋月水樹

    @hakoniwasiki

    特殊なものつらつら。

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    秋月水樹

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    珈琲を飲んで休憩をするユとハラさんの話。ユマハラ。
    ※解釈違いありそうなので何でも許せる方向け。

    #ユマハラ

    言葉に出来ない想いたち。砂糖とミルクを入れた甘いカフェオレのマグカップ。それと、何も入っていないブラック珈琲を入れたマグカップを持ちながらリビングに向かう。
    猫の絵柄のマグカップに入った黒い液体を眺めながら「大人だなぁ……」と呟く。
    ハララさんはボクと違って、苦い珈琲でも普通に飲む。
    毎回一口飲んでは、少し微笑んでまた飲む。
    カフェインを摂りすぎるといけないからと、朝起きた時と今みたいな休憩時に珈琲を入れるのだが、ハララさんは何時だってブラックを飲む。
    格好良い、憧れてキッチンで砂糖を入れる前に飲んだが、すぐに砂糖を入れた。
    ハララさんは平然とした顔で飲んでいる。
    それがとても、格好良くて好きだ。
    ボクの手から珈琲を受け取る時、少しだけ何か言いたげな表情だった。
    「どうかしましたか?」
    その言葉にハララさんは開きかけた唇を一回閉じ
    「……なんでもないよ、有難う」
    と言って、珈琲を啜った。
    様になるな、と感心しながら向かいの席に座って、甘いカフェオレに口をつけた。
    いつか、一緒に同じものが飲めたらいいなと叶わない願いを抱いた。


    はい、と渡されたマグカップを受け取り僕は礼を言い、一口飲んで目を閉じる。
    ふっと笑えば「ハララさん?」と目の前で同じように珈琲を飲むユーマが目に入る。
    「いや、なんでもない」
    僕は首を横に振って、また一口啜る。
    苦い。僕は僅かに眉をひそめてマグカップを静かに置いた。
    疲れている時に甘い飴を食べるように、禁煙をしてからは無性に甘い物が欲しくなるように。
    僕は珈琲に砂糖を入れるタイプだった。
    ギンマ地区の喫茶店は、よく気の利く店だったなと思いながら目を閉じる。
    予め砂糖を何杯かと聞いてきてくれたりした。
    苦い珈琲を飲むように思われがちだが、砂糖は二杯、ミルクも実のところは欲しい。
    疲れている時は自分で砂糖三杯は最低入れていたせいか、久々に飲むブラックコーヒーが苦く感じた。
    僅かに眉を寄せたのを察知したのか、ユーマが顔を覗き込むように近づいた。
    「頭、痛いですか?」
    心配そうに僕を見つめる瞳から少しだけ目線を逸らし、
    「……なんでもない」
    と呟いた瞬間、ユーマの手が僕の額に触れた。
    「熱はないみたいですね」
    急に触れられたことに驚いた表情を見せれば「す、すみませんっ」と額から手を離した。
    昔の僕なら嫌悪感でいっぱいだったし、何よりも触る前に反応ができてたたき落とす事も出来たはずだ。
    何時から触られても、良くなったのか。
    「……甘くなったものだな」
    そう呟けば「え、甘かったですか?」と僕の珈琲を見てユーマが驚いたような声を漏らした。
    「なんでもない。
    体調も問題は無い」
    僕の言葉に安心したように微笑む、「無理はしないでくださいね」
    いつか「本当は甘い方が好きなんだ」と伝えられたらいい。
    珈琲を啜る。何時か甘味も感じられるだろうと思ったが、珈琲は飲み終わるまで苦いままだった。

    (了)
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