むかしむかしの話。まだ神さまが人間の近くにいた時代。月の女神さまはたいそう嫉妬深く、怒りっぽいお方だった。彼女は自分のものは大切に、花よ蝶よと扱うが、こと大切なものに手を出されたときには烈火のごとき怒りをみせたらしい。
そんな月女神にはお気に入りの従者がいた。柔らかな亜麻色の髪に宝石のような青い瞳。人のことを想いやれる無性のその子を月女神は贔屓し、可愛がった。しかし、その従者は女神さまを裏切って、人間と駆け落ちした。怒った女神さまは従者に呪いをかけた。
女神が愛した美しい姿で永遠をむかえる呪い。
いまもその呪いは従者の子孫を蝕んだ。
♢♢♢
この世界は不思議なものに溢れている。
夜行フクロウと呼ばれる長命な獣人、血族と呼ばれる吸血鬼たち、人間になった熊。甘やかな味のする妖精。
彼らは人間とは会せない世界で生きている。しかし、こういう幻想種と呼ばれるモノたちは貴族に好かれた。夜行フクロウの羽ひとつ。寄生という獣人の牙ひとつ。血族たちが愛するワインのひと瓶。それらがどれほどの金を産むことか。
いま、ワタシの前に金の卵がひとり。
なんて嬉しいこと。あの『月相』がこんなに安い金で買えるなんて。日頃の行いが良いとこんな素晴らしいことがあるのだ。嬉しい、嬉しい。ここ数年でこれほどまでに嬉しいことはあっただろうか。
オークションで買い受けた純白の衣を纏った『月相』の前でこぶしを握る。下手をすれば、ヨシっと声が漏れたかもしれない。そんなことはどうでもいい。すべて些事だ。
「ハハッ、いやあ月相なんて本当に存在するんですねぇ。ハハ、ハハハッ、いや笑いが止まらない」
目の前に座り込んだ『月相』の男は俯いたまま肩を揺らした。真っ白な絹の衣に、金糸の刺繍。細かい意匠が施された仮面には淡い水色の宝石がキラキラと煌めく。ブルーアパタイト、アイオライト。その美しい輝きはいままで見てきた宝石など石ころにしてしまうほどに美しい。
細いあごに手をかけ、顔を上げさせれば、男のくちびるがふるふると小さく震えている。身を売られたのだから当然だが、くちびるを噛み締めるその姿は哀れみの感情を産む。
かわいそうに。自分がだれかの所有物になる未来がくるなどだれもなど考えたことはないだろう。当然のことだ、ワタシだってない。
表情を隠す仮面を取れば、仮面の宝石は色を失い、透明なガラスのかたまりになる。泣いていると思った男の顔は歪んではいたが、涙を滲ませている様子はなく、こちらを一瞬睨みつけてきた。
「泣いて、はいないんですね」
拍子抜けにも近い感覚。泣いていたら罪悪感が湧くのだから泣いていなくて安堵すべきなのだが、どうにも喜べない。真っ直ぐこちらを見てくる月相の瞳に射抜かれたような気持ちになり、居心地の悪さを感じてしまう。
尻がソワソワするような、座りの悪い感覚だ。長いまつげに縁取られた宝石のような瞳に気圧されていると理解して、カアッと頭に血がのぼる。
「泣いて……ほしかったのかい?」
落ち着いた男の声。見た目だけでいえば、まだ若い、未成年と青年の間にいるのにその声だけはどうにも大人びていた。幼い顔立ちに反して、低いからかもしれない。
「べつに、どちらでも。泣いても笑ったりはしませんよ」
見透かされた。そう感じて、ワタシは手に持っていた仮面をいじる。宝石が透明になったことが気になるのも本音。しかし、それよりもこの丸裸にしてくるようなこの男の目がいやだった。
「その仮面についている宝石はただのガラスだよ。青い色はわたしの瞳の色が反射していたんだ」
月相は自分の瞳を指さす。手首につけられた鎖がしゃらんっと揺れ、擦れる音がした。
青空のような、湖のような美しい瞳が光を孕んで、ゆらりと揺れる。吸い込まれてしまいそうなその深い空色に心が奪われてしまう。
ぱしり、自分の頬を軽く叩き、ワタシは頭を振る。
「ねぇ、きみはわたしを売り飛ばす気なのかい?」
男が首をかしげれば、真っ白なローブの端についた金の装飾がしゃらりと揺れた。喋りかたや声に比べて所作が子どもっぽい。歪なあやふやさが人間離れを際立たせた。
ここまで存在しているだけで、自分とは違う人間なのだと思わせてくるものは少ない。これは天性の才能か、はたまた本当にワタシとちがうのか。
「えぇ、売り飛ばします。そのために買ったんですから。月相……アナタは月相でいいんですよね?」
「……うん、わたしは月相。月女神に愛された一族の末裔だ」
バカなのか素直なのか。違うなどと言われても嘘だとわかるが、それにしたって正直に答える必要はない。
「きみは、商人なんだよね?」
「ええ、そうですね。商人なので、少しでもアナタで利益を得なければいけないんですよ」
月相はあたりを見渡す。ここはワタシの事務所にある倉庫のひとつだ。別のところにも大型の商品をしまう倉庫はあるが、ここには特に生物や小さな商品、高価なものが置かれている。美しい宝石に絵画、オルゴールやドール。それらが所狭しと並んだ中央に月相は座っている。さすがに売るまで面倒を見なくてはいけないのだから、他人と暮らすのがいやでも、自分の家に連れてくるほうが楽だ。このあと、部屋数と広さだけが自慢の家から空き部屋を開けなければならない。
「……えっと、あなたはなにが目当てで」
ああ、名乗っていなかった。ワタシの名前を言おうとした月相の姿をみて思い出した。
「モグラですよ。なに……とは?」
月相の一族はある年齢に達すると結晶化する。それがどういう理由かは知らないが、美しい見た目のままを保たせたいが如く、瞳の色と同じ淡い水色の宝石へと身体を変えるのだ。これは月女神の呪いと呼ばれている。出ていった従者に対する怒りがいまも彼らを苛めるのだ。
ただ、ワタシからすればこの宝石は月相たちが姿を変えることでしか手に入らないもので希少価値が高く、女神に対しては感謝の念しかわかない。人ひとりの体分の宝石が生み出されるのだ。それを売ったらどれほどの金になるか。
いま目の前にいる月相は価値のわかっていない男から買い取った。ただ見た目がいいからという理由だけで金をせしめようとした男に対して、支払ったお金など、月相を正しく売れば元をとれるどころか、大富豪になれる。
「……結晶化が、目当て…………」
「それ以外に?」
ふるりと月相は首を振った。
彼の口が「イライ・クラーク」とだれかの名前を口にする。
「わたしの名前だ。イライという。目玉を抉られると思っていたよ。目玉だけでもわたしたちは売れるんだろう?」
名前なんて名乗らないで欲しい。名前を知るとなんだか、目の前の男が商品ではなく、人間のように感じてしまう。そういう感情は摩耗していていいのだ。ワタシのために、無情に売り飛ばすために。
「……そりゃまあ売れますけど……傷物にして価値を落とすなら、すこし投資してでも高値で売りますよ」
「へえ、じゃあわたしが結晶化するまできみはわたしの身を守ってくれるのかい?」
「必要最低限は」
なにが言いたいんだ。いや、なんとなくわかる。イライ・クラークと名乗ったこの男はワタシと交渉をする気なのだ。なんとなくそういう雰囲気を感じる。警鐘が脳の中で鳴る。嫌だと、聞きたくないと思っても、イライはすうっと息を吸って、ワタシを見据えてきた。
「わたしは、わたしたち月相は結晶化する。それについてきみはどこまで知っているんだい?」
「……ある一定の年齢になればと」
ぐしゃぐしゃと腹の中をかき回されているような吐き気。さきほどのイライと立場が変わったようにワタシはくちびるを噛みしめ、眉間に皺を寄せ、彼を見下ろした。睨んでいるといってもいい。それでもイライは言葉を紡ぐ。
「うん、一定の年齢がくればわたしは結晶になる。ひとの大きさをした宝石ができるんだ。うれしいだろう? なんなら結晶化することをパフォーマンスにしてもいい」
「パフォーマンス?」
「……知らないのかい?」
「なにが」
こちらに都合のよい情報が多すぎる。それがワタシの不安を助長させた。
商品に日が当たると痛むからこの部屋に窓はない。壁に取りつけられた燭台の火が頼りだった。本当は火もつけたくない。火事になられては困るのだ。ばちっと火が爆ぜる音がした。
「月相は予知能力がある。この青い瞳は女神さまの祝福だ。彼女は従者が災いから逃げられるようにこの力を授けたらしい」
その女神が従者を呪っていたら救いようがない。わがままで傲慢で、なんて女らしい神さまなのだろう。そういうずるさは女だから許される気がする。わたしが愛したのだから、与えてやったのだからそばにいてくれて当然なんて、男がやったら見苦しいだけだ。
ただ、そういう災害のような身勝手さは『神さま』の特権なのだろう。どの神話を思い浮かべても、神というものは身勝手でひとを不幸にする。
「……ふふっ、ごもっともだけど女性に対してひどい偏見持ちだなぁ」
「女性に、ではなくて……男がやったら気持ち悪いなって話ですよ。それに女性の神さまってそういう嫉妬深さあるじゃないですか」
「そうだね、女性の神さまは強いからねえ」
くすくすとイライが笑うたびに鎖が揺れる。細められた瞳がゆっくりとこちらを向く。
「未来はつねに変動する。過去とはちがってまだ訪れていないのだからね。簡単なきっかけでさまざまな方向に動いていく。だから、絶対に当たる予言というものはないんだ」
元も子もない。占い師という職業の人間全員に恨まれそうな発言だ。そういう抽象的なものを信じたことはないが、そう言われてしまえばさらに興味がなくなる。しかし、占いというものはわりあい金持ちに好かれるものだった。
金持ちは娯楽を求めている。金でなんでも手に入るからこそ、まだ足りないと渇望しているのだ。贅沢なことで……。彼らは楽しそうと思えば金をかけ、飽きてしまえばあっさりと捨てる。そうして盛り上がったのがある種の絵画の世界なのだろう。パトロンというのは金持ちたちの娯楽の究極だったのかもしれない。
そんな彼らは金を失うことを恐れていて、時には占いなどといった抽象的なものにも頼ってくる。もう神頼みぐらいしか手がないのかもしれないが、そういう奴らに限って信心深さのかけらもないのだから笑えてくる。
あと、女は占いが好きだ。特に貴族の退屈をしている女。
願掛けなどのその部類なのだろう。ワタシだって願掛けはしている。朝起きて、靴を履くとき左足から履くや、手首に着けるカフスボタンは右手からといった簡単なものだが。
「絶対に当たる予言というものがあったらすごいと思わないかい? そういうの好きな人がたくさんいるだろう、ね?」
「いま、ないってアナタが言ったんでしょう」
「普通はないけど、わたしならできる」
「へぇ」
「信用していないな……うん、そうだねいつだってできるわけではない。結晶化するときだけわたしたちは絶対に当たる予言をすることができるんだ。ふつうのときは外れたり、なにを見るか選べなかったりするけど、このときだけはちがう。わたしの望むがままに未来を見れるんだ」
いいパフォーマンスになるだろう? とイライは笑う。
自分の脳みその中でもイライが結晶化する瞬間に合わせオークションを始め、落札した客の予知をさせる。宝石目当て、月相という希少種目当て、予言目当て。最低でも三種類の客引きポイントが生まれた。全て当てはまっていれば、金を落とすだろうし、最低で一種に興味があれば貴族は娯楽がてら参加するだろう。
腹の底から笑いが込み上げてくる。この男は自分を売るのが上手い。金になる算段が一段上のものになったのだ。気分のよさに勝手に頬が上がる。
「ははっ、いいですねえ。悪くないですけど、それをアナタが言ってきたのに引っかかります。ねえ、そうでしょう? なにを企んでるんです?」
ゆらゆらと揺れるろうそくの火が月相の青白さを橙色に染め上げる。ぱちりとまばたきをしたイライは頬肉をおし上げ、まなじりを細めた。
「わたしはまだ結晶化できない。これはわたしの猶予で、結晶化は死と同義だ。だからね、それまでの人生を楽しみたいんだよ。美味しいものが食べたいし、きれいなものが見たい。この世界を楽しみたいんだ」
イライの細い指がワタシの服を掴んだ。顔が寄せられ、鼻と鼻が触れあう距離にイライの顔がある。毛穴ひとつ目立たない肌に、長いまつげ。うす桃色のくちびるが言葉を紡ぐのをワタシはなぜか眺めた。彼の肩を押して、距離を取ろうとすら考えられない。
「だから、モグラ、わたしに世界を見せて。わたしをあげる。ぜーんぶあげるから、わたしが満足するまでわたしに美味しいものを食べさせて、わたしを美しい場所につれていって。きみのそばならわたしはきっといままで知らなかったものを知ることができる」
美しい顔でイライは笑う。
世界に恋したように、なにかを夢想するように、期待に満ちたように笑うその顔は煌めいている。
「ッ、なんでそんな面倒なことを……」
「きみは面倒なことでも利になることなら厭わないはずだ。即物的な利益を得るならわたしの目玉を抉ればいい。目玉だけ売って、ぽっかりと空いた眼窩に宝石でも詰めて肉体はべつの人間に売ればよかった。でも、きみはそんなことをしなかった。だから、わたしはきみから逃げないし、美しい宝石になる。きみはその協力をすべきだ」
青い瞳がワタシを射抜く。自分を切り売りするだけの覚悟は瞳の奥に宿っている。
やっぱりこの瞳は苦手だ。ワタシを見抜いてくる。こんな利益のある話に乗らないわけにはいかない。ぐうっとうめき声を上げれば、イライは表情を柔らかくした。
「そんなに難しく考えなくても……きみはわたしを閉じ込めない。ときおり外に連れだす。そのかわりにわたしはきみから逃げない。そんな程度に考えてくれればいい」
「逃げださない確証がない。信じれるほどワタシはアナタと仲良くはありません」
「それを言われると信じてくれとしか言いようがないねえ。大丈夫、逃げださないよ。だって、きみが一番都合がいいんだよモグラ」
都合がいいという言葉は信用できる。はぁとわざとらしくため息を吐き出せばイライは肩をすくめた。
「逃げたら捕まえて、アナタが言った通り目玉を抉って売り飛ばしましょう。それでもアナタを買った分の元は全然とれる」
「そうだね、そうするといいよ。よろしくね、モグラ」
イライの手首に巻かれた鎖を外せば、彼は手首を軽く振った。なにもしないよ、というようにてのひらをこちらに見せてきたイライはわたしのあとに続いて立ち上がった。
「きみがわたしを利用するように、わたしもきみを利用するよ。そっちのほうがきみにとってはわかりやすいだろう?」
ごもっともで。返事の代わりにワタシはろうそくの火を吹き消す。真っ暗な部屋の扉をワタシはゆっくりと閉めた。
カーテンの隙間を寝る前に少し開けておく。
そうすると朝日が差し込み、自然に目が覚める。眠っている者は魚を取れないということわざあるぐらいだ。早起きを習慣にするのは悪いことではない。寝ている時間があるなら働いたほうがいいし、火を長く灯しているのは燃料の無駄だ。
太陽の光とともに起き、軽く身体を伸ばす。そうしている間に外から子どもの声や馬車がうごく音が聞こえてくる。
新聞を届けにくるのは孤児で、新聞配りは彼らにとって数少ない仕事だった。靴みがきや、煙突そうじよりと楽だという子どももいる。それぐらいには需要があった。たいていここらへんを配る子どもたちは決まっていて、いつも二、三人で大量の新聞を抱えてパタパタと走ってくる。子どもたちのその声は朝を告げるにわとりの鳴き声にも似ていた。
今日も騒々しい足音が聞こえてくる。
新聞はいい情報収集の手段のひとつだ。どれだけ多忙でも新聞を読む時間だけはなくさない。貴族であれ、商人であれ、会話の種がなによりも大事だ。会話ができず、教養もなければ上流階層はあっさりとワタシのような成り上がりを切り捨てるだろう。必死に必死に、今日も話題を脳みそに叩き込んでいく。
それと同時に情勢も大事だ。無駄なものを仕入れては損になる。いま世間が求めていて、売れるものを安いときに仕入れる。流行も気にしなければいけない。つまりいえば、情報は武器なのだ。
子どもが玄関扉近くに新聞紙を落としていく。パサリという音と、離れていく子どもたちの足音。それでもすぐに扉は開けない。開けてはいけない。開けたらすぐにでも隠れた子どもたちがわらわらとやってきてチップをねだってくる。むかし自分がやっていた手だからよくわかる。アイツらはするし、実際にされた。
少し待って、ワタシが出てこないとわかれば子どもたちは次の家にいく。もういいだろうと扉を開ければ、庭先の立派なオレンジの木が花をつけ始めていた。ふんわりと香ってくるその甘い香りが春を告げる。
コーヒーを淹れるためにお湯を入れたやかんを火にかける。ガスコンロというのは便利だ。キッチンストーブだったころよりも火事を心配しなくて済むようになった。お湯がわくまでの時間を近くで監視しておかなくていいだけで心の余裕がちがう。ここ数年、こういうものがどんどん急成長していく。ありがたいかぎりだ。
キッチンを覗けるダイニングの椅子に腰かけ、新聞紙を広げる。テヴェレ川にかかる橋に建築家が手を加えるだなんだという記事が見出しになっていて、思わずため息がでる。ローマ市内も流れているこの川の長さはイタリアで三番目に長い。ローマの北側にかかったミルヴィオ橋に交通規制がかかれば商品の仕入れにも時間がかかる。オークションに出向いたにしても橋の手前で足止めをくらったらたまったものではない。
壊れてもいないのだからそのままにしておけばいいのに。無駄なことに金をかけるのをやめるべきだ。貴族の娯楽で金を稼がせてもらっている自分がいうセリフでもないが、こういうときだけは腹が立ってくる。
一枚、紙をめくれば飛び込んできたのはドラッグ、マフィア、抗争と言ったイタリアらしい単語の数々。南のほうはそういうのが盛んだ。ドラッグの販売に手をかけてもいいなあと一時期思っていたが、下手に手を出して失敗する未来のほうがよく見えた。そういうのには手を出さないほうがいい。うっすら浮かんだ知人の顔に、しばらく会っていないなあと平和を噛み締める。
マフィアという連中に関わるとろくなことにならない。こっちはデミ・バーボンが率いるファミリーがわりかし真っ当に昔ながらのやり方で治めているため、それほどまでに大きな抗争に巻き込まれたことはない。しかし、あそこも先代からいまのボスになるときに内輪からの裏切りが出たという。その裏切り者はいまも捕まっていないのだから、内情としては芳しくないのかもしれない。
「モグラ、おはよう!」
「ッ〜〜!」
イライがワタシの肩を叩いてきた。悲鳴が漏れそうになるのを耐えながら、いつのまにそばにいたんだと睨めば、「ずっと声をかけていたよ」とイライはほほを膨らませる。
「ずっと無視するんだもん。そんなに面白いことが書いてあったのかい?」
「面白くはないですけど……考えごとしていたんですよ」
イライはいつもあの豪奢で汚れやすそうな白い服を着ている。高価なものだろうそれは普段使いするようには見えなかったが、彼いわく「わたしたちはいつ結晶化するか分からないからね。ある程度の年齢に達すると白を纏うんだ」ということらしい。
月女神が愛した白を尊い色とする彼らからすればこの服は儀式に向けての準備であり、この服は晴れ着なのだろう。
今日だってイライは白を身に纏い、金色の仮面で美しい瞳を隠している。
「お湯、吹きでていたよ。火事になってしまう」
いつのまに沸いていたのか。イライはパタパタとキッチンに走っていき、棚の中から紅茶缶を取りだしはじめた。
「月相! それはコーヒー用で……」
「放置していたきみが悪いんだよ。わたし、コーヒー飲めないから紅茶にするね」
べっと舌を小さく出したイライはやかんのお湯をティーポットに移しだす。不機嫌そうな顔を助長させたのはワタシがイライの名前を呼ばなかったことだろう。
月相と呼べば通じるし、ワタシも通り名であるモグラとしか名乗っていない。イライはそれが気に食わないのか、「わたしの名前はイライだ……月相は種族名だよ」と何度も言ってくる。名前を覚えていないのかい? とも言われたが、そんな馬鹿なことあるかとキレそうになった。仕事柄、名前と顔を一致させるのは得意なのだ。ワタシがイライを名前で呼ばないのはわざとである。それを知ってからさらにイライはわかりやすく拗ねたフリをするようになった。
イライが来てからひと月弱が経過した。
彼が結晶になる様子はみじんも見えない。騙されたのかと思うほどだったが、イライは「もし薔薇なら咲くだろう、だよ。ゆっくり待っておくれよ」と笑った。
少しずつここでの暮らしにも、ワタシとの生活にも慣れたのか、気安さと自由奔放さが出てきて腹が立つ。
驚くほど田舎に暮らしていたのか、イライは蛇口の存在も知らなければ、ひと家に一台オーブンがあることにすら驚きを見せた。いままでなにでパンやらなんやらを焼いていたのだと聞けば、共同の窯があったと言われ、いつの時代の人間だと頭が痛くなったのをよく覚えている。昔、いわゆるルネッサンスの時代には各家庭から持ち寄ったパンを焼いてくれるパン焼きたちがいたと言うが、今の時代では買うか、自分の家で焼くのが普通だ。
そう伝えれば、イライは「じゃあパン焼きの日はないんだ……」とすこし残念そうな声を出した。なんだ、パン焼きの日って。
操作ツマミひとつ、捻るだけで火が出ることに驚きと面白い反応を見せていたイライはもういない。いまでは当たり前のように扱うようになり、コーヒー豆とワインぐらいしか置いていなかった台所には食材とイライが好む紅茶が溢れた。
「モグラはご飯食べたかい?」
「……適当に食べていいですよ」
「食べてないんだね……もう! 身体に悪いよ! 簡単なもの作るから食べてね」
紅茶をワタシの分まで入れてきたイライは再びキッチンへと手早くなにかを作りだす。出来合いのものやパンやチーズをそのままかじる暮らしをしていたが、イライが来てからまともな食事をとるようになった。食事など食べて腹が満たされればいいと思っていたが、勝手に温かいものが用意される便利さに少しずつ贅沢になっている気がする。イライの食事がまた美味しいのが悪い。ひとり暮らしをしていたというイライはキッチンの使い方さえ覚えてしまえば、慣れた手つきで料理を作った。家庭料理だよといったそれにワタシは馴染みがない。野菜中心のバランスのよい食事はだいぶワタシの体調を良くさせた。胃の調子がいい。腹痛が減って、肌ツヤがよくなった。出来合いのものを買うよりも安く済んでいるためイライのこれに関してだけは文句は言えない。
「簡単なものだけど」
そう言ってイライはパンと昨日の残りのスープ、ほうれん草とじゃがいも、玉ねぎが入ったフリッタータをテーブルに並べた。フォークをこちらに向けてくるイライは食べない選択肢を取らせてくれはしないようだった。
頑固者め。悪態をつきながら、スープに口をつければ、野菜がとけたスープの塩味が身体にしみる。そうしている間にイライがフリッタータを四等分に切り分け、ひと欠片乗せた皿を寄越してきた。
朝食など何年も食べていなかった。それなのにいまでは出されたものを完食できるまでになっている。自分がいままで構築してきたものが少しずつ壊されている感覚。居心地の悪さが喉の乾きを生み出した。
「……ねえ、モグラ。わたし、ここに行ってみたいんだけど」
食事を終え、からになった皿をテーブルのすみに積んでいれば、イライは新聞紙の合間に挟まっていた広告を引っ張り出した。最近こういうのが流行っている。やれ、映画であれ、舞台であれ、観光地であれ、最近流行りだした写真機もしくは若手の画家が描いた絵を刷り、広告宣伝しているのだ。
写真は少しずつ浸透してきたが、まだ珍しく、新聞にもひと記事ふた記事、注目されそうなものにちいさな写真が載っているくらいなのに、なんともまあ。こういうのにひっかかる馬鹿などいないとおもっていたが、間近にいた。
きらきらとした目で期待をにじませ、こちらを見てくるイライはこのパンフレットと呼ばれた広告を掲げている。見るかぎり、それは花畑の広告らしく、淡い色彩といえばいいが印刷のときに擦れたのだろう薄い色味で黄色い花々が描かれ、遠くに雄大な山脈が描かれていた。欧州一と呼ばれる花畑で、旅行などに興味のないワタシでもそこがどこか知っている。
「ね! きれいだよね! わたしここ行きたい。モグラ、ジェラートも食べれるみたいだし、行ってみようよ」
ジェラートも、ってなんだ。そこはそんなに重要でない。
「行きませんよ」
「なんで!」
「花なんてどこでも見れるでしょう。わざわざ遠くにまで行く必要はありませんよ」
「一面が花畑なんだよ! こう、すごい咲いていて、きれいで、地方の料理も食べれるんだよ」
語彙力がなさすぎる。なにひとつの魅力も伝わってこない。ここまでプレゼン能力がないと笑いがこみ上げてくる。
両手を広げて、一面を表現しようとしているイライを冷ややかな目で見れば、気恥ずかしくなったのか両手を下げ、くちびるを少しつき出した。
「約束したじゃないか」
「拒否権だってあるはずですよ。というか、アナタここがどこか分かってるんです?」
「えっと……」
いまだに地理が覚束ないイライは目を泳がせた。
「ッ〜〜! わたしがきれいな宝石にならなくてもいいのかい!?」
ああ、わからなかったんだなあと納得する。結晶化にあたってイライは「みにくい心で宝石になると宝石は黒く濁ってしまう。だから、清らかな心で結晶化できるようにするんだよ」と語っていた。
嘘か本当かは知らない。しかし、簡単にいえば上質な状態で売りたければ願いを叶えろという脅しだ。はあっとため息がでる。
イライ自身、無理があるとは気がついているらしく、目が泳いでいた。きょろきょろ上下、左右へと動く瞳は見ていて面白い。
「そこはオーストリアとの国境近くで、ここらかだとだいぶ北上しなくては行けない。一日やそこらで行ける場所じゃないんですよ」
「むう……」
「なにより、いまは行かないほうがいいですよ」
「なんで」
くちびるを突きだしたままそっぽ向きはじめた。子どもか。
「いま何月ですか?」
「四月のおわり」
「ちゃんと見なさい。シーズンは六月から七月ってなってますよ。いま行っても、ただ緑色をした草が生えているだけですよ。なんなら羊たちがむしゃむしゃ食べてるかもしれない」
雑誌の一文には「お花畑が出現するのは六月上旬、見頃は気候にもよるが六月下旬から七月中旬ごろ」であると書かれいる。そこを指先でとんっと叩けばイライは目を細めて睨むようにその一文を見た。
「なんで年がら年中咲いててくれないんだい」
「むちゃを言わないでください。気候ってものがあるんだから、仕方がないでしょう。といっても、プリマヴェーラは四月から五月なのでここらへんでは花が咲き始めましたけど」
「……なにか咲いたのかい?」
「玄関先でオレンジの花が咲いてましたよ」
「えっ!? 見てない……なんでここでは咲いてるのにあっちは咲いてないんだ……」
「この国は縦に長いですからね。北はまだ涼しいんでしょう。こっちはだんだん暑くなりますよ」
ちえっと言いながら地面を蹴ったイライはずいぶんと子どもっぽい。冷めたティーカップを両手で包んで、イライは紅茶を含む。
「…………来月ぐらいになったらそっちに行くかもしれませんしね。そしたらアナタを置いていけないので、ワタシが仕事してるあいだ、勝手に見ていたらどうですか?」
「……え?」
「まあ、仕事入らないかもしれないので期待はせずに……」
どうにも甘くなったなあと思う。イライが目を輝かせているのがわかって、窓の方をむく。
窓の外で緑の草が風に揺れて、窓ガラスにかさかさとぶつかっている。今日は日差しが強いらしい。
「ほんと? ほんとうかい? モグラ」
「……ないかもしれませんが、タイミングが合えば」
「うん、それでいいよ! 一緒に行こうね」
「ワタシは行きませんよ」
くふくふと隣で笑っているイライの顔を横目で見て、何度目かわからない息を吐く。深く、ゆっくりと、噛みしめるように。
「……仕事してきます」
「うん、いってらっしゃい」
先ほどまでの不機嫌などどこかに飛んで行った顔でこちらに手を振ってくる。
ぱたりと扉を閉めて、執務室へと向かう。
いつもより長い朝の時間を過ごしてしまった。イライが来てからいつもそうだ。少しずつ少しずつ仕事以外の時間が増えていく。
「仕事、入れないとなあ……」
ドロミテ地方まで行く仕事はあまりない。北部へは貴族に呼ばれて出向くこともあるが一年に一度二度であり、この夏にそんな要望があるとは思えない。あっちにいる顧客にとりあえず連絡を取ってみよう。なにかを買ってもらえれば都合がいいが、いかんせんそこらへんは運でしかない。
あのイライの顔を思い浮かべると少しばかり無駄骨を折ってもいいかもしれないと思ってしまうのがいけないのだ。あ〜、ずるい。ずるい男だ。悪態をつきながら、インキ瓶にペン先を沈める。ちゃぽんっという軽やかな音が仕事を始めるスイッチを入れた。
モグラに追い出された。
彼の物言いは端的なやっかい払いだった。
ふつふつと悲しみが湧きあがる。モグラとだいぶ仲良くなれたと思っていたのに、そんなことはなかった。自分の思い上がりが恥ずかしいし、なによりモグラの心底迷惑ですと書かれた顔がすごく心に刺さる。
今日、モグラのもとに来客があるらしい。
それを知ったのは彼に朝食を食べさせているときで、彼は「だから大人しくしていてください」とわたしに言った。
彼がわたしに来客の予定を話してきたのは初めてだった。いつもいつの間にかいる客にこそこそ隠れたり、気がつかずにモグラに話しかけたりしてしまっていた。モグラはわたしが話しかけると客に対して、やんわりと笑いながら、わたしのことを月相だと紹介する。
モグラにとってある種のパフォーマンスだったのかもしれない。しかし、客が帰ると彼はわたしにあまり出歩かないでくださいと理不尽に怒るのだ。
そんな彼がわたしに先に話してくれたのが嬉しかった。まあ、先手を打ったと言われればそうかもしれないが、それでも少し信頼されたような気がしたのだ。
ここ最近、彼はわたしを置いて出ていくこともあったり、わたしがモグラの家のものを好きに使っても怒らなくなったりと態度がなんかした気がしていた。それも相まってわたしは嬉しさを覚え、なにか手伝うよと言ってしまった。
お茶くみであれ、茶菓子を準備するであれ、簡単なことならできる。
「ひどい! ひどいよ、もう!」
重たい木製のはしごを動かして、目当ての本棚にかける。かるく揺さぶってみてバランスを確認して足をかけた。
「そんなさ! めんどくさいです! って顔で見なくてもいいじゃないか! あげく、書庫で本でも読んでなさいってなにさ」
ねえ、レディと、話しかければ、羽を大きく動かし、空を駆けていた白フクロウがわたしの肩に止まる。同意するように小さく鳴いてわたしの頬に身体を擦りつけてくる。
「あっ、ちょっとまって……落ちちゃうから……ああやめてえ……」
はしごの上でがたがたとふたりで暴れまわる。きっとここにモグラが居たら、「やめなさい! 危ない!」と怒っているだろう。彼は『商品』に傷がつくのを嫌うから、わたしにも優しくする。
「知ってますよ〜」
ふてくされている。
自分でも恥ずかしいぐらいに腹が立っているのだ。好意を受け入れてくれだなんて傲慢にもほどがある。しかし、優しさは麻薬なのだ。じんわりと身体に染みわたるように、また、もう一度と求めてしまう。
「はやく、結晶になりたい……」
目当ての本を見つけて、軽くページをめくる。料理の本だ。最近、レパートリーがなくなってきたため、そろそろ新しい料理を知りたい。
モグラは絶対にこんな本読まない。彼の趣向とはべつの本がわりかしこの書庫に置かれている。きっと彼が自分の趣味で買った本は彼の書斎ぐらいにしかないだろう。ここにある本はモグラ曰く、商談で話を盛り上げるための教養として買ったもの、らしい。こういうところが彼は努力家なのだ。美術関連の本、医学書、童話。専門書から大衆文学まで幅広く置かれたこの本棚はわたしに娯楽をもたらしてくれる。モグラが不要になったからと捨てないでいてくれて助かった。
もう一冊ぐらいなにか読もう。そして、怒りを忘れよう。物語がいい。可能ならきれいな話と手を伸ばしたさきに、マクベスと夏の夜の夢の間に一冊のノートがあった。
「なんだろう……これ」
この本棚には似合わない使い古されたノートだった。ここの段にある本のタイトル自体あまり似合ってないないのだが、それにしてもこれはなんだろうか。一枚、ページをめくろうと思えば、白フクロウが本棚の上からなにかを落とした。
がしゃんっと大きな音が立つ。
「あっ……こら!」
なにが落ちたんだとはしごを降りようとすれば、入口のほうからまた別の音がする。扉が開く音。暗い書庫は小さな蝋燭の火で照らされている。淡い橙色がぽうっと浮いているだけ。そのさきでだれかが立っている。
「おい、誰だ……」
モグラの声ではない。
客は多々来るが、書庫にまで来た人間はいない。強盗かなにかか。得体の知れない恐怖を感じて、はしごの上で足がすくんでしまう。
はやく、降りて、落としたものを拾わなくては。
そうわかっていても身体が動かない。カラカラの喉では返事もできず、だれかが近づいてくるのを息をひそめて待つことしかできない。
「……誰だおまえ」
黒いフードの男だった。わたしよりもすこし背が低いかもしれない。深く被ったフードの下から爛々とした赤い瞳がこちらを睨んでくる。うまく返事ができなくて、「へっ」とか「あう」だとかの音を漏らしていれば痺れをきらしたのか、男は首を傾げながら一歩ずつ近づいてきた。
「泥棒か? 書庫に? ああ、美人局だったか? ノーティの心をよく砕いたなあ」
ノーティとは誰だろう。
ははっと笑った男は、はしごを突然蹴ってきた。ガンッと大きな音とともに、はしごが大きく揺れる。
「降りろよ、はやく。一応、アイツのこと気に入ってんだよ」
ガンガンガンッと何度も男ははしごを蹴る。
ぎゅうっと握りしめ、揺れに耐えようとするが、それより早くはしごがバランスを崩した。
「ッあ────あぐぅッ!」
痛い、痛い痛い。
それほどはしごの上まで昇っていなかったのが幸いした。地面に背中から転がったが、燃えるような痛みで身体を丸める程度で済んだ。でも、意味がわからなくて怖い。なぜこのフードの男はわたしに対して怒っていて、こんなひどいことをしてくるのだ。
「ッ、あう……な、んッ」
たらりと垂れた唾液をぬぐって、男から距離をとろうと地面を這う。
「はあ、……こい」
男はわたしの腕を掴む。強い力でひっぱられ、恐ろしさに涙がにじむ。
「ッ、やだ……モグラあ……」
「ん? モグラ?」
男の手が緩まる。成人を超えたのに涙が出てくるなど恥ずかしくてしかたがない。こわい、怖いからしかたがないのだ。ぼろぼろと溢れる涙と嗚咽のすきまでモグラの名前を呼ぶ。
◇◇◇
「なにしてるんです」
男に手を引かれながら連れてこられたのはモグラの執務室だった。抵抗する気力すら湧かずに、男の好きにさせていれば、多少なりと罪悪感というものが男のなかにもあったのか足取りがゆっくりになる。
しゃくりをあげるわたしとその手を引く真っ黒な格好をした男。モグラはそれを見て、怪訝そうに顔を歪めた。
「侵入者だ」
「はあ?」
「書庫にいた……って、おい!」
男の手がゆるんだ。その手を振り払って、モグラのうしろに隠れれば、モグラは深くため息をつく。
「コレはわたしの商品ですよ。あ〜あ、怪我してるじゃないですか、猟犬なにをしたんです?」
「は? ソイツ商品なのか? 野放しにしていて?」
たからだ。
モグラの家──どちらかといえば邸宅に近いぐらいに広いここは、設備に反して古びている。汚いとかボロくさいとかではなく、なんというか生活感に溢れている。柱に傷があったり、日焼けのあとがあったりと。しかし、その生活感はモグラが生み出したにしては違和感があった。
彼には生活感がない。わたしが知っているモグラの情報は商人であることぐらいで、彼は仕事に関してだけはある種の誠実さを持ち合わせていた。身体を壊してしまうのではないかと思うほどよく働く。貧乏暇なしと彼は言ったが、それにしても働きすぎだった。わたしが知っているかぎりで、モグラの行動原理が仕事でなかったことがない。そういうひとだった。
だから、今日来客があると彼から聞いたとき少し嬉しく感じた。お茶を出したり、茶菓子を用意したりするぐらいはわたしにもできる。忙しそうな彼の役に立ちたかった。仕事ぐらいしか彼が喜ぶことが想像できない。本来は、わたしが早く宝石になるのがいいのだろう。でも、わたしはなりたくても宝石になれないのだ、今はまだ。ゆえに、それ以外で役に立ちたかったのだが、彼にとっては不要だったらしい。