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    岩藤美流

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    岩藤美流

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    アズイデワンライ「誕生日」
    いつものハードプレイしている時空のあまあま誕生日。ノーマルなえっちをしたことがない二人にとっては特別なのは普通のことでしたとさ。

    ##ワンライ

    『18日、金曜日ですよね。生憎モストロ・ラウンジの仕事も年の瀬を控えて忙しいので。当日はお伺いはできませんが、祝福しますよ、イデアさん』
     大切な後輩兼友人かつ恋人であるアズールが、いつも通りの営業スマイルでそう言ったのは先週のことだ。イデアは自室で一人、高級そうで繊細なティーカップを眺めている。青を基調とした優雅なそれは、確かにイグニハイドや、イデアの髪に近い色をしていたし、美しいとは思う。けれど、この汚部屋にリーチのかかったオタク部屋には不似合いだ。
     今日は日付変更からゲーム仲間にお祝いされテンションが上がったものの、この学園でバースデーボーイが晒し者になるのだということに気付いて憂鬱になりながら部屋を出た。顔も知らない寮生達にお祝いの言葉をかけられるのは、通りすがりに雪玉でもぶつけられているような気分で、イデアはとても気分が落ち着かなかった。
     購買に行く道、できるだけ人のいないところを……と、裏道を通っていると、ばったりとアズールに出会った。いやもうそれは、教科書に載せたいほど偶然に、ばったりと。
    『ああ、イデアさん。こんなところで会うなんて偶然ですね。そういえば今日、あなたはお誕生日でしたよね。お伺いできないのは申し訳ないですが、たまたまここにあなたへのプレゼントがあるので、ついでですからもらっておいてくれませんか、手荷物になりますので。お誕生日おめでとうございます、それでは良い一日を』
     アズールは何か営業のスピーチでもするようにスラスラとそのセリフを読み上げて、丁寧に梱包されたそのティーカップの箱を渡してきたのだ。そして颯爽と去って行った。
     思えば、待ち伏せされていたのだろう。アズール氏ってそういうところあるよね、と考えながら、イデアはカップを眺めている。
     昼間は散々人に絡まれて、とても疲れた。イデアは夕方になると早々に部屋に戻り、オルトと二人で過ごすことにした。それからも部屋には何人か人がやって来て、プレゼントを押し付けてきたものだ。その度に小声で感謝を伝え、もう疲れ切っていた。
     今日はゲームもせずに早く寝よう、明日になればいつもの毎日が戻ってくるんだから。イデアはオルトをスリープモードにして、自分もベッドに潜るため、寝間着にしているスウェットに着替えた。
     それからベッドに腰かけて、アズールがくれたカップを一人で眺めている。
     不器用なんだよなあ。イデアの部屋の薄暗さでも、カップは僅かな光を反射してゆらゆら煌めいている。まるで海の中だな、とイデアはぼんやり思ってそれから、少しだけ、少しだけ寂しい気持ちになった。
    「……あーあーあー。もう寝よ……」
     溜息一つ吐いて、カップを箱にしまうと、大事にハニカム構造の棚に置く。今日は忙しいと言っていたけれど、たぶんずっと忙しいんじゃなかろうか。年末にかけて騒ぎたがる学生は多そうだし。そうなると次に会えるのはいつになるやら。恋人関係になってそれほど経っていないから、少々寂しい。まあ二人きりになると、とても人には言えないようなハードプレイをし始めるから、困ったものなのだけれど。いや、そもそも二人きりでするようなことを、人に言ったりはしないものだろうが。
     悶々としながら、ベッドに入ろうとした時だ。トントン、と部屋がノックされる。ヒッ、と悲鳴を上げて振り返り、時計を見た。22時だ。こんな時間に来客とは、よほどの執念というかなんというか。イデアは恐る恐る「だ、誰……?」と尋ねながら扉に向かった。
    「イデアさん、僕です。夜分遅くにすみません」
    「あ、アズール氏? どうしたの、忙しいって言ってたじゃない……わ!?」
     扉を開けた途端に、アズールが飛び込んできて、イデアをそのまま抱きしめた。イデアは頭が真っ白になってしまったが、抱きしめられたまま慌てて扉を閉め、鍵をかける。そうしている間に、アズールは何故か手に持っていたやたら大きいボストンバッグを床に下ろし、イデアの頬にキスをした。
    「あの、あのあの、タイム、アズール氏?」
    「……失礼しました。いえ、正直言って来れると思っていなかったのですが……。ジェイドとフロイドに店を追い出されまして」
    「支配人が店追い出されるとかある??」
    「なんでも使い物にならないからとか……。その理由についてはまあ、僕も思い当たる節が有りましたので、急いで準備をして来たというわけです」
    「準備?」
     なんのことだろう。イデアが首を傾げていると、アズールはまたにこりと微笑んで言った。
    「改めてお誕生日おめでとうございます、イデアさん。あなたに会えたことに僕は心から感謝をしています」
    「う、うん、あ、ありがと、僕も、」
    「それで、ですね。誕生日のプレゼントがアレだけではどうかと思いまして、せっかくですから僕にしか与えられない夜を差し上げようかと」
     嫌な予感がする。イデアは困惑した。ここは自分の部屋で、カバーをかけてあるとはいえ、オルトがスリープモードで眠っている。ここでどんな夜を過ごそうというのか。いや聞かないでも大体わかる。この慈悲の精神に溢れる恋人が、日頃自分に容赦なく与えるハードなプレイを思い出して、イデアは首を振った。
    「や、あの、その、きょ、今日はちょっと疲れてるから、えっと」
    「そうなんです。あなたに特別ハードコアなプレイをして差し上げようとも考えたんですが、ここは逆に、我々が経験したことが無い程に、バースデーケーキのごとく甘く優しい、極めてノーマルなプレイをするのはどうかと思ったんです」
    「あ、そうなんだあ、ご配慮いただきありがたいっすわあ……」
    「もちろん、極めてハードコアなプレイもできるように、色々持っては来ましたよ」
    「いや、いやいやいや、いい、極めてハードコアなのは、ちょっと、いい、今日はいい」
     ボストンバッグの中身が何なのか、考えるだけで恐ろしい。イデアは丁重にお断りしながらも、アズールを振りほどいたりはしなかった。
     会いたかったのは事実だ。こうして触れ合いたかったのも。アズールがいつも通り、斜め上なのが困ったことなだけで。
    「では、……甘くて優しい、極めてノーマルなプレイを、してもいいですか?」
     アズールの白い手が、イデアの頬を撫でる。うっとりと柔らかく微笑む顔はいつも通り美しくて、どこか妖艶で。イデアはいつだってその笑みに勝てない。
    「……お、……お手柔らかに……」
     頬が熱くなるのを感じながら、小声で答える。アズールはバッグを持ち上げて、イデアと共にベッドへ移動しながら、囁いた。
    「そして明日の朝には、僕が紅茶を淹れてあげます。飲んでくれますね?」
     あのカップで、ということだろう。イデアはやはり、「うん」としか頷けなくて。そんなイデアにアズールは、優しく微笑むのだった。
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    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ①であり、ワンライの「さようなら、出会い」お題作品の続きです。参考にした歌は「A Love Suicide」です。和訳歌詞から色々考えてたんですけど、どうも予想通りタイトルは和訳すると心中だったようですが、あずいでちゃんはきっと心中とかする関係性じゃないし、どっちもヤンヤンだからなんとかなりそうだよな、と思ったらハッピーエンドの神様がゴリ押しました。イグニハイド寮は彼そのものの内面のように、薄暗く深い。青い炎の照らしだす世界は静かで、深海や、その片隅の岩陰に置かれた蛸壺の中にも少し似ている気がした。冥府をモチーフとしたなら、太陽の明かりも遠く海流も淀んだあの海底に近いのも当然かもしれない。どちらも時が止まり、死が寄り添っていることに変わりはないのだから。
     さて、ここに来るのは初めてだからどうしたものか。寮まで来たものの、人通りが無い。以前イデアが、うちの寮生は皆拙者みたいなもんでござるよ、と呟いていた。特別な用でもなければ出歩くこともないのかもしれない。さて、寮長の部屋といえばもっとも奥まっている場所か、高い場所か、あるいは入口かもしれないが、捜し歩くには広い。どうしたものかと考えていると、「あれっ」と甲高い声がかけられた。
     見れば、イデアの『弟』である、オルトの姿が有る。
    「アズール・アーシェングロットさん! こんばんは! こんな時間にどうしたの?」
     その言葉にアズールは、はたと現在の時刻について考えた。ここまで来るのに頭がいっぱいだったし、この建物が酷く暗いから失念していたけれど、夜も更けているのではないだろうか。
    「こ 5991

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    h‘|ッЛ

    DONE #しん風版深夜の60分一本勝負
    お題「放課後」

    遅刻!ワンライ+20分!

    何度書いてもくっつく話は良いよねぇ...
    しん風しか勝たん...マジで...

    ※誤字に気づいて途中修正入るかもかもです。

    ⚠️アテンション
    高校生未来パロ。
    同じ学校通ってる。
    最初付き合ってない。

    3 2 1 どぞ
    しん風ワンライ『放課後の告白』

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    西陽の射す窓。教室から溢れ出る紅に染る廊下。笑い声や掛け声が重なり心地よく耳を掠めていく。
    一般生徒の最終下校のチャイムまであとわずか。

    委員会の集まりが長引き、担当教員に頼まれて資料室に資料を置きに行った。ついでに整理まで行った所までは予定通りだった。そこから更に社会科教師に捕まり、今日提出だった課題を社会科教室前の箱から持ってくることを頼まれ、更にそれを名簿に纏めあげた。あろうことか最後に教頭に捕まって長話に付き合わされてしまった。

    今日もしんのすけと帰る予定だった。社会科教師に捕まった時点でしんのすけには先に帰っていいと連絡した。本当はしんのすけと帰れたのに。きっとしんのすけはモテるから、そこらのJKに絡まれて流されて一緒に帰ってしまったんだろう。

    アイツの隣は僕のものなのに――

    鞄は教室に置いてきた。しんのすけとは教室で待ち合わせていた。明日アイツに彼女が出来てたら、僕はどんな顔をするだろう。泣くか怒るかそれとも笑うか。こんな思いをするなら先に帰っていいなんて言わなきゃ良かったんだ。僕の心はなんて狭く 2725