その手を離さないように握って歩いた汗が滴って首筋をつたった。
シャツにじんわり染み込んでいく。
「ったく、あいつどこで降りたんだよ一体…」
シャワシャワと都会のアブラゼミとは違う蝉時雨が入道雲と日差しを強調させていた。
「こりゃ携帯持たせてGPSで追えるようにしといた方が良いな…一時保護者として警察沙汰になるのはごめんだ…」
適当にこの辺だろうと当たりをつけて降りたバス停から次のバス停へと歩いていく。
あいつちゃんと日陰入ってんのかなって今更ながら心配になりながら重くなってきた足を動かす。
初めて出会った時には、これから面白いことが起きていくと、このチャンスを逃してはいけないと
そう思っていた。
ちょっと小屋みたいになったバス停のベンチにその姿を見つけた。
「おぉい!なんでこんなところで降りてるんだ!」
声をかけるとなんともなさそうに座っていた子供はこちらに顔を向け立ち上がった。
「ししょお!遅かったじゃないですか!ししょおが早めの行動って言ったんですよ!」
ここで待ち合わせして俺が遅れてやってきたのだと言わんばかりに責め立てられる。
いつまで経っても来ないから探しに来たのになんだそれと
思っていたら目の前の歳相応に幼い顔は半べそをかいていた。
度々その力に助けられ、つい頭から抜けてしまう時がある。どんな力が有っても
今目の前で俺が来ないことに不安を感じて目から涙を溢れさせしがみつくこの迷子は
どうしようもなく
大人が守るべき子供なのだと
その小さな体を抱きしめた。