家族の風景「父上、母上。どうしても外せない用事があるので、王の仕事を、この日だけ代わってもらえないでしょうか」
レックが私たちにそう言ってきたのは、少し前のこと。
その日が、今日。レックは朝から急いだ様子で伴もつけずにどこかへ出かけていき、私と夫は随分久しぶりに玉座に座った。
夫は久しぶりの公務に張り切って、玉座に座って王に面会を求める人々の話を聞き、側の大臣に指示を出す。私も久しぶりに玉座に座って、微笑みながら人々の話を聞いて、たまに口を挟んだりして。そして王の間から人々の波が引いて、誰もいなくなった、その時。
レック王のお帰りです、と、妙に慌てた様子で兵士が報告にやってきた。あら、もう帰ってきたのかしら、お昼にもなっていないのに。思ってたより早いわね、と夫と話していると、レックが王の間に姿を現した。
3520