貴方だからこそ「少年」
半身の声が強張っていると気づき、少年は首を傾げた。今、彼が居る場所は寮室のベッドの上だ。一体、アオガミは何に警戒しているのかと。
「起き上がることは非推奨……いや、直ぐに横になってくれ」
「え?」
状況を把握することも出来ず、少年は身を横たえさせられた。
「……やはり、熱が高い」
額に触れたアオガミの手が気持ち良いと思うと同時に、彼の一言で少年はようやっと事態を把握するのであった。どうやら、自分は体調を崩したらしいと。
「気づかなかった」
「そうか」
少年の体に丁寧に布団をかけ直し、アオガミはぽつりと呟くのであった。
「君の傍に居るのが、私で良かった」
神造魔人であるからこそ、直ぐに気づけたと。
「少年、頬に赤みが増している。君は決して起き上がらないように。ベテルに連絡し、必要な物資を運搬して貰おう」
珍しく慌ただしげなアオガミの様子を布団の中から見上げつつ、少年は瞳を潤わせていた。頬の赤みと併せてアオガミは発熱によるものと勘違いしていたが、事実は異なる。
(アオガミが、自分で良かったって、言ってくれた)
どこか自己肯定の低い大切な半身。その彼が、如何なる事であっても己を卑下せず、それどころか"良かった"と言ってくれたのである。
(よかった)
体調不良も悪くないと、少年はこっそり布団で涙を拭うのであった。