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    tuduri_mdzzzs

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    人魚AU。ツイネタ☛(https://twitter.com/tuduri_mdzzzs/status/1438528224774930432?s=20)のつづき

    #忘羨
    WangXian
    #人魚AU
    mermaidAu

    .


     静室へと魏嬰を連れ帰ることに成功した藍湛は、下半身の治療をしようとして魏嬰の呼吸があまりにも浅く早いことに気が付いた。藍湛にはこの呼吸をするものを視たことがあった。初めて雲深不知処に来た人が時々こんな呼吸をすることがあるのだ。そう思い出して魏嬰が呼吸困難に陥っている事に気が付く。はじめは高所を移動したからだと思ったが、すぐに下半身が魚になったことによって魚と同じ呼吸が必要なのではと思い至る。水を張った風呂桶に魏嬰を入れてしばらくすると、魏嬰の呼吸が安定する。それにほっと息を吐く藍湛。人魚になった魏嬰はもう陸だけで生活するのは困難になっていた。彼はもう水のない場所を移動することはできないのだ。ほの暗い歓喜が胸を満たす藍湛。

     一方意識が戻った魏嬰は勝手に雲深不知処に連れ帰られたことに怒り暴れる。壊れる風呂桶、投げ出される体。音を聞きつけて戻ってきた藍湛が手を伸ばして支えようとするのを拒絶する。けれどどんどん呼吸が辛くなっていく。混乱する魏嬰に藍湛が水の中にいないと呼吸できないと説明。それがどういう意味か(地上での生活が絶望的)理解して呆然とする魏嬰。藍湛はとりあえずしばらくはここで生活して、と新しい風呂桶を持ってくる。水の中に入っていると確かに呼吸が楽になる。魏嬰はしばらく自分を受け入れることが出来なかった。

     藍湛は静室で慎重に魏嬰を匿っていたが、どうしても不審な行動は出てきてしまう。そしてついに兄上にばれる。兄上は蔵宝閣のことはもちろん知っている。魏嬰の状態をみて件の箱を思い出し確認しに行くと中身は無くなっていた。もしや?と思う兄上。藍湛を寒室に呼び出し詰めると彼はついに白状した。罰として戒尺される藍湛。藍湛が背中の傷を冷泉で癒している間に、魏嬰と会う兄上。すっかり塞ぎ込んでしまっている魏嬰にここから出たいかと問う。反射的に出たいという魏嬰。でもすぐに自嘲する。そんなの無理。水が無ければ生きていけない。ここからは動けないという。
     兄上は出たいなら雲深不知処を流れる川まで運ぶと言う。兄上は弟の罪を魏嬰を逃がすことで罪滅ぼしにしようとしていた。軟禁状態の魏嬰のことを自分の母親と重ねてみる兄上。あの頃は小さくて何もできなかったけど今ならどうとでもやりようはある。魏嬰は兄上の心中など知らず、やれるものならやってみろ(投げやり)という。魏嬰の言葉を受けて本当に川まで運んで上げる兄上。この川は雲夢へ行く川にも繋がっているという。はじめ兄上の行動を怪しんでいた魏嬰は他意はないのをみて川の中へと潜り、やがて姿が見えなくなった。
     魏嬰が居なくなったことで焦る藍湛。はじめは一人で何処かに逃げ出したのかと思うが、彼を入れていた桶の周りがあまりにも綺麗なままなので誰かに連れ去られたのだと見抜く。身内か部外者か。藍湛が思考しているとやってくる兄上。魏嬰なら私が外へ逃がしたとあっさり白状。思いが伴わぬまま閉じ込めるのはいけないと諭すが藍湛は居なくなった魏嬰を探しに行くことで頭がいっぱいだった。
     一方魏嬰は川を進み雲夢へと帰ってきた。しかしその表情は沈んでいる。何故ならこれまで人に見つかる度に水妖が出たと騒がれたからだ。叫んで逃げ出されるぐらいならいい。勇敢な者は石や棒で攻撃してくる。もしそれに反撃でもしようものなら本当に妖魔になってしまう。魏嬰は叫ばれる度に違うと声を出したが、言葉は通じているはずなのに誰一人魏嬰の話を聞こうとはしなかった。仕方なく逃げるしかない。
    人間扱いすらされなくなって増える傷と削られていく精神。それでもなんとか雲夢までやってきた。川縁に顔見知りを見つけて、声を掛ける魏嬰。顔見知りは魏嬰が鬼道を使うようになってもよくしてくれていた屋台のおじさんだった。しかし彼は魏嬰を見るなり目を吊り上げ持っていた櫂を振り回して魏嬰を攻撃してきた。驚いて水中に逃げる魏嬰。人気のない場所で水面に映った自分の顔を確認する。同じ顔のはずだ。なのにどうして。どうして誰も自分が魏無羨だと気付かない。不安を押し殺しながら蓮花塢まで行く魏嬰。途中何度か雲夢の人間に見つかったが、誰一人として魏嬰だと気付いてはくれなかった。やっと蓮花塢についた頃には魏嬰の精神はボロボロだった。遠くから顔だけを出して蓮花塢の波止場を見つめる。魏嬰は顔見知りにすら妖魔だと攻撃されたので、この上身内にまで気付いてもらえなかったらと思うと怖くて姿を見せることが出来なかった。それでも蓮花塢から離れがたく長い間見つめていると中から一人の女性が現れる。師姉だ。魏無羨は師姉を見れた嬉しさと彼女に見つかって拒絶されたらという恐怖でつい体を大きく動かしてしまい水音を立てる。気付いた師姉が魏嬰のいる方へと顔を向けた。すぐに逃げる魏嬰。しかし背中にかかった声は悲鳴ではなかった。
    「阿羨?阿羨なの?」
     それでも魏嬰が逃げると
    「待って、阿羨!あっ」
     大きな何かが水の中に落ちる音がする。驚いて引き返す魏嬰。師姉が水中で水にぬれた服を絡ませて身動きが取れなくなっていた。すぐに師姉を抱き上げ地上に上げる魏嬰。
    「師姉、そんな格好で水に入ったら溺れてしまう……」
    「だって阿羨ったら何にも話をしていないのに何処かに行ってしまうんですもの」
     師姉は決して魏嬰を拒絶しなかった。慈しむような笑顔を浮かべて魏嬰の頬を撫でている。
    「夷陵から居なくなったと聞いて心配したの」
    「夷陵に行ったの?……俺が居なくなったことがバレたのか?みんなは?温情達は?」
    「心配しないで。貴方が居なくなったことは私達以外まだ知らないはずよ。噂も聞かないもの。それに阿澄が彼女たちをこっそり夷陵から移動させたの。今は人里離れた山奥に集落をつくって暮らしているそうよ」
     思わぬところで残してきた温氏の行方を聞けてほっと安心する魏嬰。魏嬰と師姉の姿を住民たちは遠巻きに見ているが誰一人として魏嬰を攻撃してくる人間はいない。安心して力が抜ける魏嬰。水中に沈みそうになるのを師姉はしっかりと抱きしめるので、彼女を再び水中に落とさないよう力を入れなおす。江厭離は魏嬰の体中にある傷を見て悲しむ。そんなやり取りをしているところに来たのは江澄だった。なんと藍湛も一緒に居る。再び体に緊張が走る魏嬰。無断で逃げ出したのがバレたのだ。きっと藍湛は自分に酷く怒っているに違いない。彼にはかなり八つ当たりをしてしまった。彼が人魚にしたんじゃないのに(魏嬰は藍湛が犯人だとまだ知らない)。しかし藍湛は魏嬰を見つけるなり膝をついて謝った。なぜ謝られるのかわからないという顔をする魏嬰に江澄が口悪く説明。風呂桶に入れて部屋の中に置きっぱなしなんてあまりにも酷い待遇であると。藍湛は魏嬰を探しに蓮花塢を訪れ、そこで江澄達に問いただすつもりが逆に彼の現状を伝えることになったのだった。魏嬰は慌てて江澄にいう。あれは薬浴していたのだと。それに今になって分かる。魏嬰の姿を隠したことは正しい判断だった。もし大っぴらにして過ごしていたら、事情を知らない修士に倒されていたかもしれない。
    とにかく、と江澄はいう。お前はここにいればいい。呪いの解呪方法はこれからも探すが、それが分かるまではここで過ごせ、と。心配そうな顔をしている師姉をおいてここを離れれば、また水の中まで負って来かねないと思った魏嬰は、不安な気持ちを隠して頷いた。
     蓮花塢で過ごすことになった魏嬰。なるべく水面から出ず、出なくてはいけない時も蓮の葉に隠れるようにして顔を出したりしていたが、魏嬰は蓮花塢の住民から怖がられているのを日に日に感じていた。それもそうだ。誰だって6尺以上はある影が水中を動いているのを見たら恐ろしく思うだろう。江澄の元には日々、蓮花塢に恐ろしい妖魔が住み着いている。退治してくれと陳情が届くが、彼はその度にあれは人を襲わない。恐ろしくないから気にするな。と言っていたが、あまりにも頻繁に入る陳情についには無視しはじめていた。
     そんな折に魏嬰が橋の陰で休んでいると江氏の修士が噂話するのを耳にする。江宗主はあの蓮花塢の水妖をどうするつもりなんだ。さあ、でもあの水妖は水鬼を退治してくれるじゃないか。そもそも水鬼がでるのはあの水妖が人を水に引きずり込んで溺れさせているからだろう。いずれにしろ恐ろしいから退治でも保護でもいいからどうするのか明確に示してほしいよな。巷で江宗主がなんて言われてるか知ってるか?水妖に魅入られてあいつに好きに操られている傀儡だろ?……魏嬰はその噂を聞いた瞬間、いてもたってもいられず蓮花塢を飛び出した。元々師姉も金氏に嫁いでもういない。その上自分がいるせいで江澄が悪く言われるのは、彼の足を引っ張るのは耐えられなかった。

     藍湛は二日に一回の頻度で蓮花塢を訪れ魏嬰の元に通っていた。彼がちゃんといるか心配で仕方なかったのだ。しかし今日はいつもの場所で待っていても、いつまで経っても魏嬰は現れなかった。胸に焦燥感が浮かび、蓮花塢中を探すが彼は見つからない。ついに江澄を問い詰めるが、彼も知らないといい焦りだしていた。江澄は信頼のおける事情を知っている部下数名に命じて魏嬰の情報を探させる。藍湛は蓮花塢を飛び出して川の上を御剣しながら下っていった。彼には一つ心当たりがあった。いつだったか魏嬰が師姉との話を楽しそうに聞かせたのだ。蘭陵金氏は海が近い。いつか一緒に海を見に行こうと誘われたのだ、と。きっと彼は海に向かったに違いない。空から影を探す。しかし下れば下るほど川幅は広くなり、いくら魏嬰の魚影が大きく探しやすいといっても向こう岸が遥か遠くにあるような川で彼を探すのは難しかった。川沿いの村や街で水妖の情報を聞きながら下った藍湛は、しかし見つけられないままとうとう海まで辿り着いてしまった。藍湛は果ての見えない地平線にただ呆然と佇んでいた。その時だ真っ直ぐな地平線に小さな点を見つける。藍湛は直感にしたがってその場所へと御剣する。その場所へたどり着くと、そこには何もなかった。しかし藍湛は小さくなっていく魚影に向かって一息に海に飛び込んだ。目に鼻に、そして思わず開けてしまった口に入ってくる暴力的なまでにこちらを攻撃してくる海水。藍湛は海水の刺激に驚いてそのまま溺れてしまう。だが暗い海の底から黒い影がどんどん近づいているのを見る。それは探していた魏嬰だった。魏嬰は藍湛を掴むと海上へと持ち上げた。藍湛の顔を海上に出すと、今度はそのまま岸の方へ泳いでいく。
    「藍湛びっくりしたよ。いきなり飛び込んでくるんだから。お前もびっくりしただろ、海水ってすごいよな。俺も川と海を行ったり来たりして海水に体を慣らしていたんだ。」
    「魏嬰」
     藍湛は魏嬰を抱きしめ返す。
    「そうそうしっかり捕まってろ。人を持ったまま泳ぐのは初めてだから途中で落としちゃうかもしれないし。」
     岸に着くと並んで座る。魏嬰は海に来た訳を次々と話し出した。海の果てに蓬莱という場所があると聞いたこと。そこには魏嬰と同じ水妖が沢山いるかもしれないと聞いたこと。陸の資料で人に戻る方法が見つからないなら、その蓬莱へ行って人になる方法を探そうと思ったこと。藍湛が何故誰にも言わずに出ていったのかと問うと、
    「大したことじゃない。思い立ったが吉日って言葉があるだろ。」
     と答える。藍湛はこのままでは本当に魏嬰を引き留められないとヒシヒシと感じる。このまま何も言わないまま彼とわかれるのか。そんなのは嫌だと藍湛はある決意をした。
    「魏嬰」
    「どうした?藍湛」
     藍湛は魏嬰の手を握り言った。魏嬰に対する思いの丈。自分が魏嬰をどのように好きなのか。魏嬰とどうなりたいのか。初めは口をぽかりと開けて聞いていた魏嬰は藍湛の熱い言葉に恥ずかしさのあまりのけ反ってひっくり返る。後ろに倒れる魏嬰を素早く受け止めた藍湛は魏嬰を抱っこした状態のまま、尚も言葉を重ねた。君が好き、私の存在意義がそれだけでも構わないぐらい君が好きだ。ずっと一緒に居たいのだ。
    「藍湛、お、俺……俺は、わかんないよ……」
    「私の想いを否定しないでいてくれる。ただそれだけでいい。」
    「本当に?」
    「本当だ」
    「藍湛、俺はわかんないけど、もっと欲を持った方がいいよ。じゃないと逃げられちゃうぞ。」
     魏嬰がどういう意図でそんなことを言っているのか、藍湛はもう分からなかった。思考力はほとんど残っていなかった。でももっと欲を持った方がいいと言われたから、言われるままに欲を言った。
    「なら私と一緒にいて欲しい。」

     静室には美しい人魚が住んでいる。


    (とりあえず)終
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    tuduri_mdzzzs

    DONE※シブに魏嬰の分と結をまとめてUP済。
    このあとは結書く。
    実は龍の化身である藍忘機の話藍湛視点


     藍忘機は緊張していた。何故なら魏無羨と恋仲になれたのはいいが、絶対に受け入れてもらわねばならない大きな秘密があったからだ。思いが通じ合ったのは天にも昇る心地であったが、これから明かさねばならない秘密が、藍忘機の心を深く沈めていた。

     藍忘機は龍の化身である。

     いや正確に言うならば龍神の使いなのである。藍氏本家直系は龍神の使いとして代々、人の身と龍の身、この二つの身を持っているのである。

     しかしそれを知るものは直系の人間とその伴侶以外いない。

     外弟子は当然ながら、内弟子でも知らぬことだ。しかし逆に伴侶は知らねばならない。知って、この事実を受け入れなければならない。何故ならば直系の子との間に子を産めば、それは龍の身となって産まれてくるからだ。大抵の者は自らの産んだ子を見て発狂する。母が二人も産めたのは今にして思えば奇跡だと、否、二人目までは大丈夫な者も多いのだそう。次こそはと願いその希望が叶わなかった時、ぽきりと心が折れてしまうと、いつだったか聞いた。それでも愛しまぐわうならば知らねばならない。龍の精を受け入れれば、男女に関係なく孕んでしまうのだから。
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