しんと静まり返る天高き陰の下。互いの呼吸まで聞こえてくる静寂はかすかな音でさえ逃さず吸収し、やがて消えてなくなる。等間隔でつるされるシャンデリアは、ともるささやかな明かりを火のようにちりちりと揺らめかせている。
厳かな空気がつつむ中、中央にまっすぐ敷かれた赤い絨毯の上をしずしずと奥へ進みゆくふたつの姿。腕を組んで歩くふたりはどちらも真白い衣装を身に纏い、片方はブーケを手にし、片方はジャケットの胸ポケットにブートニアを差している。それはともに淡いピンク色をした薔薇の花。
やがて歩みを止めたふたりを照らしだすは、四方の天井高くまでほどこされた見事なステンドグラスからそそぐ光。青や赤を基調としたそれは、何百年も昔に作られたとは思えないくらい繊細な作りをしている。聖書にちなんだイエス・キリストの物語を描く壮大な連作は、背から差しこむ天からの光を受け、あざやかな色を地上にもたらす。息を飲むほどに美しいその情景は『聖なる宝石箱』と呼ばれる所以にふさわしい。
『新郎・宗、あなたはここにいるあんずを、病めるときも健やかなるときも、喜びのときも悲しみのときも、妻として愛し、敬い、真心をもってともに支えあうことを誓いますか?』
『誓います』
『新婦・あんず、あなたはここにいる宗を、病めるときも健やかなるときも、喜びのときも悲しみのときも、夫として愛し、敬い、真心をもってともに支えあうことを誓いますか?』
『はい、誓います』
新婦の顔を覆うレースのヴェールが新郎の手によってゆっくりと持ち上げられる。ふたりは互いに微笑み見つめあうと、新婦のほうから瞼を下ろす。新郎は彼女の両肩に手を添えると同じように瞼を下ろし、その唇へそっと口づけた。
リンゴーン、リンゴーンと荘厳な鐘の音が高らかに鳴り響く。将来の誓いを立てたふたりは結びを交わし、晴れて夫婦となる。後方頭上に掲げられるバラ窓はふたりを祝福するように大輪の花を咲かせ、窓の向こうは晴天、手を取りあい寄りそう彼らのゆくこれからの道を燦々と照らしていた。
Ensoleille Mariage
斎宮宗 ✕ あんず
2022.12.24 − 12.25 開催
あんず中心オンラインイベント
『星とあんずの幻想曲3』(通称:あんず島3)にて
展示予定