引きこもる理由ドアチャイムを鳴らしたらアイツの妹が出てきた。
「なんのようですか?」
「暁人は?」
「この時間だと部屋に閉じ籠ってます、内側から鍵かけてるんで」
「お前は開けられるのか」
「無理です、公衆便所と同じタイプの鍵なので私にはどうしようもありません」
「そうか」
「いえいえ、お気になさらずに。お茶でもどうですか?」
半ば強制的に家に上げられた。
「それで? なにしに来たんですか?」
「あいつに話があっただけだ」
「お兄ちゃんの部屋はあっちのドアです」
ドアを開けるが部屋にはなにもなかった。
「・・・いねえじゃねえか」
「いや、クローゼットの中に入ってるんですよ」
「なんだそりゃ」
「お兄ちゃん引きこもりみたいなもんなんで」
「お前はいいのかよ」
「私は、もう慣れてますし」
「そういう問題なのかよ」
「はい、慣れちゃえば意外と平気ですよ」
クローゼットをノックして呼びかけると返事が返ってきた。
「ほらね」
「ほんとだな」
「今出るから待っててよ」
カチャッと鍵が解除される音が中から聞こえ、クローゼットの扉が半開きになる。
「・・・KK?」
チラッと俺を見た後すぐに顔を背けられた。
「久しぶりだな」
「うん、そうだね」
相変わらず弱気な態度だな。
「なんでそこまでして人と関わらないんだ」
「・・・怖いんだよ」
「なにがだよ」
「・・・麻里、ちょっと来てくれる?」
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「珍しいね、お兄ちゃんから話があるって」
暁人は俺と麻里を向かい合わせにして座らせた。麻里は不思議そうな顔で首を傾げている。
「麻里、僕が引きこもるようになった理由ってわかる?」
「高校生の時に虐められて中退したからだよね」
「それもあるけど、本当は・・・僕がいじめの仕返しにクラスメイトに怪我させたせいなんだ」
「えっ?」
そんなこと初耳だった。
「ごめん、今まで黙っていて」
「あとKK、あのとき見たよね?危害を加えられたりすると狂暴な面が出てくるっていうの」
確かに見た。が今は普通に接しられている。だが、あれはどういうことだったんだろうか。
「普段は弱気だけどキレた瞬間にその人のことを敵と認識して狂暴になって・・・」
暁人の目に涙が浮かぶ。
「つまり、いじめられるのが怖くて部屋に引きこもっている訳じゃなくて逆に相手に危害を加えなくないから引きこもっているのか」
「うん」
「てっきりお兄ちゃんは人見知りだから部屋に籠っちゃったのかと思ってたよ」
「それもあるけどさ」
暁人が俺の目を見る。その目はどこか寂しげだった。