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    アカリ

    @VwX6yzNx3JMWcLN

    K暁の話その他小話とか絵置き場。

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    アカリ

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    本編プレイ後初めて書いてそのままお蔵入りしていた話です、K暁(K←暁)でモブ同級生と暁の話。ちょっと薄暗いのでご注意。

    #K暁

    誰も知らない。「伊月さぁ、誰かと付き合ったりしねえの?」

    大学のカフェテラス。昼食を共にしていた友人からの取り止めのない一言に暁人は思わず顔を上げた。

    「…なんで?」

    質問に質問で返すのはアレだな、と思いつつもそう返すしかなく。パスタをフォークで巻き取る手を止めてしまった以上、その話をそこで遮ることは出来なくなってしまった。

    「聞かれんだよ女子達に。『伊月くん彼女いないの?』とか『合コン呼んでよ』とかしょっちゅう。…いや、まぁ伊月もそんな事まだ考えられないだろうなって思ったから適当に流しといたけど…お前のこと良く思ってるヤツ結構居るんだぜ?今じゃなくても少し先に、って話」
    「あぁ…そういうこと」

    この友人は唐突なところもあるけれどとても良い人物だと暁人は分かっている。そうやって周囲からの防波堤にもなってくれていたり、自身を気にかけてくれていることにも感謝すら覚えてしまう。
    ──けれども。

    「そうだなぁ。……うん、やっぱり僕はそういうのは当分無いかな」
    「えっマジで」
    「マジだよ」

    好きな人が居るんだ、と。

    彼にだけ聞こえるようにそう言うと、彼の顔はあっという間に晴れやかになっていく。

    「なぁんだ!そういう事なら早く言ってくれよ〜!」
    「ちょっ…声デカいって」

    何のために小さな声で打ち明けたのかわからなくなるだろ、と暁人は小さく溜息を吐く。で?どんな人?と嬉しそうに尋ねてくる友人の反応は至極普通の反応なんだろう。

    「ここの大学の人じゃないよ。まぁ、普段会えない人だからさ…僕の一方的片想いってヤツ。頼むから言いふらすなよ?」
    「マジか…青春じゃん…言いふらしたりしないって!もし上手くいったらまた教えてくれよ!」
    「──うん」

    テーブルを乗り越えて暁人の肩を叩く友人に暁人は苦笑いをする。
    あぁ嘘をついてしまったな、と。

    上手くいく訳もない、叶うはずもない。だって彼はもうこの世界の何処にも居ないのだ。
    これは呪い。孤独になった自分にずっとかけ続ける『恋』という名の。
    あの優しい声を忘れてしまえば。あの夜を忘れられたらこの呪いは解けるのだろうか。

    ……それならもう一生、このままでいいや。

    報われないぬるま湯のように心地良いこの想いに心も体も蝕ませながら、暁人は今日も笑い食べて眠り淡々と生きていく。

    果たしてこれが幸福な生であるのかどうかは
    ────誰も知らない。

    .






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    りんご

    DONEまじない、あるいは、のろい (ここまで読みがな)
    K暁デー「スーツ」
    お題的なこともあって結婚と葬送の話をどっちも書きたかっただけです。あっきーがバカ重い感じですが、その環境ゆえにうまく隠すことがうまかっただけで彼の本質はこうだろうなーとか思ったり。いつものごとく二人で喧嘩して、戦って、駆け抜ける話です。
    中の人本当にありがとうございました、お陰で細々と楽しくK暁を追いかけられました。
    呪い短くも長くもない人生を振り返るにあたり、その基準点は節目にある行事がほとんどだろう。かくいうKKも、自らのライフイベントがどうだったかを思い出しながら目の前の光景と類比させる。
    準備が整ったと思って、かつての自分は彼女に小さな箱を差し出した。元号さえ変わった今ではおとぎ話のようなものかもしれないが、それでもあの頃のKKは『給与三ヵ月分』の呪文を信じていたし、実際差し出した相手はうまく魔法にかかってくれたのだ。ここから始めていく。そのために、ここにいる隣の存在をずっと大事にしよう。そうして誓いまで交わして。
    まじないというのは古今東西、例外なく『有限』である。
    呪文の効力は時の流れに飲まれて薄れてゆき、魔法は解け、誓いは破られた。同じくしてまさか、まじないの根本に触れることになるだなんて思わなかった、ところまで回想していた意識を、誰かに強い力で引き戻される。
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