「むにゃ~」
暁人と麻人がソファの上で昼寝をしていた。母子共に寝顔似ている。
「・・・おかーしゃ」
麻人が寝言で暁人のことを言った途端、暁人が飛び起きた。
「なっなんだおいなんかあったのか!?死んでないよね!?うんとかすんとか言って!!」
「おいいきなりどうしたんだ急に」
暁人きとはパニックになりながら麻人を揺さぶる。顔の左半分が黒く染まり完全に不安に駆られているようだ。
「ねぇ麻人!麻人!?」
「・・・おかーさん、どうしたの?」
麻人が暁人の声に反応して起きた。
「ああよかった生きてる!なっなにも異常がなっない!」
「あぁびっくりした・・・一体何があったんだよ暁人」
暁人の顔から黒い痣が無くなっていくが涙をポロポロと流していた。
「最近嫌な夢を見るんだ、KKや麻人とかみんながいなくなるようなそういう悪夢を連続して見るようになって」
「何時からだ?」
「一昨日辺りから急に今までなんにもなかったのに・・・」
「ちょいと電話するか」
電話で麻里や凛子等に連絡をいれてきてもらうことにした。
「お兄ちゃんが悪夢を!?」
「ああ」
「今までそんなことはなかったのに・・・」
麻里の様子から見て初耳だったらしい。
「やっぱりあの時のことが原因なのか?」
「確かにあの時お兄ちゃんは精神的にかなりまいってたけどそれが原因じゃないと思います。今まで悪夢を見ることは滅多になかったので」
「悪夢を見ることは何か悩みが不安があると思うのだけど心当たりは?」
凛子の問いに暁人は首を横に振る。
「自分でも何が不安なのか怖いのか分からなくて、ただただ失いたくないだけなのに・・・」
相当追い込まれてそうだ。
「大丈夫だよお兄ちゃん。私も凛子さんもいるし、周りに頼れる人がいるんだから抱え込まないで」
「ううっ・・・」
暁人は俺に寄りかかりながら麻人を抱き締めていた。
****
「体調は?」
「わかんない」
翌日になっても暁人の悪夢は治まらなかった。麻里と絵梨佳がハンバーガーのセットを差し入れたのだが、当の本人はポテトを数本しかつまんでいない。
「まあ家族を失う悪夢を連続して見てればそうなるか」
「もういっそ誰か僕の息の根を止めてよぉ・・・」
涙目になりながら訴える。本当に参っているみたいだ。
「あ、麻里これあげる」
暁人は手に持っていたハンバーガーを麻里にあげた。普段なら平気な顔をして5から10個は食べるのだか。
「ちょっと部屋で横になってくる」
「麻人の面倒は俺が見とくから」
暁人はフラつきながらも自室へと向かっていった。
「ねえおかーさん、なんでげんきがないの?びょうきなの?」
「そうだね、病気といえば病気かなぁ」
「心の病気ってやつかもね」
「こころのびょーき?」
「そう、麻人くんもいつかわかるかもね」
麻人はよくわからないという感じだったが今はそれでいいだろう。
「麻人、最近お前の欲しがってたゲーム買ったぞ、プロコンでいいか?」
「うん!」
俺は麻人にコントローラーを渡し一緒に遊ぶことにした。
****
暁人は自室で横になって踞っていた。
「何でだろう麻里にKK、それに麻人も、みんないるのになんでこんなに悲しいんだろう・・・まあいいや少し眠ろう」
暁人はそのまま眠りについた。そして夜
「おーい入るぞ」
KKが部屋に入ってくる。暁人はまだ眠っていた。KKは起こさないように隣に座り頭を撫でる。そのままベッドに入り、暁人を後ろから抱き締める。一方で麻人が目を覚ますとそこには誰もいなかった。時計を見ると夜の11時だった。ベッドから降りるとそのまま部屋を出て周りを確認する。誰もいないのを確認してから廊下を歩いて階段を降りる。降りてから暁人とKKが寝ている部屋に入る。物音をたてずにドアを開けると、暁人がKKに抱き締められていた。麻人が部屋に入っても二人は起きず静かに眠っている。麻人が部屋の中に入ると、あるものが目に入った。棚の上に置いてあるフランス人形だった。麻人はそれを手に取ると頭と身体を持ってそのまま引きちぎる。すると首から上がなくなったフランス人形は、突然動き出し、麻人に飛びかかろうとしたが、麻人の揉み上げの髪が伸びて人形を締め上げるとそのまま胴体を砕いた。
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「うちの麻人が今日も天使過ぎるんだけど」
「ママ~」
「今ママって言った!?僕のことママって言ってくれた!?」
暁人が麻人に抱きつきながらべた褒めしていかにも甘やかしてます感を醸している。悪夢を見ていたときが嘘のように思える程、元気になったようだ。
「・・・おかーさん」
「え~ママって言ってくれないの?」
「お前母性本能増してないか?」
「子供なんて甘やかしてなんぼでしょ?ところでさ、あの依頼者から貰ってきたあの黒い服着た人形知らない?朝起きたらなかったんだけど」
「いや、俺は知らん」
「んなもんどうでもいいから今日は三人で三浦のマグロ食べに行こ!」
「そうだな」
暁人はあのとき眠っていて分からなかったがあの人形は麻人が自分の手で壊して、庭に埋めていたのを俺は知っている。