雨の振る中、暁人は霊体の回収とマレビトを倒す為に濡れるのもお構い無しに渋谷の街を、走り回っていた。五体いたうちの最後の焔女のコアを引き抜いたら終了。
とりあえず、霊視をして他に敵がいないことを確認してほっと一息ついた。
『だいぶ上達したな。』
「あれだけの数こなせばいやでも上達するよ」
『まぁ、それもそうだな。次行こうぜ』
「うん」
KKもだいぶ褒めてくれるようになり、少し気分が上昇した。
マップを見ながら次は…と足をそちらの方向に向けようとしたその時、KKが鋭い声を上げた。
『暁人!やつが来た!』
ばっとそちらを急いで見るとそこには、痩男が少し離れた距離に立っている。
襲ってくると思い、風のエーテルショットを指先に纏わせ、打つが避けるばかりで全く攻撃をしてこない。様子がおかしい。
「攻撃してこない?!」
『だからって油断するなよ』
「分かってる」
しかし、何もしてこないとなると目的は何だろうか。また、自分とKKを離そうとする為に来たのだろうか。またあの箱の中に封印されてしまうのは、そこまで行くのも探すのも大変だ。とにかく、じわりじわりと詰められかけている距離を暁人は同じように離していく。
すると、急に目の前から消えた。
「え」
『馬鹿!後ろだ!』
KKの声に従い後ろを振り向こうとしたその瞬間腕を掴まれてぐるりと身体を回転させられた。まずい、またあの黒い靄が来る。引き剥がされると覚悟を決めたが、それは一向にこず、来たのは抱擁だった。
「へ?え、なに?」
『こいつっ!暁人から離れやがれ!触んじゃねえよ!』
KKが両手を使って抵抗し、自分も身を引こうとするが、流石元KKの身体。全く暁人の抵抗をものともしない。すると、急に黒い靄を吐こうとしてきた。このままはまずいと最終手段として、自分も怪我をするのを覚悟して、水のエーテルショットをその体にぶち込むと、流石に近距離の攻撃には耐えられなかった用で痩男は後ろへと下がった。ちなみに上手く避けたので少し服が裂けたくらいですんだ。
その隙に、天狗を呼んでワイヤーを伸ばしてビルの上に移動をして、そのままなるべく遠くに逃げる。が、直ぐに体勢を整えた痩男は逃げた暁人を追いかけてビルの上に来たのが逃げる最中に見えた。
そのまま、色んな道をパルクールしながら進んでいく。
『暁人!次の場所曲がったら直ぐにホテルの中に入れ!』
と言われたので、そのままKKの指示に従って急いでホテルの中に入り込んだ。
ドアの真ん中意外はガラスになっているため、万が一入ってきた時に見えたらすぐ逃げられるような物陰に潜んでやり過ごす。
暫くは探すのにウロウロとしていた見たいだが、今回は諦めたのかそのまま消えた。
ふぅとため息をひとつ零した。
「巻けたみたいだね。」
『だな。万が一の為にもう少しここで休憩しようぜ。お前も疲れたろ。』
「お言葉に甘えてそうするよ」
フロントからカードキーを拝借して部屋の中に入った。どっと疲れが込み上げ、そのままベッドにダイブする。このまま寝てしまいそうだ。その前にKKに確認しなくては。
「ねぇ、攻撃しないで急に抱きついてきたりしたのなんでだろ。靄は分かるけど…」
『何となくわかったが言いたかねぇな。てか、俺以外の奴に抱きつかれてんじゃねえよ』
「えぇ…なに?自分の身体なのに自分に嫉妬してるの?」
『そうだよ。悪いかよ。もう言ってやるよ。俺の身体もお前のことが気に入ったんだろ。だから抱きしめた。そういうことだ。』
「それは…その、相棒的な感情で?」
『いいや、恋愛的感情だな』
暁人は空いた口が塞がらなかった。
まさか、相棒だと思っていた霊体の男に恋愛感情を抱かれており、さらに般若に攫われ使われてしまった身体の方にまで好かれてしまうとは思ってもいなかった。
『まぁ、どっちがいいかなんて分かるよな?口説き落としてやるから覚悟しとけよ。暁人くん?』
その言葉に暁人はわっと顔を赤くし、これから新たな困難が加わってしまった。
お手柔らかにお願いします。と言うと笑い声が響く。
その後も、痩男が何度も現れては追いかけられる日々が始まることを暁人はまだ知らない。