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    本当あの子はもう・・・

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    「お兄ちゃん大丈夫?」
    「大丈夫、ちょっと隈出てるだけだから」
    「それは大丈夫じゃないよ」
    広間で舎弟達と朝御飯を食べながら会話する。
    「組長が寝不足なんて珍しいですね」
    「事務処理が間に合わなくて、月山さんと二人でやっていたんだけど領収書の出し忘れがあってそれでまた計算のやり直しで・・・」
    「あー、それじゃ仕方ないっすね」
    「ちゃんと敬語使え」
    「いだっ!!」
    舎弟の一人の玉置さんが小鳥遊さんにげんこつを食らっている。日常風景だ。
    「大変ですね組長も」
    「まあね」
    「お兄ちゃんって本当他人のために時間使うよね?少しは自分の為に使ったら?もう大人なんだし自分のやりたいように生きたほうがいいと思うけどなぁ~」
    「そうは言ってもね・・・」
    やりたいことか。正直思い付かないんだよな。高校2年から組長引き継いで組の為に中退して、そこから組を変えていくのに必死だった為気がついたらもう二十歳を過ぎていたのだ。
    「いっそ社員かアルバイトの募集でもかけてみます?」
    「んー、そうだね。考えてみるよ」
    僕はご飯を掻き込むとお皿を流しに置いて部屋に戻ることにした。
    ****
    「真知子さん」
    「あら、相談なら乗るわよ」
    真知子さんに兄のことで相談することにした。
    「他人のために時間を使うことでしょ?」
    「だからといって身体壊してまでやる必要はないと思っていて・・・」
    「ふむ、私もそう思うけど本人がやりたくてやってることだからあまり口出ししないほうが良いかもね」
    「ですかね・・・」
    「心配なのはわかるけど、あの子は意外と頑固だからね。多分私や月山さんが何を言っても絶対に自分がやるって言うだろうし、それを止められたら逆に不機嫌になるかもしれないわよ」
    「でも、私、やっぱり心配で・・・」
    「あんた本当に良い妹ね。でも安心なさい。いざとなったら私が止めるから安心して」
    「ありがとうございます!」
    それから1週間後のことだった。
    「何が起きてるんですか?」
    真知子さんがたんこぶが出来た兄を担いでいた。いきなり兄の部屋からデカい音が響いたかと思いきや、その状態の真知子さんが出てきたのだ。
    「大丈夫よ麻里ちゃん」
    「いや休ませるって言ってたじゃないですか!!」
    「ええ、だからこうして気絶させて」
    まさか気絶させて無理矢理休ませるという強行手段に出たのかこの人は!?
    「実際何度か月山さんもやってるけどね、確かあの時は一週間不眠不休でやってたから鳩尾に肘鉄を食らわせてたわね。もし組長が休まなかったら気絶させるのよ」
    「できるかな・・・私せいぜいパイプ椅子振り回して殴るくらいしか出来ないんですど・・・」
    「それで充分よ」
    とりあえず真知子さんは意識の無い兄をベッドに寝かせ、毛布をかけた。
    「多分、半日くらいすれば目が覚めると思うからその間に何処かでお茶にしない?最近ここの近くでカフェがオープンしたらしいのよ」
    「あ、はい!行きましょう!!」
    私は真知子さんの車に乗り込んだ。
    ****
    「・・・んがっ!?」
    「あ、組長。全然休んでくれないと麻里様が真知子さんに相談していたので真知子さんが組長を無理矢理気絶させました」
    「あ、はい」
    僕が目を覚ますと目の前には舎弟の小鳥遊さんと玉置さんがいた。そしてここは僕の部屋だ。
    「ちなみにもう昼過ぎですよ」
    「嘘だろ!?」
    「本当です、仕事は代わりに月山さんがやってますし真知子さんは麻里様を連れて二人でお茶をしに行くと言ってました。他人のために時間を使うのはいいですがせめて自身の体調管理くらいしてください」
    「組長が倒れたら元も子もないし」
    「あんたはまず先に組長には敬語を使えと何度言ったらわかるんだ?あぁ?」
    「いだだだだだ!!すみませんごめんなさい許してくださぁぁあい!!」
    小鳥遊さんは玉置さんにヘッドロックを極めていた。いつも通りの光景だ。それは置いといて
    「麻里がそんなこと言ってたの?」
    「はい、ですのでもう少し自分の為に時間を使って欲しいとのことです」
    「そう言われてもなぁ」
    「何かしたいこととかないんですか?」
    「うーん」
    やりたいことか。正直無いんだよな。
    「組長、やりたいことが見つからないなら趣味とかは?」
    「敬語!」
    「ぐるじい!!」
    「趣味か・・・高校生の時はよくバイクに乗ってツーリングしてたけど組長になってから全然乗ってないな・・・」
    「それなら一人で乗るも舎弟とみんなでツーリングするのもよしですね」
    「てか最後に運転したのが5年も前だから感覚忘れてるよ」
    「じゃあこれを機にまた始めればいいじゃないですか、教習所のペーパー講習受ければいい話ですし。業務も私達をもっと頼ってください。私達は組長の部下であると同時に家族でもあるんですから」
    「そういえばそうだね、そうと決まれば僕は二週間休むからその間の業務をよろしくね」
    「「えぇ!?」」
    ****
    「お兄ちゃん大丈夫かな」
    「大丈夫よきっと。あの子だってバカではないはずだし」
    私と真知子さんはオープンしたばかりのカフェに来ていた。注文した紅茶とケーキが届くと私たちは会話を始めた。
    「そういえばあの子って趣味とかないのかしら?聞いても教えてくれなかったの」
    「組長になる前はバイクとか弄ってツーリングしたりしてました。今もガレージに保管してありますけど5年も乗ってないとなると流石にまずいかも・・・」
    「あら、そうなのね。私もよく若い頃はドライブ行くけど、なら今度一緒に行かない?」
    「良いんですか?」
    「もちろんよ、それにたまには息抜きしないとね。私だけじゃないわ、みんなだって心配してるもの」
    「ありがとうございます!」
    それから真知子さんとはしばらくお茶をして解散した。
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