泣き虫ナっちゃんナツは恋というものを知らなかった。しかし、ある人がずっと、出会った頃からずっと気になっていた。それはグレイのことだ。幼い頃に初めてギルドを訪れた時、不思議な胸の高鳴りを覚えた。その時は喧嘩に発展してしまいその気持ちは有耶無耶となったが。それでもグレイが気になるということは変わらなかった。出会い以降、喧嘩友達のような関係となってしまったのはいいことなのか悪いことなのか。今日も今日とて喧嘩三昧。挙句の果てにはグレイは嫌いなものにナツを挙げていた。グレイに嫌いと言われると条件反射でグレイに嫌いだと言ってしまう。売り言葉に買い言葉とはこのことだ。ナツは家に帰る度に泣きじゃくっていた。
「もう、けんか、やだあ……」
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