いかにもな可愛らしい服を初めて希望するナツ♀なグレナツ♀※お題ガチャが元ネタ
ナツに服や時計を買い与えるグレイ。それを身につけているナツを見ると、ナツがグレイのものになっているように思えて気分がいい
#お題ガチャ #君が可愛いのが悪い https://odaibako.net/gacha/3652share=tw
ナツはオシャレだ。普段着はいつも耐火性のある戦闘用を兼ねている服だからあれだがそれ以外の服は案外オシャレ上級者の服を着ている。
「ナツってオシャレよね、意外。」
そう言うのはルーシィだ。失敬な。
いや、自分で選んでないからなんも言えんけど。
実はこの服は自分で選んだものではない。これはグレイが選んでくれたものだ。グレイに選んでもらった服を褒められると嬉しい。
「へー、グレイってセンスあるのねー……」「そ……そうだろ?」
「うん!あたしも今度服買う時はグレイに相談しようかな!」
「お……おう……」
「冗談よ、ナツったら、グレイが取られるのやって顔してるわよ」
「え!?そんなことねぇぞ!!」
「はいはい、そういうことにしときましょ」
「おい!!ルーシィー!!!」
「ふふっ」
「あぁ?なんだその笑い方は……」
「なんでもないわよ〜」
「くぅ〜……」
否定はできない。グレイは俺のなのに。
なんてらしくもないことを考えていると、グレイがギルドにやってきた。
「よ、ナツ、待たせたな。」
「あら、グレイじゃない……ってグレイも私服。ってことは今日はデート?」
「ああ、そうだぜ」
ルーシィの問いかけに対し、グレイが答える。
そう、今日はナツとグレイでデートをする約束をしていた。その為に、ナツはギルドに私服で来ていた。
「じゃあ、私は邪魔者みたいだし帰るわね」
「ん?別にいいんじゃねえか?」
「ちょ……ちょっと待てよ!ルーシィ!」
「はいはい、ごゆっくり〜」
「ちぇ……」
「ほら、行こうぜナツ。」
「おう!」
二人は手を繋ぎながら街へと繰り出した。
***
「どこ行くんだ?」
「とりあえず飯食うか」
「賛成だ!」
二人はまず腹を満たすことにした。
「何食べる?」
「肉!」
「お前そればっかじゃん。たまには違うもん頼めよ」
「嫌だ!俺は肉食いてえんだよ!」
「しょうがないな……すいませーん」
「はい、ご注文をお伺いします」
「えっと、ステーキセット一つと、ハンバーグ定食二つお願いします」
「かしこまりました。」
ファミレスに入り注文すると、ウェイトレスが注文を取っていく。
暫くするとすぐに注文したものが運ばれてきた。
「いただきます!」
「いただきます。」
俺もナツも食事を始める。
…今日のナツの服装は、上は白のTシャツの上に黒のジャケットを着ている。下はダメージジーンズを履いており、靴は黒を基調としたブーツである。シンプルだが、それがまた良い。
グレイの方は、紺色のパーカーに、ジーパンというシンプルな格好をしている。こちらもシンプルだからこそ、グレイの良さが出ている。
「どうした?食べないのか?」
「あ、悪い。考え事してた。」
「そうか?ならいいけどよ」
ナツはグレイのことを見つめていたため、少し恥ずかしくなる。
(やべぇ……なんかドキドキする)
「どした?顔赤いぞ?」
「な、なんでもない! それより!この後どこ行くか?」
「そうだな……服でも見るか?」
「服?なんで服なんだ?」
「そりゃあ、お前の服を選ぶためだよ。」
「俺の服?なんでだ?」
「ナツお前ったら、この前出先でトラブって服ダメにしたって言ってたろ?」
「あぁ〜……」
そうだった。仕事とはなんの関係もない日に盗賊に遭遇して服をダメにして捨てる羽目になってしまったんだった。
「で、でも……それでグレイ楽しいか……?デで、デートだし、グレイが楽しいことしたい……」
服を選んでもらうのは嬉しいし楽しい。でも、グレイも楽しくないと意味が無い。なにせ、デートなのだから。
「大丈夫だって。一緒にいるだけで楽しいからさ。それに……」
「それに……?」
「好きな奴の好みとか知りたいし……」
グレイは顔を赤くしながら言う。
「そ、そうなんだ……」
グレイのストレートな言葉は心臓によくない。
「じゃあ、次はここな。」
「おぉ〜……」
グレイが連れてきてくれた店はオシャレな店で、店内には色々な種類の服が置いてある。
「ナツはこういうのが着たい、とかあるか?」
いつも俺の好みで選んでいるから、とグレイが聞いてくる。
グレイの選ぶ服は俺の好みドンピシャだし、とくには……と思ったが。
近くに陳列されている服を見て、考えをあらためた。
そこに陳列してあったのは……可愛らしい桜色のプリーツスカートだ。こういう可愛らしいやつ……着てみたい、かも。「これ、かな……」
「ん?どれだ?」
「あっ!?い、いや、なんでもねぇ!」
「これか?」
俺がやっぱり似合わないと思い何も無いと取り繕うとするのも失敗に終わり、グレイは俺が着てみたいと思ったスカートを手に取る。
「これにすっか」
「えっ!?いや、その……」
「遠慮すんなって。」
「い、いや、本当にいいんだ!俺にはこんな可愛いのは似合わねえよ!」
「そんなことねーって。」
「いーや、絶対無理だって!!」
「まあまあ、試着だけでもしてみろって」
「ちょ、おい、待てって!!
「すいません、これください」
「かしこまりました。」
「あ、あぁ〜」
グレイは俺の意見を無視して会計を済ませてしまった。
「ほら、ナツ。着いてこい」
「あ、あぁ……」
俺はグレイに手を引かれながら更衣室に連れてかれる。
(あ、あれ?なんでこうなった?)
「着替え終わったか?」
「あ、あぁ……もうちょっとだけまっててくれ……」
「おう、わかったぜ」「よし……開けるぞ?」
「ああ」
「……ど、どう……?」
「……めっちゃかわいい。」
「……へ?」
「めちゃくちゃかわいい。」
「……本当?」
「嘘ついてどうするんだよ」
「……そ、そうか……」
「そのスカートに合わせるなら何がいいか……その元々着てるやつでも合うけど、どうせならもっと似合うやつ探そうぜ」
「お、おおぅ……」
それからグレイは色々と服を持ってきては合わせていく。
「これは?これもいいな。あと、このTシャツも合いそうだな。」
「うん、確かにそうだな。」
「じゃあ、次はこれな。」
「あ、あぁ……」
その後もグレイは様々な服を着せては、また別の服を合わせていく。
「あ、あのさ、グレイ……」
「なんだ?」
「も、もう十分だろ……?」
「まだ全然足りねーよ。」
「で、でも……」
普段こんないかにもな可愛らしい服なんて着ることがないものだから、不安で不安で仕方がない。それに、グレイはいつもに増して俺の服選びに真剣になっている。どうして……?
「俺嬉しいんだ、ナツが本当に着たい服教えてくれて」
「へ……?」
「ナツ、本当は女の子らしい服とか着たいんだろ?」
「うぐ……」
その通り、いつも動きやすさ重視、シンプルなものばかり選ぶかグレイに選んでもらうようにしていた。
たまに女の子らしい服の展示を見入ってるの見てたから、そうグレイに言われて顔を真っ赤にした。
「そ、それは……」
「隠すことないだろ?さっきも言ったけど、好きな奴のこと知りたいとか、そういうもんじゃん?」
「お、お前だって俺の事知ろうとしてんじゃんか!」
「そりゃ、恋人だし当然だろ?」
「〜っ!?」
「よし、この服ならどうだ!試着してみろよ。」
「あ、あぁ…」
試着室に入り、渡された服を試着する。そして、試着室から出ると……
「よし、じゃあ買ってくるから、それ着たままでいろよ。」
「さ、さすがに自分で買うから…!」
「いいから!」
そのままグレイが支払いを済ませてしまい、戻ってくる。
「靴は……そのブーツのままのほうがあってる。ここまできたらメイクもするか。」
「え、えぇ!?」
「大丈夫だって!俺に任せろ!」
「いや、ちょ、まっ、」
「待たねえ!」
グレイは俺の制止の声を無視し、俺の顔に化粧を施していく。
「よし、できた。鏡見るぞ。」
「……あ、あぁ……」
「……よし、完璧だな!」
「こ、これ、俺……?」
鏡の中の俺は、着てみたいと思っていたピンクのプリーツスカートに、ゆったりとした首まである白いニット、そこに黒いタイツを履いて、元々履いていたブーツに、そして紅い口紅を塗って、イヤリングまでつけて。
まるで別人のような姿だった。
「すげー……」
「どうだ?気に入ったか?」
「……うん。」
気に入ったどころではない。言葉で表すことの出来ない嬉しさが心を踊らせる。
グレイはそんな俺を見て満足そうにしている。
「よし、ナツ。デート続けようぜ。」
グレイはそう言って手を差し伸べてくる。その手を握り返し、2人で歩き出す。
(こんな日が来るなんて思ってなかったな)
そう思いながら、グレイと一緒に街を歩いていった。
「あそこ入ってみよう。」
「あそこ?」
グレイが指さすのは、カップルが沢山いるような、カフェだった。
グレイは俺の手を引いて、店内へと入っていく。
中は暖かく、甘い匂いが漂っている。
店員さんに案内され、席に着く。
メニュー表を見ると、ケーキやパフェなど、どれも美味しそうなものばかりだった。
グレイはコーヒーだけ頼み、俺には苺のショートケーキとミルクティーを頼んでくれた。
しばらくすると、注文した物が運ばれてきた。
グレイは早速フォークを手に取り、食べ始める。
俺も一口食べる。
甘酸っぱくて、とても優しい味が口に広がっていく。
グレイの方を見ると同じように幸せそうな顔をしながらこちらを見つめていた。
目が合うと微笑まれてしまう。その笑顔に思わずドキッとする。
「ナツ、ついてるぞ?」
「え?どこ?」
「ここだよ」そう言い、グレイは自分の唇の端についたクリームを取ってくれる。そして、それを自分の口の中に入れる。その一連の動作があまりにも自然すぎて、恥ずかしくなる。
「ナツ、可愛い。」またそうやって笑うから、余計にドキドキしてしまうのだ。
それから少しの間談笑をして、店を後にする。
時刻はもう夕方になっていた。
今日1日で随分と色々なことがあった気がする。
自分でも、こんな女の子らしい服を着ることや、普通のカップルみたいなことが出来るとは思わなかった。本当は女の子らしい服も、普通のカップルみたいなことも、ずっとやってみたいと思ってたんだ。でも、こんなガサツで男勝りと言った方がいい自分では無理だと思っていた。だから、今日は本当に楽しかった。
「もうこんな時間か……」
「そうだな。そろそろ帰るか。」
「……うん。」
こんな幸せな時間はもう終わり。グレイが選んでくれた服も役目は終わり。シンデレラのように魔法が解ける時間だ。いつもの服もグレイが選んでくれたものだし好きだが、そのことが、今日は無性に悲しい。
「……あのさ、」
「ん?」
「……これから、俺の家に来ないか?」
「え?」
「……嫌ならいいんだけど……」
「い、行く!行きたい!」
シンデレラの魔法はまだ解けない。幸せな一時はまだ終わらない。ナツは幸せそうな笑顔を浮かべた。
end!