🍬🧁誰か、僕の頬を引っ叩いてくれないか。まだ夢でもみているのかもしれない。言っても信じてくれかもしれないが僕の目の前には見慣れたゴーグルを掛けた可愛らしく元気なビリーくんではなく、やけに色っぽい雰囲気を纏った……まるで……まるで、大人になったビリーくんのようなその人がゴーグルを取り去った瑠璃色の瞳で小さく縮こまる僕を捕らえる。
「…び、ビリーくん………?」
「………ピンポーーン♡」
楽しそうに僕を見下ろすビリーくんは見慣れた面影なんかちっとも残ってなくて……。
「10年前のグレイってこんなに可愛いかったんだネ?」
ねとりと低い声で耳元に息が吹き込まれるともう腰が震えて立ってられなくなり、その場にしゃがみ込んだ。しかし、逃がさない、と追い詰めるように顎を持ち上げられ視線を強制的に戻される。鼻と鼻がくっつきそうなほど近い。ビリーくんとだってこんなに近い距離になったことがない。バクバクとうるさく鳴る心臓が、ふわりと鼻腔を通るこの匂いが、全身が、目の前にいる人がビリーくんだと言っている。
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