はちみつの日「はい、お土産」
久しぶりに帰って来た正守は、良守に袋に入った小さな瓶を渡した。
「なにこれ?」
「帰ってくる途中寄った先でお土産にもらったはちみつ。お菓子作るのに使ったりするだろ?」
「ありがとう。へえ、ミカンのはちみつなんだ。変わってるな。味見してみようっと」
さっそく瓶をあけようとするが一向に開く気配がない。
「んんん、瓶の蓋が硬くて開かない。兄貴開けて」
「貸してみろ。ん?簡単に開くじゃないか。ほら、味見してみろ」
正守は指ですくって良守の口の前に運ぶ。嫌がるかと思ったが素直に口を開いたのでそのまま舐めさせる。
良守はねっとりと指に絡みつくようにはちみつを舐めとる。正守は背筋がぞわっとし身体の中に小さな灯がついたのを感じながら、そっと指を引き抜いた。
「うわ!ほんとにミカンの味がする。これパウンドケーキとかに入れたら美味しいかな。それとも…」
良守はすっかりお菓子作りにどう生かすかに意識が向いてしまった。
「もうひと口いる?」
「うん」
頭の中でお菓子作りの試作に夢中になってる良守は半分上の空で返事をするので、今度は少し多めにすくって口に入れてやる。
口に入れた指は、今度は良守の舌が絡みついてきたのをそっとかわしながら、上あごをくすぐったり逆に舌の上を強めに撫でる。そうすると良守は無意識に鼻から抜けるような甘い息をこぼす。正守はすぐには抜かずに良守の口の中を堪能する。なかなか出て行かずに無造作に動き回る指を良守は顔をしかめながらなんとか追い出そうと舌で押し返すがなかなか出ていかない。そんな正守の意図に気づいた良守は恨めしそうに上目遣いで正守をにらみつけた。その様子をじっと見ていた正守はにやりとしながら指を引き抜く。考えていることが良守に伝わっているのをわかった上であえて聞く。
「どうした?」
「クソ兄貴、ふざけるな!なにやってるんだよ!」
「別に?ハチミツ味見させただけだろ?」
「いいから、ちょっとその瓶返せ」
そういうと正守の手から瓶を奪い、自分でハチミツをすくうとそのまま口に入れた。その行動をただ見ていた正守に顔を寄せるとそのまま口づけ、開いた隙間から舌をさしこむと先ほどのハチミツを正守にねっとりと口移す。いきなりのことに驚いている正守から口を離すと、ニヤッと笑う。
「俺だってやられっぱなしじゃないんだよ」
勝ち誇ったような良守に対して、正守は良守の頭の引き寄せると息も継げないほど濃厚な口づけをする。
口を離したとたん、良守は完全に力が抜けて正守に体を預けざるを得なくなっていた。
「お前には100年早いな」
そういうとそのまま良守を押し倒す。家族が帰ってくるまでの時間を頭で計算しつつ再び口づけを再開した。