winner 基本、一度眠ったら起きるべき時間まで目を覚さない。それでもこうして予期せぬ刻に微睡むのは間近に居る恋人が所以だ。
本来、この布団ではなく隣の寝台で眠っているべきである恋人。
それが、時折こうして俺の隣に潜り込んで居る。
誘いではないのは百も承知だ、そういう意図があるとき、この恋人ははっきりと俺に言うのだから。
ひとり用の布団、身体の殆どをその外に晒して、それでも瞼を伏せたまま寝息を立てている背中を焦燥と共に撫でるのは何度目か。
今日は、まだ冷たくない、良かった。
安堵しながら腕の中に、しっかりと、抱き込みながら──
また負けてしまった、と、俺が臍を噛んでいるなど、お前は知る由もないのだろうな。
自室と同じかともすればそれよりも安らぐとはいえ、仕事柄気配には敏感であるはずの俺に、何一つ気取られずその背後に潜みうるなどお前にしか出来ない芸当だ。
悔しい、だが、それ以上にそんな存在が当たり前のように隣に居てくれるのが──
「幸せだ」
先の悔しさも吹き飛ばしてしまう、寝ぼけながらの呟き。
それが恋人に聞こえたかどうかなど知りはしない、俺は、本来ならばまだ眠っている時間で、それに加えて愛おしくてたまらない温もりと匂いに包まれてしまって、すぐさま意識を手放してしまったのだから。
──それでも、
耳の奥のもっと先で、確かに聞こえた、柔らかい声。
「僕も」
……ああ本当に、かなわないな。