本当のお目当ては? 気付いたのはここ最近だ。
付き合い始めてまだ然程の間もない恋人は、僕の部屋にいるとき大抵胡座の上に何かしらを乗せている、と。
概ねは同居している吸血牛蒡のゴビーで、時折脚をくすぐるように指先を動かしてはわちゃわちゃと戯れている。
そしてゴビーが不在の折にはクッション、もう数年使っている、草臥れかけたそれを抱えるようにしているんだ。
気付いたとき、まず思ったのは、その方が文字通り座りがいいのだろうか、ということ。
それならそれでいいんだけれど、と、それ以上特に考えることもないだろうと切り上げかけた思考の端にふと過ぎったのは──
ひとつの『もしかして』
だから今日確認しようと決めた。
ゴビーは不在、そしてクッションはクローゼットの奥に仕舞った。
そんな万端の部屋にいつも通りやってきた恋人は、いつも通りの場所に座り──さりげなくそれとなく眼の中の虹彩だけをゆるりと動かした。
その瞳が見当たらないお目当ての存在を問うてくるより早く──
僕はその膝に頭を乗せてやった。
真っ直ぐに見下ろしてくるぴかぴかの虹彩はまん丸。
「何か乗せてないと寂しいのかなと思って」
違いました? と続けながら見つめた瞳は、きゅっと細くなった。
「よく、見てるな」
引き上がった唇の端に滲む少しのばつ悪さ、面映さ、照れ臭さ。
それを見て僕は確信した。
「くっつきたかったんなら、そう言えばいいのに」
『もしかして』は大正解。
僕も同じように笑いながら、近付いてきた恋人の唇に自分のを重ねた。