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    りーな

    @daryunaru
    好きなように二次創作物
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    りーな

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    金木犀 帰り道
    とどち版ワンドロワンライ 第0回
    高校生、交際してるとどち

    #忘バ

    金木犀 帰り道 部活が終わりの帰り道、藤堂くんと二人並んで歩いていると、甘い香りが漂ってきた。思わず足を止めて発生源はどこかと探すと、案の定近くの家の庭の木に小さなオレンジの花。すっかり秋だなと思っていると隣から同じく立ち止まっていた藤堂くんの、金木犀だなと声がする。
    「藤堂くんでも花の名前なんて知ってるんですね」
    「でもは余計だ……昔母親に教えてもらったんだよ」
    ああ、こういうところが俺は良くない。早くに亡くした母親との思い出にケチつけるような物言いをした。すぐに謝ればいいものを、えっと、なんて言葉に詰まるから藤堂くんは気にすんなって言う。実際気にしていないのだろう。そういうところにまた申し訳なくなるというのに。
     俺の葛藤など気づきもしない藤堂くんは、ただなあ、と金木犀にまつわる少し苦い過去を話し始めた。

     藤堂くんの語るところによると。
     妹さんがもっと幼い頃、保育園に迎えに行った帰り、お姉さんと妹さんと三人で歩いていたら金木犀の匂いがした。妹さんが何の匂いか不思議そうにしているので、お姉さんと二人で教えてあげたという。もちろん、お母さんに聞いたことも合わせて。すると妹さんが泣き出した。かーかに教えてもらったなんて、ずるい!
    「そんでしばらくは金木犀の咲いてる時期はその道通らんようにしてたんだよな。他にも妹がいる時は金木犀避けて……おかげで近所のどこに金木犀があるか全部覚えたわ」
    しばらくは、なんて藤堂くんは軽く言うけれど、よくよく聞いてみるとそれは数年に及んだらしい。一昨年、妹さん本人が、お友達から聞いた良い匂いがするお花のこと、にーに知ってる? なんて言い出したらしい。
    「妹はすっかり忘れちまっててよ、まあ安心したわ」
     藤堂くんの妹さんの中で亡くなった母親の記憶が乏しいことは、誰が悪いわけでもなく仕方のないことだ。でもそんなこと、不在がちでも俺への愛を惜しみなく注いでくれている両親がいる俺の口からはとても言えない。ましてや妹さんは幼いし……藤堂くんだって子どもなのだけど。
    「……そうですね、良かったじゃないですか。妹さんと金木犀を楽しめるようになって。ずっと避けるのって結構難しいですしね」
    「そうなんだよな、この時期多いだろ、金木犀のなんちゃらってやつ。姉貴もヘアオイル買ってたし」
    藤堂くんのお姉さんも良いお姉さんだなと思う。自分に兄弟姉妹がいたとして、果たして優しくあれるだろうか。
     そんなたらればを考えるよりも、やるべきことがあるなと思い隣にいる藤堂くんにそっと手を差し出してみる。
    「何? カツアゲ?」
    「違いますよ。妹さんのために何年も金木犀断ちしてた……まあ空回りだったみたいですけど、とにかく藤堂くんに今日だけご褒美です。金木犀の匂いがしてるとこは手を繋いであげてもいいですよ」
    「は!? あっ、えっいいんか!? 外だぞ!?」
    想定通りに慌てふためく藤堂くんについ噴き出してしまう。いつもだったら外で手を繋ぐなんて絶対拒否だ。あり得ない。でも、まあ、お日様もとっくに沈んでるし、ちょっとくらいいいかなって思ったのだ。妹さんよりは大きいけれど、子どもの頃の藤堂くんへご褒美をあげても。
     いや俺と手を繋ぐのがご褒美とかちょっと烏滸がましいというか、若干恥ずかしくなってきた。なので、嫌ならいいですと手を引っ込めようとすると、俺と同じく肉刺だらけの手にがっちり掴まれる。馬鹿力め、ちょっと痛いんですけど。しかも向かい合って立ち止まったままだから握手状態だ。そもそも人通りが少ないとは言え知らない人の家の近くで立ち話し過ぎだっていうのに。手を握ったまま動こうとしないのは何なんだ。あのですね、と口を開こうとすると藤堂くんに遮られた。
    「ちょっと待て」
     藤堂くんは左手で俺の右手を掴んだまま、右手をブレザーのポケットから何かを取り出した。それをドヤ顔で俺の眼前に突きつける。どうやらハンドクリームらしい……[季節限定金木犀の香り〜]
     パッケージに書かれたその文言を読んだ瞬間、笑いが抑えられなかった。
    「ぶっ……くっ、アハ、アハハハ、何ですか藤堂くん、そんな、そんなに俺と手を繋いでたいんですか」
    「チャンスは逃がさねえのが藤堂葵様なんだよ」
     藤堂くんがハンドクリームを塗るため、数分ぶりに俺の手は自由になった。このまま走って逃げてやろうかと思ってみる。俺は、どうにもこうにも目の前の男をいじりたくて仕方ないらしい。そう思ったのがバレたのか、逃げんなよ、と藤堂くんは俺の両手を掴む。もっと丁寧に塗れ。お裾分けと言いながら俺の手にまでハンドクリームを塗りたくる。俺には自分の三倍は丁寧に塗るなんて、藤堂くんはやっぱりバカだ。仕方ないから分かれ道までずっと手を繋いでてあげますかね。
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    りーな

    DOODLEとどちワンドロワンライ 9回 【媚薬を飲んだ受け】【マフラー】【「俺のせいじゃない」】
    藤←千 高二公式戦前。片想いを勝手に封じ込める千早が好き。マフラーはバイクのマフラーになった
     藤堂君が好きだ。もはや認めるしかなかった。綺麗な女性に憧れたり男女交際を夢見たりAV女優の淫らな姿に興奮したりしていたはずの俺だったのに。気づけば隣の席で爆睡している金髪ロン毛の元ヤン球児に恋をしていた。やってられない。藤堂君といえば意外とデリカシーがあって、野球に真面目で、イップスを克服するくらい根性があって、家族思いで、友情に厚くて、いい奴なくらいで……惚れた欲目という言葉を脳から追い出しておく。
     藤堂君とどうこうなりたいかといえば、正直なりたい。恋人に。恋人になるには……無理無理無理! 告白してオッケーしてもらう必要がある。絶対に無理だ。まず告白できる気がしない。なんで胸の内を他人に晒さねばならないんだ。相手に自分の心の生殺与奪の権を与えるなんて、俺にはできない。しかも告白できたとして、藤堂君がオッケーするはずもない。藤堂君のタイプはどうやら清楚系の女子っぽいし。仮に藤堂君が男子に好意を抱くとしても山田君や要君みたいなタイプの方に惹かれるだろうし。
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    りーな

    DOODLE6回 とどちワンドロワンライ【ハンバーグ】【プロ野球】【約束したろ】
    社会人とどち。前半藤堂、後半千早視点と思って置くと読みやすいかも

    書けなかったけど藤堂のマンションは球団ホームエリアにあり、部屋が余っていて、千早の現在住む家に置いてあるけど寮には持っていけず、といって実家に置いておくほどでもない私物を置く部屋になります
    『 前略 藤堂葵様

     このように手紙を書くのは初めてのことですね。別に手紙を書かずともSNSでやりとりできますし、それなりに会って話す機会もあります。年賀状すら送っていないというのに、わざわざ便箋を買ってまで筆を執ることになるとは……筆とか言ってボールペンじゃねーかとか言わないでくださいね、慣用句ですから。慣用句って分かりますか?笑
     さて、藤堂君との思い出でも語りましょうか。高校三年生で進路志望の提出用紙が配られた時、俺はてっきり藤堂君は清峰君と同じようにプロ野球選手と書くのかと思っていました。しかし違いましたね。君はスポーツ推薦での進学を志望しました。プロになりたいという気持ちはある。ただ、小手指のみんなやシニアの先輩達とやる野球が楽しいのであって、果たしてプロ選手として自分がやっていけるのか、このような心持ちではプロなど務まらないのではないか、もうちょっと自分を鍛えたいのだ、というようなことを君は言っていました。それも本音でしょう。君は気持ちに左右されるところがありますし。でも、ご家族のためもあったのでしょうね。同じ寮暮らしでも地方の球団よりは都内の大学の方が融通が利きます。
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    りーな

    DONE4回 とどちワンドロワンライ 【チキン】【ちっとも思ってないくせに】【ペアルック】
    高校生。千早がぐるぐる頭を悩ませている
     本当の意味で誰かと恋人のなりたいと思ったことはなかった。それはまあ、性的接触に興味がないかといえば大いにある。健全な男子高校生なのだ。でも、例えば誰かとペアルックで手を繋いでデートとかいうカップルになることは自分には無理だと思っていた。そんな恥ずかしい真似ができるか? だって(1)告白→承認 (2)ペアルック依頼→承認 (3)手を繋ぎたい→承認 と、ステップが多すぎる。千早瞬平という人間は自分で言うのもなんだが、他人に相談しない、人に胸襟を開かない。そんな人間が誰かと恋人同士!? なれるわけがないだろう。当然(4)性的なことがしたい→承認 も夢のまた夢である。誰かと何かがしたい、しかも割となんというか恥ずかしいことをしたい、そんなこと言えるか! 拒否されたら恥ずかし死にしてしまうかもしれない。臆病者、チキン野郎と言われようと無理なものは無理だ。仮に相手から言ってくれたら、しょうがないですね〜って承認パートだけならいけるかもしれない。本気で嫌なことは嫌って言って、ほとんどのアクションは相手任せで……それって本当に付き合ってると言えるのか? 相手にとって俺と付き合うメリットがなくないか? 恋人ってなんだ? 後輩の瀧はよく七人もの彼女とこんなことをやっていられるな。わざわざ言葉にしなくてもムードで分かるタイプの人もいるらしいが、それは信頼関係あってのものだろう。心を開かない千早に果たして空気を読めるのか。そもそも、千早には潔癖なところがある。これも誰かと恋人関係になることに積極的になれない事情だ。千早と他人の接触不快ライン。その線引きを恋人であろうと超えて欲しくないのか、恋人にはむしろその線を超えて欲しいのか。千早自身でも分からない。恋人ができたことがないから当然なのだが。小手指野球部員、特に同学年には随分緩くなっている自覚はある。藤堂君ならおにぎりだって食べられる。
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