7日のマリンブルー ザ……ザン………ッと足元に跳ねた飛沫を跨いで、屋外テラスの階段からごつごつした岩礁に降りていく。苔を[[rb:生 > む]]した岩肌は昨日と変わらず滑りやすくて、やっぱり靴を履き替えてよかったっすねぇ〜とオレはほくそ笑んだ。両手でバランスを取りながら慎重に歩を進めて行くと、丁度テラスからも海上のリストランテからも死角になる大きな岩の上に、月を仰いで腰掛けるひとつの影が見えた。熟した赤ワイン色の髪はサラサラと夜風に泳ぎ、闇夜に浮かぶ日焼け知らずの肌はしっとりと波に濡れている。
「いばら」
岸辺を洗う穏やかな波音に掻き消されないよう、その横顔へまっすぐ呼びかけた。驚いた素振りもなくゆったり振り向いた彼は、ニコリと大袈裟に笑って平く伸ばした指先を額に掲げる。手首に下がる貝殻のブレスレットがしゃらんと鳴った。
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