知りたくなかった.よりにもよってなんでジュンの事を好きになってしまったのだろう。
自覚してしまえばもう取り返しもつかなくなって自身の中で誤魔化すことも出来ないくらい意識してしまっている。
勿論、収録やレッスン等には支障が出ないようにいつもの笑顔を取り繕い、頭をフル回転させて完璧にこなしているつもりだ。
俺の初めて出来た友人で俺の最高のライバル。
この関係性を変えたいなんて望んでもいないし、気持ちを伝えたいなんて一切思っていない。
いや、ただ怖いだけなのかもしれない。
もしこの気持ちを伝えてしまえば、絶対優しいジュンを困らせてしまうだろう。
それにジュンには愛してやまない恋人。日和殿下がいる。
俺は殿下みたいに完璧ではないし、心から本音をぶつけて隣に立つ勇気なんてない。
俺はジュンに釣り合わないに決まっている。
俺みたいな最低野郎が2人の仲を引き裂く資格なんてないし、ジュンの幸せを奪いたくない。
『好きな人には幸せでいて欲しい』
熱愛報道が出た俳優のファンがそうインタビューに答えている姿をテレビで観て以来、やっと共感出来た気がして笑いが込み上げてくる。
殿下ならジュンの事をこれから先も心の底から愛していくだろうし大切にしていくだろう。
だって、殿下といる時のジュンは誰から見ても幸せそうに笑っているのだから。
そんな姿を見て表情には出さずとも1人して事務所に戻り副所長室に着けば、無意識に涙が溢れてきて一向に胸の痛みは消えてくれやしない。
ねぇ、ジュン。
俺、こんなにもジュンの事好きになっちゃった。
なんで好きになっちゃったんだろ。
こんな苦しい気持ちになるなんて知らなかった。
知りたくなかった。
俺の事も優しく抱きしめて。一緒に笑ってよ。
お願い、俺を愛して。