掌中之珠掌中之珠
誰かが俺の名を呼んで肩を揺らす、その声は遠くに聞こえるーー何度も繰り返して呼ぶものだから重い瞼を開いた。
「魏嬰」
真っ白な世界が見える、そして真白な男の姿が見える。
「藍湛」
「すまないが起きて欲しい」
人の温もりが残る布団から引きずり出され魏嬰は寒さで体を震わせた。
「俺・・・まだ寝たい、あと寒い」
今何時だ、藍湛が身支度を終えてるから卯の刻か?
「火急な案件が入って私は出なくてはいけない」
「そうか・・・俺にかまわないで行ってくればいいだろう」
藍湛は首を振って俺に話す、そうだった忘れていた今日は藍先生の所に行かなければいけなかった。
「そうだったな、今から霊泉に連れてってくれるのか」
ダルイ身体を起こして魏嬰は寝台に足を出して座る、乱れた寝間着から肌が露出していた白い肌に痛々しい噛み跡、手首には縛られた跡と体中には赤い印が数えきれないほど残っていた。
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