「お兄さんなら特別にモニターとして……」
「え、本当ですか? やった。ありがとうございま──」
「オイ、何してんだンな所で」
太陽は沈み、夜に差しかかろうとしていた頃。ほぼ同じタイミングで声を掛けられた私は僅差で後から話しかけられた方に顔を向けた。
視線の少し上に位置していた顔立ちは案の定というか、犬のように尖った歯が目立つ目付きの悪い少し伸びた深青の髪の男。日常でふと出くわすことの多い彼に話しかけられようが驚きは少なくなっていた。特にこの辺りは少し治安が悪く(と当の本人が言っていた)、シマの責任者としてよく彼が彷徨いているのも目にしていたからだ。
私は折角なのでたったいま自身に降りかかった幸運を自慢してやろうと口を開く。得意げな顔に、得意げな所作を混ぜて。
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