お風呂で寝落ちはあぶないよピンポーン。
チャイムが鳴った。なんでよ、日付変わってんだぞと思う。しかし、誰かは予想がついていた。そもそも五条のマンションはオートロックで、エントランスにはコンシェルジュまでいるのだ。玄関まで来れる人間、その上、最上階はワンフロアしかない、間違えましたは通用しない。一応玄関の覗き窓を見ると、思った通りの人物が立っている。
「あのさ、鍵もってるじゃん?ぼくが寝てたらどうするの」
玄関を開けて迎え入れる。
「外から、電気がついてたのは見えてましたから。寝落ちしているなら、尚更起こして差し上げようかと」
「あいにくと映画見てました」
「そうですか」
と興味なさそうに返す。
リビングのローテーブルに買い物袋を置いた。なかなか重そうな音がして、覗くと缶ビールが入っていた。
「お酒、飲んできたんじゃないの?」
今日は元々呪術師の面子で、女子会だっな。五条も誘われていたけれど、直前まで任務が入っていて時間が読めなかった。早目に終わったが、お酒が飲めないこともあり、わざわざ終了間際に行ってもなぁと家に直帰。そこから映画を見ていた。
「ええ、口直しです」
「理解できなぁい。今から飲むの?太るよ」
「消費するので平気ですよ」
薄く微笑んだ。
「………」
その消費って。と思って口を閉じた。
七海はそんな五条を見ながら、ジャケットを脱いだ。五条はスレンダーな体型だが、七海はグラマラスな体型だ。出るところは出て、引き締まっている。引き締まっているから、出ているのが強調されるのか。ブラウス、サスペンダー。後ろにナタを下げている七海専用。ずっと思ってるけど、サスペンダーってえっちすぎない?おっぱい更に強調されるし。炭酸水を注ぎながら、飲みながら七海を見る。ズボンはパンツスタイル。お尻のラインが凄い良いんだよなぁ。
前髪を上げていたのを手櫛でほぐす。後髪は刈り上げていて、スタイリッシュな髪型だ。
「お風呂、入りました?」
「入ったよ。入ったからこの格好」
五条は手をひろげて見せた。もこもこのパジャマ、ショートパンツ。七海チョイス。
「ええ、ええ。かわいいです」
結構な割合で顔を突き合わせていて、この格好もかなりの頻度で見ている筈なのに、躊躇いなく褒めるなこいつ。
「もう一度お風呂入ってくださいますか?」
「……えっちなことするつもりでしょ」
「………」
「そこは否定してよ」
「………あなたが嫌がるならしません」
「ぼくに責任転嫁するのやめろって。触って、もっとって言わせて、最後までしようとするだろ!いつも!」
「……」
バレてる、みたいな顔するなよ。結構前からバレてるから。
「だってあなたのそういう顔がとてもかわいいので」
七海は整えられた指先で、五条の顎を掬い、キスをした。くちゅりくちゅりと音を立てて、舌でなぞられて、かき混ぜられた。
「はぁ」
息とともに唾液がてろりと落ちる。
「さいあく、おまえ、酒、飲んでる、のに」
五条は自他共認めるほどアルコールに弱い。七海の呼気のアルコールで既にくらくらしている。
「もう、好きにして」
「おや、いいんですか」
「………ダメ。えっちなのダメだから。そのかわり、お風呂はいったげる」
七海は口角をあげた。五条の肩につくかつかないかの髪を優しくすいて撫でて、くったりしかけた五条をソファに座り直させる。
「メイク落として、お風呂の準備をしてきますね」
仕事よりもなによりも楽しそうだ。誰だよ、表情筋死んでるって言ったやつ。元気だよ、ピンピンしるよ……。
実は言うと五条の家には風呂が2つある。ひとつは、セレブが入っているようなまぁるい浴槽のジャグジーつきのやつ。それからもう一つ、こちらは大人一人が入れるごくごく一般的な風呂。なんで2つなんだろ、もしかして小さい方は犬用とかなんかもと気付く。だが五条は愛玩動物を買う予定はないので、まあいいかと思った。七海が用意したのは、小さいサイズの方。五条のパジャマをすぽーんと脱がし、お風呂に入れた。そうして自分は髪やら身体やらを洗い、浴槽につかる。浸かったついでに、買ってきた缶ビールのプルタブをあけた。
お湯はぬるく、逆上せるには時間がかかりそうだった。五条は浴槽に腕をかけ、そこに頭を乗せた。七海はなにをするでもなく、五条のその姿を見ながら、ビールを飲んでいる。
「……よわないの?」
「ビールくらいでは酔いませんよ」
「ふぅん。てか、ぼくの顔をさかなにしてんの?もしかして」
「はい」
おっきいおっぱいを重力から開放させ、浮かせてやがって、さわりたい。柔らかいんだよなぁという思考と、ねむいという気持がせめぎあい、もはや眠気に軍配があがっている。
「寝てもいいですよ。あとは全部やるので」