Feverish 溶岩の蒸気に覆われたような頭に、なにか冷たいものが触れた。ゆっくりと、汗で張り付いた銀髪を解きほぐしていく。
指先だと気づいて、ヒュンケルは時間をかけて瞼を開ける。
「少しは楽になったか」
寝台に腰かけたラーハルトが、うつ伏せのままの相棒を不安げに見下ろしている。
ヒュンケルは微笑もうとしたが、喉が動かず、ひとしきり咳き込んだ。
焼け付いた咽頭から、がらがら声を絞り出す。
「……ただの風邪だ。寝ていれば治る」
ラーハルトは、彼の髪を梳く手を止めない。まだ生きているか、確かめるように。
ヒュンケルはじっとしたまま、心地よいその動きを堪能する。
「魔族は、病気にかかることがないのか」当たり障りのないことを訊いてみる。「俺の知る限り、呪い以外の理由で寝込んでいる魔族を見たことがない」
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