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    UsaUsa_mitumaki

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    文字書きワードパレットのやつ①
    ハロウィン主従🎃で19番のキャンディ「知らないふり」「ペテン」「甘くない」

    お前は大嘘つきだ、と人は言う。しかし、それは大間違いだ。俺は俺の好きなように素直に生きているのだ。自分に素直に生きる。その過程で俺に騙されるやつが多いだけだ。

    「………ったく、この姿じゃ何もできねえじゃねえか。アルフの野郎、あとで覚えとけよ」

    マスターであるアルフの令呪によって、第一再臨で固定されてしまったジャックは、頭に重しをつけられた状態で廊下の窓に放置されていた。このような状態になった理由としては、アルフの作った安眠効果のある霊薬にジャックが少し手を加え、3日間夢に囚われる効果に変えてしまったからである。

    「ジャ〜〜〜ック。今回のイタズラは結果的に依頼主の不眠を治すきっかけになったから良かったものの、下手すりゃ永眠ルートだったよ?というわけで、お仕置きだ」

    という言葉と共に令呪で「1時間ほど第一再臨の状態で動くな」と言われてしまい、現在に至る。人としての欲求はあるのに満たすことができないジャックにとって退屈は最も忌むべきものだ。これ以上のお仕置きはないだろう。

    「チッまた食堂前っていうのが腹立たしい……」

    自分の時代にはなかった食べ物の香り、心地よく過ごせるよう調整された空間。どこからともなく飢餓感がやってきて、ジャックの内側で暴れだす。生前己の思うがまま生きてきたジャックが、満たされることない欲求を耐え忍ぶなんて自分でも信じられないが、そうでもしなきゃここでは生きられないのだ。

    「せめて、何か楽しいことでも起こらねぇかな……」

    その目線は虚空を見つめている。しかし、ふと、食堂に向かっている男二人の会話が聞こえてくる。

    「あのハロウィン野郎。ほんとにムカつく。」
    「ほんとにな。魔術師としては大したことねえくせに。」
    「おい、そこの二人。面白そうな話してんじゃねえか」

    ハロウィン、その単語に思わず男二人を呼び止める。男達はこちらを視認して、すぐにニヤリと下品な笑顔を見せ、ジャックに近づいてくる。

    「よお、ハロウィンキング。なにか俺らに用事でも?」
    「ところであの従者のカマドウマちゃんはどこいきました?って、その様子だとお仕置き中ってとこか!」

    ギャハハと耳障りな笑い声を上げる二人。それにつられたようにジャックは笑った。侮辱した相手が楽しそうに笑うのが不気味でたまらないのだろう。男達の表情が少し青くなった。誤魔化すように二人も笑う。

    「は、はははは!なんだ、頭でもおかしくなっちまったのか??でも元からおかしいもんなぁ」
    「ははは!いや、お前らが最高だと思っただけさ」
    「は?」
    「お前らみたいなクズがいると、俺は退屈せずに済むからな。さっきの褒め言葉の礼をしてやるよ」

    笑いながら言うと男二人はキョトンとする。まるでサプライズでキャンディをもらう子供のような表情が、よりジャックの笑いを誘う。

    「キャンディのように甘い世界へ連れてってやるよ。【旅人を迷わす焔】」

    短く詠唱を唱えると目の前の男二人はがくんっと倒れた。その異様な状況に食堂を出入りする職員たちが集まり、二人の容態を確認する。そしてジャックを睨みつけて言った。

    「アヴェンジャー!一体二人になにを!!」
    「別に。俺は楽しいところへ誘っただけだぜ?どうやらそのお子様たちの趣味には合わなかったようだがな。」

    そうこう話しているうちに二人は目を覚ます。そしてジャックを見て、真っ青な顔をする。

    「なんだぁ?もしかしてもっと甘くない世界のが好みだったか??そりゃあ、悪かったな。じゃあ、また連れてってやるよ。」
    「令呪をもって命ずる。ジャック、口を閉ざせ」

    詠唱をしようと開いた口が強制的に閉じられる。その場にいた誰もが思わず声のした方へ、目線を向ける。そこにはにこやかに笑ったアルフがいた。軽やかな足取りで人の隙間をすり抜けジャックの元へくる。

    「全くお仕置きが終わるから迎えに来たのに、これじゃあまたお仕置きをしなくちゃいけないじゃないか」

    怒った口調で話すアルフ。それをみてジャックも思わず「このペテン師め」と心の中で毒を吐く。口では怒っていても、表情は楽しいことこの上ないとでも言いたげだ。ジャックの表面をまるで恋人とまぐわう時の様な触り方をして、色っぽく笑う。その表情にジャックも思わずゾクゾクと甘い痺れが走る。

    「皆様失礼いたしました。そこのお二人、大丈夫でしょうか?もし、なにか問題がございましたらいつでも私の部屋にどうぞ。特別な霊薬を用意してお待ちしております。」

    そう言ってアルフが仰々しくお辞儀をすると、ジャックを脇に抱えて颯爽と歩き出す。残された人々は、何が起こったかすら理解できずポカンとしている。人の姿が見えなくなったところにきて、アルフが大きな声で笑いだした。

    「まったく、ジャック、君っていう奴はホントに面白いねぇ!私が馬鹿にされたからって宝具を使うなんて!!」

    その言葉に思わずジャックの眉が上がる。令呪の拘束が解けた口がイタズラっぽく笑う。

    「随分とマスターはおめでたい頭をしていらっしゃる。あれは俺も馬鹿にしてきたから倍にして返しただけさ。俺は、喜びでも怒りでも知らないふりなんてしたくねぇ。そんなの俺があんまりにもかわいそうだろ?」

    その言葉にアルフはその通りだ!と言わんばかりに、ジャックを抱きしめた。
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