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    あのモクチェズJD/JK長編"spring time"(地球未発売)の待望のアフターストーリー!わかりやすいあらすじ付きだから前作をお持ちでなくてもOK!

    #幻想ハイスクール
    fantasyHighSchool

    幻想ハイスクール無配★これまでのあらすじ
     歴史ある『聖ラモー・エ学園』高等部に潜入したモクマとチェズレイ。その目的は『裏』と繋がっていた学園長が山奥の全寮制の学園であることを利用してあやしげな洗脳装置の開発の片棒を担いでいるらしい……という証拠を掴み、場合によっては破壊するためであった。僻地にあるから移動が大変だねえ、足掛かりになりそうな拠点も辺りになさそうだし、短期決戦狙わないとかなあなどとぼやいたモクマに、チェズレイはこともなげに言い放った。
    『何をおっしゃっているんですか、モクマさん。私とあなた、学生として編入するんですよ。手続きはもう済んでいます。あなたの分の制服はこちら、そしてこれが――、』
     ……というわけで、モクマは写真のように精巧な出来のマスクと黒髪のウィッグを被って、チェズレイは背だけをひくくして――そちらの方がはるかに難易度が高いと思うのだが、できているのは事実だから仕方ない――、実年齢から大幅にサバを読んだハイスクール三年生の二人が誕生したのだった。
     なんでそんな面倒をと問えば、調査の結果装置の隠し場所までは突き止めたものの、そこがそう易々と入れないらしい。曰く理事長しか鍵を持たぬ部屋で、首尾よく奪えればよいが、SPをごっそりつけてセキュリティも並大抵ではないらしい。モクマの言うとおり攻め込むなら短期決戦しかないが、分のいい賭けとはいえない。というところに飛び込んできたのが、年に一度だけ理事長以外もその部屋に入れるチャンスがある、という情報だった。
     毎年学園祭で全校学生の投票により選出される最優秀生徒。その生徒が屋上で掲げる校旗とトロフィーが仕舞われているのがまさに件の部屋と隠し扉で繋がった教室であった。なぜそんなところにというのはもっともな疑問だが、考えてみれば単純な話で、年に一度しか生徒の立ち入らぬ理事長しか鍵の持たぬ部屋というのは何かを隠すのにもってこいだった。
     ということをスラスラ語るチェズレイに、やっと頭が追い付いてきたモクマがごくりと唾を飲む。
    『つ、つまり……』今の話をまとめると……、
    『えェ。モクマさんのお考え通りです。たまにはヒーローズよろしく、正攻法で攻めるのも悪くない。――取りますよ、最優秀生徒の冠……!』
    『やあ……そりゃあ、お前さんが本気になりゃ取れるだろうとは思うけどもさ。……で、その学園祭って、いつなの?』
     やや結果を察しながら問えば、相棒はにっこり笑って……、
     かくして濃紺のひざ丈スカートにくるぶしまでのソックスとローファー、純白のラインがまばゆい大きな三角襟に同じく白いスカーフを胸元に揺らしたチェズレイは、宣言どおり編入からたった二週間でそのカリスマ性で生徒たちの憧れの的となり、その人気に危機感を覚えた候補者達の手によって引き起こされた事故から危機一髪のところでその身を守った学ラン姿のモクマはなぜか公認カップルとしてもてはやされ、そのまま異例のダブル選出となり……、ついに辿り着いた部屋から潜入、穏便に装置の破壊と情報の奪取、ついでに学園長もちょっと手荒なやり方で懲らしめさせていただいて……、

     ……それで今、ふたりは学園祭の後夜祭にいた。

     コンクリートの広い床に、あたりをぐるりと囲む転落防止のフェンス。そこにぼんやりと頬杖をついて空を眺める相棒の、胸元で結ばれたスカーフだけが白く輝いている。夜の屋上に明かりはなく、後夜祭のメインイベント、キャンプファイヤーの準備に走り回る学生たちの疲労の滲んだ、けれどまた充実感と高揚にも満ちたざわめきもここには届かず、しんと静まり返っている。
     明日でもう、学園生活は終わりだ。
     ふたりが校門をくぐれば、皆の記憶から二人は消える。
     モクマは高い鼻の隣に並んで、よいしょっと手すりに二の腕を乗っけて外に投げ出した。
    「……物思いに耽ってるねえ。もしかしてセンチメンタルになってる? 楽しかったもんねえ、学園生活」
     わけ知り顔で尋ねたら、チェズレイはこちらを見もせずに、表情ひとつ変えないで「いいえ、まったく」とそらっとぼけて言うものだから、相変わらず素直じゃなくて笑ってしまう。
     にわかに強い風が吹いて、スカートと屋上の真ん中に置かれた校旗までもがはためいた。この二週間のあいだに秋は駆け足で近づいてきて、むき出しの脚はさぞ寒かろう……って、そんな風に思うこと自体がセクハラか? 若い子は新陳代謝がいいから大丈夫? いや、チェズレイはほんとは十七じゃないし……、
    (……なあんて、)
     こんな詮ない心配をするのも、今日まで。明日からは世界征服という非日常な日常に回帰する。きっとチェズレイは本心がどうあれ、彼らの記憶は消すだろう。闇に生きる自分達と、関わり合いは少ないに越したことがないからだ。
     彼の美学は、自らにも悪にも鋭く烈しく――、けれど、罪なく、誠実に生きるひとびとにはとても優しい。ルークのような太陽のひかりではないけれど、けして口では認めないけれど、結果としてチェズレイの行いは、彼らから苦しみを取り除き、奪われた自由を還すことに繋がっている。
     そう、まるで、夜に溺れそうになるひとに寄り添い、ゆく道をそっと照らし出す月あかりみたいに……。
     黒い髪を闇ににじませて、モクマもまた上を向く。おなじく漆黒の瞳の湖面に、針のような三日月が映って揺れた。
    「……質問いいかい?」
    「どうぞ」
    「今回の潜入、本当の目的は何だったんだい? 最初に聞いた時は青春したいってだけ言ってたけども」
    「は――、」
    「へっ」二週間ずっと胸をくすぶっていた疑問をやっと吐き出すと。弾かれたようにこちらを見てくれた目がまんまるになっていたからたじろぐ。ポーカーフェイスのとくいな相棒のその表情は何年経っても新鮮だが顔貌そのものはいつもと変わらぬままのに、目線だけが自分と同じといのにはついぞ慣れないままだった。
     驚きを隠しもしないぽかんとあいたチェズレイのうすい唇が、暫し固まったあとで、「ふっ」と息をこぼしたと思ったら、
    「――は、は、ははは……っ」
    「え、え、なに……⁉」
     破顔。お腹を抱えて笑い出されてしまった。いよいよもってそんなにつぼに入られる覚えがなくて、おろおろ眺めていると、相棒はまなじりに浮いた涙をぬぐいながら「あなたにも見抜けないことがあったか」とひくくつぶやいた。
    「へ……?」まだ、よくわからない。目を白黒させていると、指が伸びてきて、手袋の腹がふに、と痩けた頬の上のうすい皮膚を押した。いつもよりずっと低い目線で、間近のチェズレイはちょっと呆れたように、でも楽しそうに、
    「あのねェ、モクマさん。以前の私ならばともかく、今さらあなた相手に答えをはぐらかしたりなんかませんよ」
    「……? じゃあ……」
     ……それって、つまり。みなまで言う前に括った髪のしっぽを揺らしてチェズレイは頷く。
    「あなたは覚えていないかもしれませんが――、もうずっと昔、闇カジノへ潜入した時にね、お話ししたのですよ。私は青春なるものに覚えがないと」
    「ああ、あったねえ」覚えている。過ぎてしまえばあっという間という時の流れを、青春にたとえたときの返しだ。
     そう、まだ故郷に帰る前、生まれ変わる前の、死にたがりだった時分の――、
     追憶に沈むのを止めるよう、「その時」と声が重なる。
    「あなたはあの時、一瞬へらへらした表情を取り落として、じっと、憐れむような目を向けたんです。酷い侮辱でしたよ。私は全霊を向けてあなたを殺すつもりだというのに、こちらを見もしない癖して、一丁前に憐れむことだけするなど――、
     ……そして、その間は……、きっとあなたにもそんなものはなかったのだと、察するに余りあるものだった」
    「……」引き止めるというより、そこまで一気に引き受ける、という意味合いだったらしい。目がいちど遠くを見つめて、それからふっと息を吐いて、モクマの頬から手が離れる。
    「さて、時は流れて私たちは相棒関係となり――、そうして、今回の事件です。まァ、確かに。あなたが考えるように、わざわざ生徒に扮して季節外れの編入をせずとも、催眠で私を代表に仕立て上げればよかった。でもねェ――、私、思ったのです。これは渡りに船だと。あなたが憐れんだかつての私の青春の不在を、埋めるには、ね。
     ……そして、そうなれば相棒も当然、一連托生です♡」
     どうでした、青春の日々は? 後ろ手にすこし腰を曲げて、上目遣いで問われて、その姿は、さわさわと揺れる白いスカーフは、そりゃあまあ、とっても魅力的だったけれど……、
     モクマは目を泳がせて、ぽり、と頬をかいた。
    「うーん、まあそりゃ、初めてのマトモな学生ライフは楽しくなくもなかったが……、」
    「……が?」逆説の接続詞に、声が不満げに曇る。瞳に剣呑な光が灯る。私がこんなに手を尽くしたのに不満か? と、顔に書いてある。あわてて「ごめんごめん」と降参のポーズ。
    「いや、実際ものすごく楽しかったんだけどね? 隣にお前がいたからなおさら。けども――、
     お前と歩いてきたこれまでの毎日がさあ、既にじゅうぶん刺激的だったもんで。比べちまうと、ちと、ねえ……?」
    「……」殊勝ぶった声を作ってちいさく白状すれば、チェズレイはぱちぱち目を開け閉めして、それから駄々をこねる子どもに対峙した母親のように眉を下げて、
    「……おや、では、あなたにとっては世界征服の旅路が、青春の日々だったと? あんなに危険と隣り合わせの毎日だというのに、懲りない人だ……」
    「へへへ……、」呑気と言われてしまったらその通りだ。
     もちろん手は抜いていないし、舐めているつもりもない。
    (……だけど)夜闇を背負って困ったように笑う、いつまで経ってもモクマが同じ道を歩むことを愉しんでいると知る度にすこし驚いた顔をするいとしいこの子の、誰よりもそばにいられる僥倖を、どうして愉しまずにいられるだろう。
     チェズレイはひとびとに月明かりのように道を示して、けれど太陽が昇れば名乗りもせずに痕跡も残さず消えてしまう。
     でも、モクマだけは知っている。知ることを許されている。その輝きを、強く気高い魂のことを。……その特別を、どうしたって歓んでしまう欲深い心がある。
     そのとき、わあっ、と、歓声が下から響いて、にわかに夜が赤く染まった。二人して覗き込めば校庭の真ん中に大きな火が燃えている。漸くキャンプファイヤーが始まったのだ。
     きれいだね、とかええ、とか交わしながら、しばらく黙って屋上からゆらめく赤い塊を眺める。笑い合う生徒たちの紅色に染まった頬を、チェズレイは眩しそうに見つめて、それからぽつりとつぶやいた。幼い声だった。
    「……もう、とっくに、この手に持っていたのですね。私は、あなたは、かつて得られなかったものを……」
    「そそ。まだまだ世界征服は続きそうだし、終わったにせよきっと次にやりたいことが出てくるだろ。
     ……だからね、たぶんこれから一生青春だよ、おれたちは」
    「モクマさん……」
     びゅおお、山からこの賑わいにつられて走ってきた、ひときわ大きな風がコンクリートの床を駆け抜けて舞い上がった。たなびく炎にあわせて、チェズレイの頬にかかる影が、紫の瞳が、ゆらゆら揺れる。
     そう。おれたちはもう、とっくに青春のただ中にあった。だからもう、過去を振り返って手を伸ばす必要はないのだ。
    (でも、ねえ、チェズレイ)
     昔話したこと、覚えていてくれて、うれしかったよ。お前が俺のためにしてくれることはなんだって宝物で、その愛には応えたくなって、気持ちもどんどん浮かれてきちゃって、
     だからね、されてばっかりは嫌なんだ。驚かされてばかりで終わりで我慢できるようないい子じゃなくって。
     ……とはいえ、思いついたのはついさっきなんだけど。
    「チェズレイ」
     そっと、ほそい手首を掴んで、胸の辺りまで持ち上げる。そのまま指を絡めて握ると、チェズレイも応じてくれた。
     よしよし、これで逃げられない。内心でほくそ笑む。
    ――ねえ、チェズレイ。どうせなら、このムードにのっちゃってとびっきりの青春ごっこ、しちゃおっか!
    「⁉」
     空いた手を、空中に。それから――パチン! 指を鳴らすと、同時にバン、バン、と屋上が――、というか二人の姿が、スポットライトに照らされた。弾かれたように左右を見渡すチェズレイ、――あ、よかった、気づいてなかったみたい。
     もちろんこれは、モクマの仕込みだ。さっき『後片付け』のために呼んだ部下たちにお願いしたのである。
    ――ええー、何? 光ってない?
    ――あれ、あそこにいるのって……、
     いきなりの強い人工の光に、驚いたのは相棒だけではなかった。チェズレイははっとフェンスの向こうを見下ろす。
     生徒たちの色とりどりのざわめきは、いつの間にかぴたりと止んでいた。無理もない、屋上にここ数日学園内の話題を奪い続けた名物カップルがライトに照らし出されて、さらにこれ見よがしに手まで繋いでいるのだから。
    「え、え、ちょっと、モクマさ、なに……⁉」
     ああ。モクマの目がにっと細くなる。
     ここが、屋上でよかった。
     こんな、頬を赤くして狼狽するチェズレイの表情なんて、見るのは俺だけでじゅうぶんだから。
     そう、その頬は、炎に照らされたという理由だけじゃなく赤くなっていた。賢い相棒のことだから、モクマがこれから何をしようとしているかもう勘づいてしまったのだろう。
     ……そうして、多分校庭のみんなも。
     だからといって止められるはずもない。というかむしろ、どんと来いだ。たくさんの期待の視線を一心に受けながら、モクマはすうっと息を吸って、夜闇を切り裂く大声で、
    「チェズレイさん! 好きです! これからもずっと、どうか、来世まで一緒の道を歩いてください!」
    「〜〜っ‼」
     後夜祭の、キャンプファイヤーの元で。告白したカップルは永遠に結ばれる。
     編入してすぐに聞いた、この学校に通うならだれもが知る『伝説』。期待通りの展開にわっと沸く生徒たちの声をBGMにして、チェズレイは指を絡めたまま、ちいさな声で、
    「……ばか。もうとっくに誓いは終わってるでしょ、私たち」
    「うん。でもね、どんな願掛けも全部使いたい位切実なの」
    「運命なんか捻じ曲げるという顔をしているくせして」
    「へへへ。まあ、使えるもんは使うってコトで」
    「……。まったく、バチ当たりな……」
     ざわざわざわ。モクマのさっきの大声はともかく、ささやくような睦言は、当然下まで届くことはなく。
     さっきまでの熱っぽいおしゃべりが、少しずつ風向きを変えていく。詳しい中身までは当然聞こえないけれど、それが何を求めているかはモクマでもわかった。
     そして、モクマにわかるということは、さとい相棒がわからないわけもなく……、
    「ほらほら、成就しないと願掛け叶わないよ?」
    「この私を脅すつもりで……?」
     ねだるように指の力を強めると、さっすが下衆だァ、とおきまりの罵倒が挟まって、
     ……それから。
     そっと、絡んだ指を外される。黙って従う。いつの間にか双眼鏡まで持ち出していた生徒がひゅっと息を呑む気配を感じながら、でも、モクマだけはこの先の展開を知っていた。
     フェンスを背に、光を浴びて。そっとふたたび、手が持ち上がって。その指は、真っ白の、むきだしの――、素肌。
     ……だって、ねえ? おれたちの永遠の約束に必要なのは、言葉じゃなくって――、
     差し出されたむきだしの小指に、迷いなく小指を絡める。光に照らされたシルエットが長く伸びて、高架水槽に照らし出されて、その意味を理解した瞬間、生徒たちの歓声は極限まで大きくなった。。
     もうそこからはどんちゃん騒ぎ! 教師たちまで盛り上がって、花火まで引っ張り出して打ち上げられて……、
     これは、たった一夜限りの宴。彼らは明日になれば、おれたちを忘れてしまうけれど。
    「……たまにはこういう爆発もいいねえ」
    「ええ。……本当に」
     それでもいい。繋いだ手をぎゅっと握る。
     だって、俺のとなりには、いつだってお前がいてくれるのだから。

    おわり!
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    DONEあのモクチェズJD/JK長編"spring time"(地球未発売)の待望のアフターストーリー!わかりやすいあらすじ付きだから前作をお持ちでなくてもOK!
    幻想ハイスクール無配★これまでのあらすじ
     歴史ある『聖ラモー・エ学園』高等部に潜入したモクマとチェズレイ。その目的は『裏』と繋がっていた学園長が山奥の全寮制の学園であることを利用してあやしげな洗脳装置の開発の片棒を担いでいるらしい……という証拠を掴み、場合によっては破壊するためであった。僻地にあるから移動が大変だねえ、足掛かりになりそうな拠点も辺りになさそうだし、短期決戦狙わないとかなあなどとぼやいたモクマに、チェズレイはこともなげに言い放った。
    『何をおっしゃっているんですか、モクマさん。私とあなた、学生として編入するんですよ。手続きはもう済んでいます。あなたの分の制服はこちら、そしてこれが――、』
     ……というわけで、モクマは写真のように精巧な出来のマスクと黒髪のウィッグを被って、チェズレイは背だけをひくくして――そちらの方がはるかに難易度が高いと思うのだが、できているのは事実だから仕方ない――、実年齢から大幅にサバを読んだハイスクール三年生の二人が誕生したのだった。
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    『何をおっしゃっているんですか、モクマさん。私とあなた、学生として編入するんですよ。手続きはもう済んでいます。あなたの分の制服はこちら、そしてこれが――、』
     ……というわけで、モクマは写真のように精巧な出来のマスクと黒髪のウィッグを被って、チェズレイは背だけをひくくして――そちらの方がはるかに難易度が高いと思うのだが、できているのは事実だから仕方ない――、実年齢から大幅にサバを読んだハイスクール三年生の二人が誕生したのだった。
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