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    ムー(金魚の人)

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    モクチェズワンライ0102「はじめて」
    初夢を見たチェズの話を聞くモさん。

    今年もゆるゆるとワンライに参加したいと思います。宜しくお願いします!

    #モクチェズ
    moctez

    「ん……」
    モクマの瞼がゆっくりと持ち上がる。すぐ隣で空気が動く気配を察知したモクマはあっという間に意識を浮上させ、首を動かさずに視線を巡らせた。
    朝陽が部屋のカーテンの隙間を縫って足元をうっすら照らしている。
    反対側に目を向けると、彫刻のような美しい男の顔が間近にあった。高い鼻梁は天井を向き、長い睫毛に縁取られた透き通った瞳が薄い瞼を押し上げていた。煌めきを放つ紫水晶がとろり転がってモクマと目が合う。
    起きたばかりの彼は常の鮮烈で過激な空気は鳴りを潜め、清流のような空気を纏っていた。
    彼の目覚めにつられて自分は目が覚めたのだなとモクマは理解した。
    「……おはよ、チェズレイ」
    ごろりと横向きに身体を転がして、柔らかく名前を呼ぶ。モクマの挨拶にチェズレイはニッコリと微笑み返した。
    「おはようございます、モクマさん」

    朝食を共に囲み、水を飲んだところでチェズレイが吐息で笑った。手指を組んで小首を傾げている。どしたの、と目で問うとチェズレイは続けた。
    「モクマさん、私ね、今朝夢を見たんです」
    「おっおっ、どんな夢だった?」
    モクマは少し前のめりになって尋ねた。チェズレイから睡眠時に見た夢の話を聞くのはこれが初めてだ。
    モクマは何度か突拍子も無い夢の内容を面白可笑しく朝食時間の話題にあげていたけども、相槌を打つチェズレイの方は「夢は見ないようにしているので」と返すだけだった。彼は「夢を見ない」ように自己をコントロールしている、そうして精神安定を保っているのだと考えた。酒浸りになって気絶するように寝落ちしていたモクマよりは健全かと思い、とくに掘り下げていなかったが、ヴィンウェイで痛覚を麻痺させる自己催眠を施していたのを目の当たりにしてからは苦言を呈するようにした。悪い夢も楽しい夢もすぐに自分へ話してくれたらいいと付け加えて。
    だから、今のチェズレイは催眠なしで入眠している。代わりのものを所望されてモクマが差し出したのは己の心の臓が打つ拍動だった。
    お互いにお互いの呼吸を間近に感じながら眠ることに慣れた頃には年の瀬が迫っていた。
    そして、年が明けて2日目の今朝。チェズレイから夢を見たのだと楽しげに申告された。
    一体どんな夢を見たのだろうと期待しながらチェズレイの次の句を待つ。
    「あなたが、真っ白な蛇に巻き付かれて逃げられない様を眺めていました」
    「え……それどういう状況?助けてよ」
    「それがねェ、助けたくとも私も大きな虎に背中から伸し掛かられてましてェ」
    「ピンチじゃないの」
    「全身を大きな舌で舐め回されてしまいましたァ」
    舐められたシーンを思い返しているのかチェズレイが左肩を抑えて身悶えてみせる。嫌な思いをしていないどころか楽しんですらいるのでモクマは眉を寄せながらもホッと息を吐く。
    「そういえば、1月2日の朝に見る夢をマイカでは初夢ちゅうて、内容でその年の吉兆を占うんだけども。蛇と虎かあ。どんな意味があるんだろうねえ」
    ぱっと頭に浮かんだのは、マイカ城の屏風絵だった。あれのひとつには虎が蛇に巻き付かれたものがあった。
    「無秩序な睡眠時の事象に意味などありませんよ。強いて言うならば、こうしてあなたとの朝の時間を盛り上げる一助になったことしか」
    「厳しいねえ」
    「性分でしてね」
    「まあ、俺も吉兆どちらでもいいけどさあ。ひとつ、その夢に意義を付け加えてもいいかい?」
    「どうぞ」
    「今日の夜、虎に舐められたとこ詳しく教えてよ」
    そんで姫初めしよっか。
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    MAIKINGヴ愛後のモクチェズ。モ母を捏造してるよ。モがぐるぐる要らないことを考えたものの開き直る話。
    間に合えば加筆の上で忍恋2の日にパス付きでR18部分を加えて展示します。
    【モクチェズ】その辺の犬にでも食わせてやる 何度か画面に指を走らせて、写真を数枚ずつスライドする。どんな基準で選んでるのか聞いてないが、選りすぐりです、と(いつの間にか傘下に加わっていた)"社員"に告げられた通り、確かにどの子も別嬪さんだ。
    (…………うーん、)
    けど残念ながら全くピンと来ない。これだけタイプの違う美女を並べられてたら1人2人くらい気になってもいいはずなんだが。
    (…………やっぱ違うよなぁ)
    俺はタブレットを置いてため息をつく。


     チェズレイを連れて母親に会いに行ったのはつい数日前のことだった。事前に連絡を入れてたものの、それこそ数十年ぶりに会う息子が目も覚めるような美人さんを連れて帰ったもんだから驚かれて、俺の近況は早々に寧ろチェズレイの方が質問攻めになっていた。やれおいくつだの、お生まれはどちらだの——下手すりゃあの訪問中、母とよく喋ったのはチェズレイの方だったかもしれない。それで、数日を(一秒たりとも暮らしてない)実家で過ごした後、出発する俺達に向かって名残惜しそうにしていた母はこう言った——『次に来る時は家族が増えてるかもしれないわね』と。
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